年産1000台のシーマだからこそ、極上品質にこだわり抜けるのです!【新型日産シーマのすべて】

新型シーマは、グローバルモデルのフーガをベースとすることで、世界販売台数の厳しい縛りがなくなりました。しかし、もちろん国内販売1000台という目標があります。

「結構、強気だなぁ~」と思いきや、実はこれ月間ではなく年間目標なのですね。いやはや今度は「弱気すぎるのでは!?」というのは、余計なお節介でございました。なぜならここまで割り切ったからこそ、極上品質の生産が実現できたからです。

 

新型シーマは、GT-Rやインフィニティを生産する栃木工場で造られます。日産車の高額・高級・高性能の3高(古っ)を担っている工場なのですね。特にGT-Rでは、桁違いの組み立て精度を実現しているそうですから、栃木工場はまさに「日産の匠」の拠点と言えるでしょう。

その栃木工場で、新型シーマにふたつの手法が導入されています。

ひとつは、中塗り塗装後の水研ぎ工程「中研ぎ」です。まさに匠の技を持つ熟練の塗装スタッフが、一台に一時間かけて磨き上げているのです。しかも有資格者は4人しかいないそうで、まさにシーマが腕利きの職人さんを独占しているそうです。

 ふたつ目は、試験工程です。完成検査工程では、熟練の検査士がじっくり一時間かけて各部の仕上がりを点検します。また完成車の試験走行では、なんと後席にも試験官を乗せて乗り心地や異音等のチェックを行うのだそうです。

「弱みは強み」とよく言われますが、極少生産だからこそ、有資格者を投入して極上品質を提供できるのですね。また、極上品質を生産する日本の生産拠点のポテンシャルも、本当に素晴らしいと思います。

ちなみに自動車生産は、効率が第一です。そのため価格に転嫁しにくい品質工程は、これまでやりたくても出来なかったのだと思います。そういう意味では「グローバルモデルから派生した超高級ローカルモデル」という新型シーマのスキームは、品質を価格に転嫁してもライバル車よりリーズナブルに供給することができます。まさに「お宝スキーム」なのかもしれませんね。

(拓波幸としひろ)