歩行者への頭部を守る「ポップアップ式フード」普及始まる !

交通死亡事故のうち、歩行中の事故の割合は米国で12%、欧州で14%、中国で25%を占めているそうですが、日本ではそれを大幅に上回る約36.6%(2,000人/年以上)と割合が高く、うち過半数は頭部損傷によるものと言います。 

こうした傷害を軽減する目的で2008年にホンダが「ポップアップフードシステム」を開発、同年9月に発売されたレジェンドに初めて搭載しました。

ホンダ レジェンド

これは車速25km/h以上で走行時にフロントバンパー内の中央と左右の計3ヵ所に設置されたGセンサーと車速センサーが歩行者との衝突を感知すると、アクチュエーターを作動させてエンジンフードの後部を瞬時に約10cm持ち上げることにより、エンジンなどの硬い部品とボンネットフードの間に空間を確保し、歩行者の頭部への衝撃を低減するもの。

ホンダ ポップアップ式フード

続いてトヨタがエンジンフードやフロントバンパーで構成する「歩行者傷害軽減ボディ」に加えて、更なる傷害軽減を目的に新型クラウンのHVモデルで「ポップアップフード」を採用。 

トヨタ ポップアップ式フード(新型クラウン)

この機構の採用により、頭部傷害値(HIC:Head Injury Criteria)が大幅に低減できるとのことで、エンジンフードとエンジンルーム内の空間が確保し難いデザインの車種でも歩行者保護性能の確保が可能になったといいます。 

トヨタ ポップアップ式フード

ホンダ方式との違いはバンパー前面全域に配置された中空構造体と圧力センサーで衝突位置を問わず、より安定したセンシングを可能にすると共に、衝突物が歩行者か否かの高度な判別性能も確保した点。 

トヨタ ポップアップ式フード

そしてVolvoが2月19日に発売した「V40」ではさらに一歩進めて歩行者用エアバッグを装備。 これはフロントに設置された7つのセンサーにより、20~50km/hでの走行中に歩行者との衝突を感知すると、瞬時にフードヒンジ部のピンを引き出してフードパネル後方を開放すると共にエアバッグのガスを充填&展開。 

Volvo 歩行者用エアバッグ

エンジンフード後部を10cm上昇させ、エアバッグがフロントウインドシールドガラス下部やAピラーなどの硬い部分を覆うことで歩行者の頭部に与える衝撃を軽減させるもの。

同社によると、6万円のオプション価格で装備可能とか。 

このように近年、自動車メーカー各社が歩行者への加害性低減に向けた新機構開発に積極的に取り組んでいる様子が伺えます。 

〔関連記事〕
■VOLVOが歩行者に優しい「飛び出すエアバッグ」を採用 !
https://clicccar.com/2012/05/29/158922/ 

■国土交通省 歩行者頭部保護基準の概要
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/09/090420/02.pdf 

■歩行者頭部保護基準の試験の様子
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/09/090420/01.pdf

Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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