一体感とディテールの両立は実現できる!C-HRのチャレンジ・デザイン(後編)

── では、まとめです。「個性的」「恰好いい」であることと、ボディに複雑な面やラインが多いことは必ずしも同義ではありませんが、C-HRではその点どのように考えましたか?

「まったくそのとおりだと思います。私たちも奇をてらうことはしておりません。造形テーマは前述のようにシンプルな立体構成が基点となっています。実際、線、面は多い造形ですが、シンプルなアイディアだからこそ、塊としてまとまって見えるよう造り込んできました。一見複雑に感じられるかもしれませんが、ひと塊としての一体感と、変化する線や面、作り込んだディティールに魅力を感じていただければありがたいと考えています」

── 最後に。強い「個性」を追求する場合、基本的なボディ構造や形状自体に変化を与えることが必要だと思いますが、C-HRではどうでしたか?

「まったくそのとおりだと思います。そこで、この車両の企画を始めたときに、パッケージがもたらす骨格に独自性がなければ狙いとする個性は発揮できないと考え、パッケージ議論も並行させていました。キビキビとしたスピード感を実現するためのショートオーバーハングと低重心シルエット。これを大径タイヤによりハイリフトさせることによる力強さ、逞しさとそれをより強調するボディの絞込み。これらをパッケージに落としむことで狙いとするコンセプトを表現できるよう進めました」

── 本日はありがとうございました。

一見複雑に見えつつ、構成はシンプルなところにある。ディテールやうねったラインに目が向かいながらも、しかし破たんを感じさせないボディの秘密は、実は文字とおりシンプルな理由なのかもしれません。

[お話を伺った方]

トヨタ自動車株式会社 トヨタデザイン部
C-HRプロジェクト・チーフ・デザイナー 伊澤和彦

(インタビュー:すぎもとたかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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