ついに出た! 国産車初の300km/hオーバーはHKSセリカXX「M300」だった! その1【OPTION 1984年3月号より】

タイヤの温度が上がらない!

コクピットに座って5点式のフルハーネスベルトを締める。コクピットはまるでレーシングカーで、いやがうえにも気分は引き締まる。燃料ポンプ他、各種スイッチをON。スターターボタンを押す。

「バリ、バリ、バリッ」、腹わたに響くようなサウンドだ。アクセルをレーシングさせると、果たして、期待した感じがある。

ボーグ&ベッグの重いクラッチをつないで発進。低速域もスムーズで力強いトルクを感じる。しかし、4000rpmあたりでパワーがかかるとリヤタイヤがスピンして、セリカは突然、左右に大きく振られる。装着したレーシングタイヤがまったく暖まっていないからだ。

200km/hくらいでタイヤを暖めてやる。が、なかなかタイヤ温度は上がらない。「もういいかな」とアクセルを開けるとズルッと滑るのだ。フロントのレーシングタイヤもフェンダーに当たる。バンク入り口で一瞬マシンが振られたが、予め予期していたのでコントロールできる。すぐピットインだ。フロントだけ市販ラジアルのBFグッドリッチに交換してもらう。

この時点でRE雨宮RX-7は293km/hの自己ベストを記録。トラスト・セリカは燃料増量スイッチのトラブルで苦戦している。(※この日、走った雨宮、トラストの2台は後々紹介!)

「準備OK!」、再びHKSセリカでコースイン。注意深く2周、タイヤを暖める。アクセルを開けていくとリヤが滑らない。全開だ。

裏のストレートで4速7000rpmから5速へシフトアップ。感じでは6500rpm以上回りそうだ。東バンクへ6000rpmで突っ込む。が、アクセルを開けながら出口にかかるとリヤが外に流れそうだ。バンクを6200rpmで脱出し、直線に賭ける。

パワーは強烈だ。タコメーターの針が上昇し、スピードがグングン乗る。周囲の景色の流れ方もこれまで経験した比じゃない。が、計測区間の中間くらいで突然、運転席側のアクリルウインドウがバリっと外へ吸い出された。すさまじい空気の流れだ。それでもアクセル全開! アクリルが割れないように祈る。

計測終了地点は6500~6600rpmに達した。「1回目。294.47km/h!」このスピードは新開発車で驚異的なものである。水温、油圧異常なし。ブースト圧も1.2kg/cm2で安定している。マシンの安定性も想像以上だ。

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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