ーー5歳児だったら間違ったりもするんですか?
片岡「間違いますよ! トヨタの技術者だったら真面目に『間違わないように』とか『キチッと』作るかも知れないんですけど、まあ、私もトヨタの技術者でもあるんですけど(笑)、僕はそういう『間違う』とか好きなんですよ。それでないとコミュニケーションパートナーとして面白くないんですよ。当たり障りのない答とか、ぜんぜん外してないのか、ボケもツッコミもないのか、とならないようにしてます。トヨタが作ったからトヨタっぽい真面目になっちゃったね、じゃなくて、ちょっと笑ってしまうようにしたい。それがグローバルビジョンである『笑顔にする』ということに合ってると思うんですよ。」
ーーそれは実現できたんでしょうか?
片岡「そのための機能は、ハードウェアに入っています。人の表情を見て感情を推定することができ、それによって話しかけます。喜び度何パーセントとかの認識ができて、喜んでいるようであったら喜ぶ。悲しんでいるようだったら悲しむ。そうすることで、寄り添うことができるわけです。」
ーー寄り添って、笑顔にさせるところまでやってくれるんですよね?
片岡「極力そうしようと思っていますが、なにぶん5歳児なもので、意図的に持っていけないケースはあります。ただ、そのズレたところでも笑顔になってくれればしてやったり、と思っています。」
ーー表情で笑顔であるとか悲しんであるとかを認識できるんですね。いわゆる顔認識によって個人の特定はしないとのことですが、特定しないのであればそのデータは他に活用できそうです。そうしてサーバに集まった多くの情報はキロボミニとユーザーのコミュニケーション材料としてしか使わないんでしょうか?
片岡「キロボミニで集めた情報を僕は『鍵付きダイアリー』と呼んでいます。もしそうでなければSNSになってしまいます。愚痴だって言えなくなる。人とのコミュニケーションのためにはそういう吐き出すことが必要だと思うんです。なのでそのため(ユーザーとキロボミニの)コミュニケーションだけに使うのが必要なんですよ。それにトヨタの信頼にも繋がります。」
ーーそうか、その鍵がかかってないと、本音が出ない。そうするとキロボミニの目的である本当のコミュニケーションができなくなるんですね。
片岡「だから基本は一対一で使ってください、と思ってました。けれど、いろんな話をするうちに、家族で使ってもらう想定があってもいいかなと思い始めました。家族の食卓にキロボミニが座っている。家族の一員になって、親が子供に叱ったとき『だよねー』と言ったとしたらそれで子供は反省するかもしれない。親も言い過ぎたと思うかもしれない。円滑にすることができるかもしれない。そして家族の記憶を残しておくこともできるかもしれない。そういうバージョンも必要かもね、と思っています。」