渋滞地獄のバンコクを走るタクシーの今とは? タクシー会社社長にインタビュー

バンコクでデンソー&豊田通商が行っている渋滞解消に向けての実証実験の取材時に、バンコク市内のタクシー会社を訪問する機会がありました。そこで取材した、バンコクタクシーの現状についてお伝えします。

訪れたタクシー会社はバンコク市内で3000台のタクシーを運用しているホーワグループ。社長のハッサディン・イーアムシーランクールさんが取材に対応してくれました。

筆者「バンコクに行くと、いつも古いタクシーが多いなあと思っていたのですが、これはどうしてでしょうか?」

ハッサディン社長「バンコクのタクシーは12年間の使用が許されています。ですので古いタクシーが目立つのだと思います。しかし、この12年というのは昔のルールで、今は9年間で新車に変えることになっています。今年はまだ12年のルールが適応される年なので、古いクルマがとくに多くなっています。もう少しすれば一気に新しいクルマに変わってくるでしょう。そうしたことも影響して、今はバンコク市内のタクシーは8万台に減っています。タクシーが拾いにくいのはそうしたことも影響しているでしょうが、いずれ台数は増えてきますので安心して下さい」

筆者「タクシー運転手の質が悪いことが目立ちますが?」

ハッサディン社長「さまざまな物価は上昇しているのに、タクシー料金は上がっていません。給料を上げようとしても利用料金が上がらなければ、それも難しいのが現状です。そのため、どうしてもメーター営業をしなかったり、遠回りをして料金を稼いだりしてしまうのです。もちろんいいことでないのはよくわかっていますので、改善をしなくてはならいと思っています。タイ政府も料金改定に前向きなので、徐々によくなっていくでしょう」

筆者「ウーバーやグラブタクシーの存在はどう思われますか?」

ハッサディン社長「そうした手法も大歓迎です。お客様の利益になることは、タクシー会社としても歓迎しています」

バンコクの公共交通はさまざまなタイプのものがありますが、タクシーは今でも元気で健在のようです。取材時にはちょうど、新車のタクシーが納車されたばかりで、内部を見せていただくことができました。ホーワグループに納車されたタクシーは、バンコクのタクシーとしてもっともメジャーなカローラアルティスでした。豊田通商が提供している渋滞情報サービス“Tスクエア”が利用できるナビやドライブレコーダーなどが装備されていました。

乗客がSOSを発信できるスイッチがBピラー内側に取り付けられているのも新しい試みです。燃料はガソリンではなくCNGを使用するタイプになっていました。CNGとはcompressed natural gasの略で、圧縮された天然ガスのことです。日本のタクシーで多く使われているLPGは液化ガスですが、CNGは液化されず気体のまま圧縮されています。このため、搭載できる量が少なく、航続距離は短くなります。ただし、タンクにかけるコストは落とせるというメリットがあります。

(文・写真:諸星陽一)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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