【週刊クルマのミライ】自動車マニアがドイツ車を誉めるのは「ドイツ基準」で判断しているから?

さきほど『サーキットで速いクルマ』という表現を使いましたが、同じモータースポーツで使われるマシンにしてもサーキット向けのレーシングカーとダートも走るラリーカーでは仕上げも速さのポイントも異なります。それによって、どちらのマシンが速いかを比べるのはナンセンスでしょう。話のネタとして、それらをサーキットで比較するのはおもしろいですが。

つまり、ターゲットとするステージによって仕上がりが変わってくるのは当たり前の話です。まして市場が異なれば、最適解が異なってくるのも当然です。一般路での乗り心地についても、舗装路のコンディションや、そもそも舗装路の普及の度合いによって、求められる性能は変わってくるわけです。耐久性への影響も無視できません。また、燃費性能や環境性能へのプライオリティが高いエリアというのもあります。走りが気持ちよければいいという価値観は絶対ではないのです。

いくら環境に良くてもドライバーがストレスを感じるようなクルマはノーサンキューという見方もあれば、人間が我慢してでも環境性能を高めるべき、という議論もありますが、そこに結論は出ません。あくまでも価値観の違いです。

なにかベンチマークを設定するのはわかりやすくなりますが、ベンチマークとしたモデルが目指している価値観が絶対と捉えてしまう必要はありません。指標であることが重要なのではなく、どれだけ自分の用途に対してアジャストできているか、ニーズを満たしているかを吟味すること、それが愛車選びでは欠かせない視点といえるのではないでしょうか。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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