細部のどこを見てもアウトドアアイテム感あふれるスタイルを実現【新型ハスラー デザイナー インタビュー】

■「アウトドアがナチュラル化した時代」に合うデザインを

2013年にデビューするや大ヒットモデルとなり、ワゴンRやスペーシアと並ぶスズキの基幹車種に成長したハスラー。軽自動車にクロスオーバーブームを作った、業界トレンドを牽引する重要モデルでもあります。

その2代目となる新型のデザインは、初代モデルのアイコンを残しながらも2代目ならではの進化と個性が随所に光るもの。

今回、この内外装の造形のこだわりはどこにあるのか、デザイナーに聞きました。

スズキ 四輪デザイン部 エクステリア課 係長 長田宏明さん

まずはエクステリアデザインについて、四輪デザイン部 エクステリア課係長 長田宏明さんにうかがいます。

── どんなコンセプトでエクステリアを作りましたか。

「ハスラーというクルマはアウトドアを売りにしたモデルなんですけれども、その『アウトドア』の捉え方がこの6年の間に、世間でだいぶ変化してるのではないかと感じました。たとえば街中で店の様子などを見ていると、初代ハスラーが登場した2013年以前というのはアウトドア用品は専門店で扱うといったイメージがまだ強かったのです。
ですが、現在ではサーフショップにカフェが併設されていたり、タフなウェアや腕時計をファッショナブルに着こなす人が多くなってきているといった感じで、皆さん、ナチュラルにアウトドアファッションを取り入れているな、と。
そこで新型のハスラーでは初代モデル同様に全体としてのアウトドアテイストを漂わせるのはもちろんのこと、各部にアウトドアギア的な意匠を持つものを『アイテム』としてデザインに積極的に取り入れていこうと考えました」

── なるほど、複雑な分割線を含む立体的なバンパーや、ごつい造形のテールランプなどにそれは確かに見て取れますね。ところで今回、サイドウインドウに6ライトを用いた理由は何ですか。

「SUVらしさをより強調するため、ボディ全体を四角く見せたかったというのがまずは前提です。そのための一つの方法としてルーフを延長していこうということになりました。すると結果的にバックドアが立って行きまして、Cピラーにスペースができることになります。
そこで視認性とデザイン性の両面からウィンドウを追加して6ライトとすることに決めたという経緯なのです」

── 今回のモデルは全体に四角くなって、ゴツゴツとした意匠が目立ちますが逆に空力への影響が心配です。

「随所で空力には気を使っています。ハスラーはバンパーの上下高が薄く、タイヤの露出部分が大きく見えるワイルドな見た目ですが、突起形状を工夫し、空気抵抗を軽減するよう配慮しています。
またヘッドライトユニットは、ウインカーを覆うアウター部分の形状を工夫して、ボディ前面に来た空気の流れをうまくサイドに流すようにしています。一見シンプルに見えますが、実は綿密に大きさや角度などを計算してセットされたものなんですよ。最終決定までにかなり時間をかけました」

── エクステリアの中での『ここを見て欲しい』というポイントはどこでしょう。

「サイドボディの断面などはとても工夫したところです。アウトドアアイテムにあるようなスチール製品ならではの厚みや、魅力的な曲げを表現できるようこだわりました。
最近ではプレスの技術も上がってきてエッジの小さな角アールですとか、面をひねったりといった技も使えるようになってきてはいるのですが、あえて伝統的な工芸品のような、自然な鉄板の曲がりかたで柔らかい線が再現できるように努力しています」

●内装でのカラーパネルは初代からの継承。全体はシンプルで力強く

続いてはインテリア編。初代のイメージを踏襲しつつも大きく変更された感のある内装。その狙いは何でしょうか。解説していただくのは四輪デザイン部 四輪インテリア課 係長の粒来 広さんです。

スズキ 四輪デザイン部 四輪インテリア課 係長の粒来広さん

── インテリアですぐ目に飛び込んでくるのは3つの大きなカラーパネルです。あれが表現したのは何ですか。

「アウトドアアイテムに見るタフでプロテクトされた機能感を表現するために、時計や携帯等の精密機器を守るプロテクションをイメージしたのがこちらのパネルです。
クルマの内装での精密機器といえばオーディオやメーターがあたります。これらに機能的収納が自慢のアッパーボックスを加えた“大事な3つのアイテム“をガードするという意味合いで、タフな3連ガーニッシュのデザインとしました」

── ドア部分にも大きなカラー素材が使われていますね。

「デザインスケッチワークの段階でハスラーの世界観を作りあげるため、エクステリアのモチーフをインテリアに取り込みながら考えました。
アームレスト部分にはハスラーのエンブレムのH型をイメージしながらカラ―パネルを使って特徴的にデザインをしました」

── それでは細部についてうかがいます。ドリンクホルダーが左は格納式ですが右はオープンタイプと非対称です。

運転席側のドリンクホルダー

「助手席側は使用しないときにはシンプルな見た目としたいため、格納式を採用しています。運転席側は据え置き式カップホルダにしました。ドリンク類の他にも使用シーンに応じて小物を入れることも想定し、常時置けるようにしました」

── ここに一番力を注いだという部分はどこでしょう。

「先代ハスラーはカラーパネルを採用したことによりお客様から御好評をいただきました。そこで新型ではハスラーの特徴であるカラーパネルを前提としてスケッチワークを始めました。それが先述の3連プロテクションガーニッシュです。
またカラーパネルを大胆に扱いながらも全体としては、骨格となる造形は横方向に一定断面を通し、縦長のルーバーは高さを揃えて配置しています。これによってインパネの構成がシンプルで力強い造形に見えることを狙っています。

4つのエアコン吹出口が整然と並ぶ

さらにインパネ上面は凹凸を無くすことで前席から見える景色がスッキリ、きれいに見えるように配慮しました。

車窓を楽しむためにあえてシンプルな水平ラインとしたインパネ上部

また新型のサイドウインドウはパーテーションガラス構造を廃止し、前側のレールを無くしたため横方向の視界も向上しています」

初代モデル。フロントサイドウインドウはパーテーションガラス構造となっているためレールがある。

新型ハスラーはこのように、初代が持っていた「車両全体で表現するアウトドアイメージ」といったところから一歩進め、各セクションやパーツ単体で見ていっても、確かなギア感を感じるものとしてデザインされているのでした。

細部のあらゆるところにこだわった造形を見るにつけ、確かにコンセプトが徹底されているなとわかります。また同時に、「これはデザイナーが楽しんだのだろうなあ」と思わせるポジティブな雰囲気が全体からあふれ出てもいるのでした。

(文/ウナ丼 写真/長野達郎・ウナ丼)

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この記事の著者

ウナ丼 近影

ウナ丼

動画取材&編集、ライターをしています。車歴はシティ・ターボIIに始まり初代パンダ、ビートやキャトルに2CVなど。全部すげえ中古で大変な目に遭いました。現在はBMWの1シリーズ(F20)。
知人からは無難と言われますが当人は「乗って楽しいのに壊れないなんて!」と感嘆の日々。『STRUT/エンスーCARガイド』という名前の書籍出版社代表もしています。最近の刊行はサンバーやジムニー、S660関連など。
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