自動車ジャーナリストが考えるプラグインハイブリッド車の存在感とは【PR】

大容量バッテリーを積み、充電もできるように進化したハイブリッド車。昨今、そんな存在ともいえるプラグインハイブリッド車の選択肢が世界的にみても急速に増えています。なぜここへきてラインナップが急展開しているのか?その背景にあるものは? 自動車雑誌やWEBメディアなどで活躍する自動車ジャーナリストで次世代エコカーに詳しい鈴木ケンイチさんにズバッと聞いてみました。
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世界的に支持されつつあるハイブリッド車

――日本ではエコカーといえばハイブリッド車というイメージがありますよね。世界的にはどうなのでしょうか?

鈴木:ハイブリッド車が増えていくのは間違いありません。エコカーには、ハイブリッド車(HV)だけでなく高効率ガソリンエンジン搭載車、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、そして燃料電池自動車(FCV)と多岐にわたります。そのなかでも、ハイブリッド車はこれからしばらくの間主流になるでしょう。

――日本においてもですか?

鈴木:日本は簡易的なハイブリッド(オルタネーターに電気を送ってモーターにして駆動力の補助に使うシステム)から比較的大きな電池とモーターを搭載し、エンジンとモーター両方を駆使し走行する高性能ハイブリッド、そして外部から走行用バッテリーを充電できるプラグインハイブリッドまで、車両価格やクルマのキャラクターにあわせていろいろ選べるようになるのは間違いないですね。世界的にも同じ流れで、中~高価格モデル車はプラグインハイブリッド、低価格モデルは簡易的なハイブリッドになっていくでしょう。

――その理由はどこにあるのですか?

鈴木:世界的に燃費への要求が高まっているからですね。そこにはふたつの側面があります。
ひとつはユーザー側からの視点。いま(2016年2月現在)はガソリン価格が安くなっていますが、すこし前にはガソリンがとても高い時期がありましたね。今後も長い目で見るとガソリンの価格は上昇することでしょう。だからガソリン代を節約できる、燃費のいいクルマが市場から求められているのです。

もうひとつは自動車メーカーの事情。「CAFE」*と呼ばれるアメリカの燃費規制など、自動車メーカーごとに販売するモデル全体で平均した燃費を基準値以上にする必要があります。同様に欧州でも規制があり、それをクリアするためには燃費性能に優れたハイブリッド車が必要不可欠だからです。
いずれにせよ、ガソリンなど化石燃料は限りある資源なので燃費に優れたクルマが増えるのは望ましいことですね。

欧州で圧倒的な注目を集めるのはプラグインハイブリッド車

――最近、急激にプラグインハイブリッド車が増えてきた気がします。

鈴木:日本ではプリウスPHVなどが代表車種としてありますが、欧州車では昨年あたりから相次いでデビューしていますね。複数のモデルを日本でも販売しているメーカーもありますし、様々な欧州自動車メーカーからPHVのラインナップが増えつつあります。そして先日、これまでの高級スポーツカーやSUVといった車種だけでなく、量販車種においても日本市場でプラグインハイブリッド車を発表した欧州の自動車メーカーもありました。増えているのは事実です。

――その理由はどこにあるのですか?

鈴木:最大の理由は先ほど説明した燃費規制。ハイブリッド車でも従来のガソリン車に比べると燃費性能に優れるのですが、より上手に電気を活用するプラグインハイブリッド車なら、使い方にもよりますが、さらにガソリン消費を抑えて燃費をよくすることができます(※1※2)。プラグインハイブリッド車をラインナップすることがメーカー全体としての燃費規制をクリアする現実的な糸口となるのです。環境先進国であると同時に自動車先進国でもあるドイツのフランクフルトモーターショーでも、注目のモデルはプラグインハイブリッド車が多いですね。

――北米はどうですか?

鈴木:EVが注目されていますが、その一方で、アメリカの自動車メーカーの中ではハイブリッド車のラインナップがかなり増えました。クルマの使い方として長距離移動が多いので、ロングドライブ時でも電欠の不安がないハイブリッド車がますます増えていくでしょう。その先に、プラグインハイブリッド車があると思います。

――中国の事情は?

鈴木:ちょっと特殊で、国策による部分が極めて大きい。そして都市部を走っているバイクは規制(大気汚染を防ぐためエンジンつきバイクの走行が禁じられた都市も多い)により電気モーターだったりと、EVが普及する土壌はあると思います。実際に昨年の中国におけるEV販売台数は25万台弱(中国汽車工業会発表による2015年の電気自動車工場出荷台数)で日本や北米を大きく上回るというデータもありますしね。
とはいえEVが本格普及するにはまだ時間がかかりそう。技術的には日米欧よりも遅れていて、価格面も含めて一般的な乗り物とまではいっていない印象です。

――では日本はどうでしょうか?

鈴木:将来的には燃料電池自動車(FCV)が増えると思います。国も後押ししていますしね。ただ、それは数十年とか長いスパンとして見たときの話であって、それまではプラグインハイブリッドを含めたハイブリッド車が大きな割合を占めるようになるでしょう。EVも増えると思いますが、この先数年で急激に増えることはあまりないと思います。

*CAFE(Corporate Average Fuel Efficiency)「企業(別)平均燃費」
アメリカでは自動車製造企業ごとに企業平均の燃費を算定し、その燃費が基準値を下回らないように義務付けられています。