オリンピックメダリスト×オーケストラから見えるアウディのSモデル戦略

アウディのSモデルと言えば、通常のAで始まるモデルとボディを共用しながらハイパワーエンジン、スポーティな足まわり、上質なインテリアなどを与えたモデルです。外観はそれなりのタイヤホイールなどを除けば、これ見よがしの変更を行わないのも特徴だといえます。

そのSモデルシリーズの中でもハイエンドに位置するS6、S6 Avant、S7 Sportback、S8が新シリーズとして日本で発表されました。

このクラスの大型サルーンもやはりダウンサイジングの流れで以前のV10気筒からV8気筒へと排気量は縮小、さらに加速時などに必要な時以外は8気筒の内、4気筒で走らせる「シリンダーオンデマンドシステム」なども採用し、最大パワー/トルクはキープどころか上げる方向としながら、燃費は確実に向上させてきました。

そうしたSモデルシリーズですが、わかりやすく感覚的に捉えてもらおうと、まずは佐渡裕氏指揮によるオーケストラ演奏、そしてロンドンオリンピック200mバタフライ銅、400mメドレーで銀メダリストとなった松田丈志氏をゲストに呼んでのお披露目でした。

オーケストラ演奏は単なるクラシックではなくロックのテイストも含んだもので、伝統をベーストしながら常に進化していることを、また水泳ではいかに効率良く前に進むかが共通するものというわけです。

また、プレゼンテーションでは、アウディ・ジャパン社長の大多喜寛氏が自ら行います。

まず、アウディのSモデルというはアウディのAとRSの間に位置する、最高のパワーとモータースポーツで培われた、高効率テクノロジーを併せ持つスポーツモデルであること。

最初のSモデルは、パイクスピークヒルクライムで勝利したクアトロシステムとツインクラッチを搭載したsport quattro S1 (1985)だったそうです。当時からモータースポーツのバックボーンをベースにされたことがわかります。

そして最初の市販モデルはS2で、いまでいうA4のポジションにある80をベースに1990年に登場。

1991年には100(現在のA6にあたる)にS4が追加されるなど、Sモデルは着実に各モデルにのスポーツモデルの照合として登場してきました。

想定されるユーザー層は「Intelligent power player」。知的な力強さをバランス良く表現できる人たち。例えばプロならもちろん、アマチュアでも趣味のスポーツの道具にこだわりを持って楽しむような人でしょうか。

S8、S7、S6に搭載されるパワートレインはV8 4リッターTFSIツインターボエンジン。S8では520ps/5800-6400rpm、650Nm/1700-5500rpmをS7とS6には420ps/5500-6400rpm、550Nm/1400-5200rpmを搭載します。

先代S8で比べると、5.2LのV10エンジンから排気量、気筒数を下げながら、最高出力、最大トルクとも向上しています。

CO2排出量(つまり燃料消費量)では23%減となっています。

大きな省燃費技術として、8気筒エンジンの4気筒を必要に応じて休ませたり働かせたりするシステムを搭載しています。

ただ、4気筒運転時などにもより快適な室内空間をもたらす技術も搭載されます。アクティブエンジンマウントは、エンジンマウントに電磁コイルを搭載し、深いな振動を打ち消します。

アクティブノイズコントロールは、エンジンなどのノイズと逆位相の音を意図的に発生させ、音を消し合い静かなな車内環境をもたらしています。

アウディハイエンドモデルの販売状況は好調で、2012年は1-7月で、2011年の販売実績に及ぶ勢いで、2012年の年間見通しでは4500台が見込まれています。

今回発売されるモデルは、S6:1180万円、S6 Avant:1210万円、S7 Sportback:1224万円、S8:1580万円で、販売目標はあわせて200台ですが、これは納車が始まる10月以降頃からの台数とのこと。

コンパクトからハイエンドまで、プレミアム路線で着々と販売台数を伸ばし続けるアウディ。景気の悪い話が多い中、なぜか日本人がメダルを獲得したようで、こちらまで嬉しくなってくる気がします。

(小林和久)

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この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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