ドラマは勝者だけではない。各チームの戦いを振り返る【第16回全日本学生フォーミュラ大会】

2018年9月4日(火)から8日(土)まで、静岡県小笠山総合運動公園では今回で16回目を数える全日本学生フォーミュラ大会が開催され、8年ぶりに大阪大学が総合優勝を獲得した。

もちろん勝者にスポットが当てられるわけだが、このイベントはどの学校のチームを採りあげてみてもそれぞれにドラマがある。まさにそれこそが学生フォーミュラである。

今回は、2016-2017の大会の覇者、京都工芸繊維大学の3連覇がかかった大会。日本大会での3連覇といえば、2006-2008年の上智大学の記録に並ぶこととなるのだが、残念ながらその記録に並ぶことはできなかった。

また、もう一つの注目としてはガソリンエンジンで総合優勝の経験のある名古屋大学が昨年EVへクラス変更して臨み、EV過去最高位となる総合4位に入っており、EVの総合優勝があるのでは? とも囁かれたものの、一歩及ばず3位に終わっていた。

名古屋大学EVチームを追いかける立場にあるのが、2014年から参戦を続けている東北大学だ。このチーム、静的審査はしっかりと得点を得たものの、車両のほうは今回バッテリーコンテナが完成しておらず、まさかの車検不通過となってしまった。

「メンバーが5人しかおらず、あと1週間欲しかった」という敗戦の弁。搭載するバッテリーは、すでに公道実験も行っている学内で開発中のマンガン系リチウムイオンバッテリーを搭載する予定だった、ということでその性能も見せることなく終了してしまった(51.86点/総合81位)。

EVといえば、気になっていたチームが、トヨタ東京自動車大学校EVチームだ。彼らは昨年この学生フォーミュラ初参戦であった。昨年はかわいそうなほど走行もままならないという状況であった。大会開催中、常にピットエリアで作業を行っている姿があり、それと同時に何名かの学生がそのすぐ横で仮眠をとっている、まさに不眠不休でここまでやってきたのだな、ということがわかる参戦だった。

そんな彼らも2年目になると全く雰囲気が違っていた。まず全員が起きており、やるべきことをこなしている印象。審査もそれなりに順調でちゃんと最後のエンデュランスで走行をすることができたのだ。そのエンデュランス走行では、他車との速度差があり、145%ルールが適用され最後まで走れなかったのが残念だが「ようやくスタート地点に立てた」という言葉が印象的だった(-58.71点/総合88位)。

同じく自動車大学校の中でも群を抜いて成績が良いのは、千葉県成田市にある日本自動車大学校(NATS)だ。カスタマイズ科の学生たちの作品が東京オートサロンで大きく採りあげられることもあり、クルマ好きの中でもよく知られたこの学校では、3D-CAD設計コースおよびマネージメントコースの授業の一環としてチームの活動が行われている。

そのため、メンバーは単年ごとに入れ替わるものの、ドライバーのレベルも高く、参戦から9年目、常に上位に入る健闘ぶり。シングルゼッケンをつけることが多く、ここ2年は過去最高位となる5位に入っている。しかし、まだ一度も優勝がない。

今回はエンジンをヤマハMT-07のものに変更し、エンデュランスでの上位とのタイム差(2秒/ラップ)をどう詰めるか、をターゲットに排気量アップとボディの軽量化に取り組みロールセンター移動量ゼロを実現するサスペンションジオメトリーを採用するなど積極的に上位を狙う仕上げをしてきた。

「7号機(2016年モデル)でF4ドライバーに乗ってもらって出したタイムと、9号機で学内の普通のドライバーが同じタイム同じタイムが出せる」とチームリーダーの西岡佑馬さん。しかし、今回はエンデュランス審査出走直前に大雨となってしまい、大量得点のチャンスを逃し、27位と過去最悪の結果となってしまった(538.86点/総合27位)。

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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