スクエアな中にわずかなRで個性を主張した質実剛健セダン/ワゴン。ボルボ 850【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第30回は、質実剛健なスクエアボディに、スポーティな印象を盛り込んだVOLVO 850のセダン/ワゴンに太鼓判です。

■すべてを一新した新世代ボディ

80年代後半、ボルボは70年代からラインナップを支えて来た人気車種である240シリーズの後継車を計画。1991年、満を持して発表したのが新世代を見据えた850シリーズです。

VOLVO 850 sedan
VOLVO 850 sedan

「従来車との共通点はひとつもない」と言われたオールニューの850は、既出の700シリーズを引き継ぐスクエアなイメージで登場しましたが、各所にわずかなRを施すことと、より張りのあるパネル面によって、ボディ全体の質感を大幅にアップさせました。

850・アイキャッチ
意外にノーズが低く、ウエッジのきいたボディ。スクエアだが、絶妙なRが施される

意外に低いノーズに対し、セダンではかなりのハイデッキが特徴で、スクエアでありながら80年代後半の開発車らしいウエッジボディを感じます。一方、遅れて登場したエステートは、ルーフを後端まで延ばしたほぼ垂直のテールゲートが極めて高い実用性をアピール。

850・リア
エステートはほぼ垂直なテールゲートと、これに沿う縦長のランプが印象的

低いベルトラインによる大きなキャビン、広いウインドウ面積も同時代らしさ。ただ、巨大な前後バンパーを含め、ボディを1周する幅広いプロテクターがボディ下半身をガッシリ固め、頭デッカチになることを巧妙に回避しています。

フロントでは、フードからのV字ラインを受けたグリルが意外に立体的で、横長のランプとの組み合わせも良好。リアは、セダンの大型長方形のランプがスクエアなボディを引き締め、エステートの縦型ランプは高いテールゲートに先進感を加味します。

■現在の基礎を作った高い評価

850・インテリア
2段構造のインパネが重厚感を生み出すインテリア。スイッチ類の緻密さも特徴

インテリアは、上下2段構造のインパネがまず強い重厚感を示し、さらにメーターと空調口を一体とした造形がそれを増幅させます。また、大型のセンターコンソールはスイッチ類が緻密さと機能性の高さを感じさせます。

850は、質実剛健さと先進性の好バランスにBTCCなどレースでの活躍も加わり、世界的なヒット作となりました。造形的にも、エステートが1994年のグッドデザイン大賞を獲得するなど高い評価を受け、クリームイエローのボディ色も強い印象を与えました。

モータースポーツ
ステーションワゴンながらモータースポーツでも活躍

新しい90シリーズ以降、現在の好調さもデザインによるところが大ですが、それは歴代が築き上げた確固たる「ボルボらしさ」がベースにあってのこと。その点、70年代から90年代ボルボの集大成とも言える850の功績は非常に大きいといえそうです。

●主要諸元 ボルボ 850エステート T-5 (4AT)

全長4710mm×全幅1760mm×全高1460mm
車両重量 1520kg
ホイールベース 2665mm
エンジン 2318cc 直列5気筒DOHCターボ
出力 225ps/5280rpm 30.6kg-m/2000-5280rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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