潔い割り切りが生んだ明るくポップなフレンチコンパクト「ルノー・トゥインゴ」(初代)【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第19回は、ライバルの活躍を一気に巻き替えずべく生まれた、超個性派フレンチコンパクトに太鼓判です。

■すべての課題をクリアするモノスペース

twingo・メイン
「モノスペース」と名付けられたワンモーションフォルムが居住性とインパクトを両立した

かつての4(キャトル)のようにキュートなコンパクトを模索していたルノーは、先行したパンダやウーノ、Y10といったライバルを研究。そのサイズや居住空間、アピール力をすべて兼ね備えたオールニューコンパクトが、1993年発売の初代トゥインゴです。

メーカー自ら「モノスペース」と称するボディは、エンジンルーム、キャビン、ラゲッジの区分がない、あたかも一筆書きのようなカプセルシェイプ。全長3425mmに対し2345mmの長いホイールベースにより、四隅で踏ん張るタイヤが座りのいい安定感を生み出します。

余計なラインを持たないボディは、全身が張りのある面で構成され、小さなボディに高い質感を与えます。ただ、大半が曲面でまとめられているとはいえ、キリッとしたピラーやベルトラインなどにより、過度な丸さは感じられません。

twingo・アッパー
ほとんどが局面で構成されていながら、過剰な丸さは感じない

フロントはランプをバンパーに食い込ませることで低く、かつ一体感を持った表情に。初期の素材色のバンパーによるカジュアルで軽快なイメージもよかったですが、質感を大幅に上げた後期のカラードバンパーでは、センターに残された素材色がボディを引き締めて魅力的です。

一方で、リアビューは極めて常識的なハッチバックスタイルとし、ワンフォルムの大きな流れをしっかり受け止めます。ボディカラーは、当初の彩度の高い青や黄色がいかにもフランスらしいエスプリを感じさせますが、その後に設定されたパステル調のグリーンやピンクもよく似合います。

■内装も明るくポップに

インテリアでは、機能的でありながらポップな造形のダッシュボードが魅力。いかにも樹脂という素材感を逆手に取った手法です。また、あえてボディ色の金属を露出させ、内装カラーをこれとコーディネイトさせることで明るい室内を作り出しました。

twingo・リア
比較的常識的にまとめられたリアビューは、フロントからの流れをしっかり受け止めている

アヴァンダイムなどで知られるパトリック・ルケモンが、初めて開発の当初から関わったのがこの初代トゥインゴ。ファミリー向けはルーテシア(クリオ)に任せ、ワングレードに割り切ったことで制約が減った分、思い切ったスタイリングができたといいます。

たとえばエスパスをも参考にしたというその造形は、事前クリニックでは否定的な意見も多かったとか。しかしルケモンの強い意志が間違いでなかったことは、後の氏の活躍で証明されることになります。

●主要諸元 ルノー トゥインゴ (5MT)
全長3425mm×全幅1630mm×全高1415mm
車両重量 820kg
ホイールベース 2345mm
エンジン 1238cc 直列4気筒OHV
出力 52ps/5300rpm 9.1kg-m/2800rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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