ハイブリッド初期の初代インサイト、10万kmで電池交換により燃費も復活!

〈MONDAY TALK星島浩/自伝的・爺ぃの独り言27〉 複数保有ながら、初代インサイトを愛用して13年に近づき、走行積算計が10万8000kmを示す。これほど走らせた車歴はない。

初代プリウスを買うつもりでいたら、ジャーナリスト仲間の三本和彦さんに先を越されたのと、インサイトを事前試乗し、高根沢工場を見学した時点で翻意。2人しか乗れない、ラゲッジスペースにトノカバーもないのを承知で、2000年2月末、発売直後に購入した。

CVT車218万円也。因みに初代プリウスは215万円。

購入補助金はプリウスも同条件。オールアルミ・ボディのインサイトが200万円足らずで買えるなんて、見逃す手はないと即断した。

プラットフォームにアルミパネルを架装するのと違う。内外板ばかりか、サイドフレーム、クロスメンバー、サイドシル、ピラーやルーフレールに至る全骨格がアルミ。工場は鋳造、鍛造、射出成型—-押し出しつつ曲げていくピラーやルーフレールの造り方は、補強材を加える鋼板プレスと異なり、美しく魅力的に映る。半面、大量生産できるとは思えず。いかにも実験技術研究車的だ。ならば、なお、このクルマが200万円弱で買えるチャンスは永久にこないだろう、と。

初代プリウスが「曲がる・止まる」性能に弱く、インサイトが優れる点は事前試乗で判っていた。Cd値もさることながら、前面面積が小さい空力ボディと低重心設計、車両重量が軽乗用車並みの830kg。これらが動力性能と曲がる・止まる性能に効かない道理はない。

                                    

それでも購入後、僅か1年で「より転がり抵抗が大きい」タイヤに交換した。語弊承知。制動性能とコーナリングフォースに不満を覚えた。

実用燃費には確信があった—-「爺ぃなんだから、もっと大人しく走れョ」と仲間にたしなめられる身だが「このクルマなら私の走りでもリッター20kmはカタい」と確信。ゆうに軽乗用車を凌ぐ実用燃費である。

事実、燃費に不満を抱いたことはない。当初1ヶ月ほどは18km/Lだったが、2人乗って鈴鹿サーキットまで途中給油なしで往復。帰りの首都高で、ようやく残量警告灯が点いたもの。積算1万kmを過ぎた後は生涯燃費も20.1km/Lに落ち着き、約12年弱で10万kmに達した。因みに燃料タンク容量は軽乗用車並みの約35リットル。

最近の試乗実績では軽のミラ・イース、ハイブリッド版アクアの実用燃費が20km/Lを超え、ミラ・イースは高速道路を走るのがしんどいので、次はアクアを買う気になっている。クルマを替えてもアルミボディのインサイトは売り払わず、茨城の倉庫で暫く眠らせておくつもり。

そのインサイトが、異変に気づいたのは積算10万km時点である。

アクセルOFFした際 計器に示される充電グラフの伸びが鈍ってきた。通常、右端まで一気に伸びる棒グラフが60〜70%で頭打ちだ。

システムバッテリーの性能劣化に違いない。充電能力が落ちれば、放電能力も落ちる道理で、モーターアシストの働きが悪化すると「電気ターボ」が働かなくなり、アイドルストップ後の再始動もおぼつかない。

現在は改善されているが、ホンダIMAは元来インテグレード・モーターアシスト方式で、VTECエンジン休止領域はモーター走行するし、どだいエンジン始動もモーターが行う。むろんエンジン走行領域は少なくないのだが、走り始めると全運転域でモーターが介在するから、システムバッテリーが劣化したらエンジン走行も苦しくなる。

                             

       1999年。「ホンダ・インサイトのすべて」取材中のワンシーン。

劣化に気づいたのは浅草近く。これは大変だと、比較的空いている上野・日本橋間の首都高で、あれこれ検証した足で、芝浦のサービス工場に直行。システムバッテリー劣化を確認して、交換を依頼する。

12年も前のバッテリーであり、そもそも一部輸出を除き2000台強を国内販売した時点で生産を打ち切った初代インサイトとあって、調達に手間取ったようだが、無事、交換できた。

費用総額は約30万円。当初の購入補助金が飛んだと思えば以て瞑すべしか。ただし、おしなべてハイブリッド車のバッテリー交換費用も今は15万円程度に下がっている。リチウムイオンは知らず、ニッケル水素電池は10万kmが交換目安だから、当インサイトに限らず、初代プリウスも大半がシステムバッテリーを交換したに違いない。

むろん捨てるのではない。御用済みバッテリーは定置型蓄電池への再利用が進みつつある。頻繁に充放電を反復する能力は失せても、ゆっくり充電し、少しずつ放電するならまだまだ実用に堪える。

ところで、わが初代インサイト—-バッテリー交換後も、幸いエンジン、モーターとも好調。以後、生涯燃費が20.2km/Lに向上した。最近、確かめると、ちょいちょい20.3km/Lを示し始めている。

交換して1年強。走り方は変わっていないから、バッテリーの充・放電能力が向上すると、実用燃費も良くなると言えそうだ。今週か来週か。車検更新。販売店から入庫予約を促されている。★