FCV(燃料電池車)のコストダウンには脱レアアースが必須!

トヨタ自動車が10月8日、メディア向けに東京・晴海で開催した「先進技術説明会」で、FCV(燃料電池車)の試作モデルを初公開したのは既報のとおり。

TOYOTA_FCV

レクサス HSをベースにHV化したもので、燃料電池システムや水素タンク、プラットフォームは既に完成しており、市販車でもそのまま使われる予定のようです。

空気をセルスタックに送るFCV特有のコンプレッサー音を伴いながら軽快に加速、乗り心地や操安性も上々との評判。

 Lexus_HS250h
(レクサス HS250h)

同社によると、2015年の市販当初の価格は噂されていた500万円以下には収まっていないようで、800~900万円辺りとなる模様。 

普及価格にまで下げるには総コストの約60%を占める発電用の「セルスタック」の大幅なコストダウンと「量産効果」の2点が求められている状況。 

中でも、セルスタックの化学反応を促進させる電極用の「白金触媒」がコストを増大させる一因となっている模様。 

TOYOTA_FCV
(FCVシステム外観)

ちなみに「白金」の世界全体の推定埋蔵量は3~8万トン程度とされており、主な産出国は南アフリカ共和国、ロシア、カナダで、多くは南アフリカに偏在。 

グラム当たりの価格が5,000~7,000円と非常に高価で、「NEDO」によれば、FCV 1台に使用される白金の量は平均で約50gとか。 

現在の産出量は年間180トン程度で、世界の自動車年産台数の10%以下しか需要を満たせない状況と言います。 

先日、ベンチャー企業が京大との産学連携で開発した固形の水素化カルシウムから水素を発生させて発電する「固体水素源型 燃料電池システム」の話題をお届けしましたが、今回は白金触媒に代わる画期的な材料が開発されていると言う話題です。 

日清紡ホールディングスが群馬大学の尾崎教授と共同で開発した「カーボンアロイ触媒」がそれで、白金の代替触媒として世界最高レベルの発電性能が確認されたことから、実用化への期待が高まっている模様。 

(カーボンアロイ触媒を使った燃料電池による発電デモ)

「カーボンアロイ触媒」は数%の窒素を含んだ炭素が主成分で、カーボングラファイトに窒素とホウ素を入れてアロイ化、白金と同じように燃料電池の酸素還元反応を促進する機能を発揮するそうです。

価格は白金の6分の1、もしくは10分の1程度まで低減可能で、手の平サイズにすれば携帯電話やスマホの充電にも使える模様。 

白金触媒の他にもセルスタックの心臓部である電解質膜の材料や、セルを区切るセパレータなど、様々な部品の低コスト化についても「NEDO」が推進するプロジェクトの元で産学連携により研究が進められている状況。 

TOYOTA_FCV

2020年の本格普及に向けたFCVのコストダウンは新たな研究成果と共に着実に進んでいるようです。 

■NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
  http://www.nedo.go.jp/ 

■日清紡ホールディングス Webサイト
  http://www.nisshinbo.co.jp/r_d/index.html

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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