最後に1点ずつ投じたのが、日産のノートe-POWERとセレナです。この2台についてはハードウェアとしてではなく、ピーアール面での反面教師的な評価となります。
業界団体といえる自動車公正取引協議会が「完全自動運転」、「自動運転機能搭載で安全」などの文言が広告でNGワードとするよう自主的な規制を始めたというニュースもありました。
そのきっかけは、日産セレナのドライビングアシスト『プロパイロット』を、あたかも自動運転と感じさせるようなプロモーションをしたことにあるといえましょう。
たしかに自動運転というのは各メーカーが目指している技術ですし、自動車事故を低減する効果もあります。しかし、時期尚早で技術レベルが伴わない状態でのアピールは、自動運転へ懐疑的なユーザーの反発も招きますし、なによりユーザーの期待を裏切る結果になってしまう可能性もあります。
役に立つ技術であるからこそ、信頼を第一に考えてピーアールすべきという風に、業界全体が襟を正すことができたとしたら、日産がセレナ『プロパイロット』で行なったプロモーションというのは逆説的ですが、価値のあることだったと思うのです。
ハイブリッドカーであるe-POWERを「電気自動車」と分類しているのも同様で、外部充電機能を持たないシリーズハイブリッドである限りは、ほぼ排ガスを吐き出しながら走行しています。
あたかもハイブリッドカーをゼロ・エミッション車と思わせるようなアピールは、本当にゼロ・エミッションであるクルマの価値を貶めるように思えます。
はたして電動車両=電気自動車と表現できるのか、それとも走行時の排ガス有無を重視すべきか。そうした疑問を生み出し、環境技術の現状を整理するきっかけになるという点で、ノートe-POWERのピーアール手法が2016年に生まれたことには歴史的な意味があると感じたのです、もちろん逆説的な意味で。
以上の理由で「クリッカー・オブ・ザ・イヤー2016」に投票しました。その未来予想については、当たるも八卦当たらぬも八卦であります、あしからず。
(山本晋也)