自動車取得税の廃止は歓迎されていなかった!? 民主税調の取得税廃止検討

11月中旬に自動車メディアを駆け巡った「2014年までに自動車取得税廃止なるか? 民主税調が調整へ」という記事。clicccarでも取り上げたので記憶に新しいことでしょう。

2014年までに自動車取得税廃止なるか? 民主税調が調整へ
https://clicccar.com/2012/11/12/204579 

これは政党としての民主党が税金の見直しを検討するということであって、財務省や国土交通省が提案したことではないということがポイントです。しかも11月16日に衆議院が解散し民主党の税制調査会が事実上機能していない今となって、棚上げされてしまうのではないかという懸念の方が先に立つ状況。自動車取得税と重量税の廃止を訴え続けてきた自動車工業会や日本自動車連盟にとっては「またもや!」という気持ちになっているかかも知れません。

選挙のためのリップサービスという見方もありますが、ここでそれを言及するのは憶測になるのでやめておきます。それ以上に今回の「自動車取得税廃止の検討」の発表は大きな波紋を呼んでいます。

「自動車取得税廃止の検討」の発表がなされた直後、数社の自動車ディーラーに取材したところ、実は輸入車ディーラーにとって深刻な問題が発生していたのです。
輸入車ディーラーは12月決算のところが多く、したがってセールや特売、限定車等で この時期の販売台数が非常に多い。当然ながら買い替えの潜在需要もこの時期に集中します。その営業は11月頃には大詰めを向かえ、12月納車というのがごく普通の流れとなります。

ところが、その営業の大詰めの時期に「自動車取得税廃止の検討」の発表がなされたため、契約寸前の顧客の多くが買い替えから車検に切り替えてしまったのだというのです。
3月決算の国産ディーラーも決算期には同じような状況が懸念される、と不安を隠しきれない様子。 

輸入車の多くはエコカー減税の対象ではありませんので取得税はきっちりと取られてしまいます。ましてやその金額は10万円以上の場合が多い。新車購入から最初の車検で買い換えるのであれば、一度車検を通して取得税の廃止が成立してから新車を買ったほうが遥かにお得、と考えるのはごく普通のことです。

ディーラーへの取材は衆議院解散前に行ったのですが、輸入車ディーラーの多くは「何もこの時期に発表しなくてもいいのではないか」と半ば怒り気味。また解散後に取材したディーラーでは「選挙のための人気取りではないか?」と声を荒げる方もいるほど。取得税廃止は歓迎するものの発表の時期が悪すぎるというのが、取材した自動車ディーラー全般、特に輸入車ディーラーに顕著な意見。報道が先行したまま先行きが見えない状態となって売り上げを直撃してしまったということなのです。

自動車取得税は新車購入時や登録6年未満で50万円以上の中古車購入時に1回だけ払う税金、しかし重量税は車検の度に払います。エコカー減税でハイブリッド車やクリーンディーゼル車を新車で買えば自動車取得税は全額免除ですが、重量税は新車購入時のみの免除であって車検が来れば払わなくてはいけません。冷静に考えて、これらの税金を廃止するのであれば、両方をセットで考えていただかなくてはいけないのではないでしょうか?

自動車購入には取得税、重量税の他に消費税も課税され、普通税に分類されるものが トリプルでかかる三重税制なのです。消費増税が決定された今、消費税と同じ性質の一般財源相当とされる自動車取得税と重量税は、その根拠を失っているといわざるを得ません。また地方税である自動車取得税を廃止し国税である重量税を残すという発想が地方分権の考え方に合致しない上に、エコカー減税などで今現在の売れ筋のクルマは現状では取得税を消費者から徴収しておらず、地方自治体には国庫から取得税相当の補填があるものを打ち切るということに等しい。

12月16日の衆議院選挙はエネルギー問題や外交など、争点は多岐にわたると思いますが、税制なども含めて一本筋を通してくれるような議員の方を選びたいものです。

(北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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