残り時間は3分。タイヤを暖める周回時間はない。スキットパッドでスラロームをやってタイヤ温度を上げる。最後の1周勝負である。その勝負もバンクスピードにかかっている。
リヤが出そうなマシンを微妙にコントロールしながら100rpm以上上げて直線に出た。上手くいけば計測地点で200rpmくらい上がるはずだ。予測通り6800rpmほどでゴールラインを通過した。最後の関門、第1バンクは慎重にアクセルを絞りながらクリア。
「300km/h出たゾ」ボクは90%くらいの確率でこう思った。キューンと締め付けられた胸のつかえがウイニングランの1周でとれていく。メインストレートにいる計測班の動きがざわついている。
「ついにやった! 悲願の国産車最速、300km/hの壁はボクが破ったんだ」しかし、いろんな思いが複雑に去来していたのも事実である。
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出ました! 国産車初の300km/hオーバー、301.25km/h! 大チューニングメーカー・HKSの「これでもか~!」仕様のM300で。しかも、ドライバーはDai稲田。
この時、1983年最後の最高速テストでは、RE雨宮、トラストも参加。個々のドラマは次々回以降にて! 次回はM300のマシンチェックをお楽しみに!!
【OPTION 1984年3月号より】
(Play Back The OPTION by 永光やすの)
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