【週刊クルマのミライ】自動車マニアがドイツ車を誉めるのは「ドイツ基準」で判断しているから?

また、トランスミッションでいえば変速比幅の広さについてもグローバル基準というのは難しいものがあります。一例として、輸入車が採用している9速ATの中には、その設定速度が異なるため日本では9速まで入らない(制限速度の範囲では8速まででカバーしてしまう)というケースも見られます。もちろん、一部の高速道路で制限速度が上がっていますので将来的には有効になるのかもしれませんが、現状では宝の持ち腐れという印象です。

高速性能というのは、その地域によってニーズも変わってきます。250km/hまでカバーする性能が優れていることは否定しないまでも、それによって100km/hで乗り心地に硬さを感じるようでは本末転倒でしょう。そもそも、速度無制限の高速道路が存在するのは、世界でもごく一部(ほぼドイツのみ)であって、それこそかの国におけるガラパゴス化の一例かもしれません。

そうしたネガを「オーバークオリティは素晴らしいことなので、仕方がない(受け入れるべき)」というのは、ベンチマークとは言えないと思いませんか? 極論すると「サーキットで速いクルマなのだから市街地での扱いづらさは我慢すべし」といった言い方にも見えてきます。結局、ベンチマークと言われているドイツ車が目指している領域での評価を基準として評価していると感じるのです。

自動車には様々なニーズがあります。限られたサイズでの多人数乗車を最優先に求めるユーザーもいれば、乗員は多少我慢してでもハンドリングなどのスポーティさを優先するユーザーもいるわけです。その中で、ベンチマークと言われるクルマはポジショニングマップにおいて基準といえる性能であるのが本来の意味ですが、それがグローバル市場を前提としている限り、それぞれの市場においてはど真ん中の王道とはいえないケースも出てきます。

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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