このように色々な話題を呼んでいるトヨタの特許実施権無償提供とは、どのように行われるのでしょうか。海外ではその国ごとの法律に従うことになりますが、少なくとも日本国内では一般に企業が自社保有の特許の実施権を他社に提供する方法は大きく分けて2つの方法があります。
その方法とは「特許権の専用実施権を許諾する」方法と、「特許権の通常実施権を許諾する」という2つの方法です。
これらの特許実施権を許諾するという方法は、特許権自体は元の企業が保有した状態で、たとえば特許技術を利用して製品を製造・販売するという実施行為を特許権を保有する企業が許諾するということになります。
では専用実施権と通常実施権の違いは何かというと、専用実施権を設定すると、特許権を保有している企業も特許技術を実施することができなくなり、専用実施権を許諾された企業だけが特許技術を実施できるようになります。一方、通常実施権では、通常実施権を許諾された企業が特許技術を実施することを許されるだけで、特許権を保有する企業は許諾前と同様に自社の特許を実施することができるという点が異なります。
今回のトヨタのFCV関連特許の実施権無償提供は、発表内容から判断すると、通常実施権を無償で提供するものと見られています。特に、燃料電池スタック、高圧水素タンク、燃料電池システム制御などの基幹システム関連の特許に関しては、FCVの市場導入初期と想定されている2020年末までに期間を限定していることが注目されます。