■乗員が乗り込む前にエアコンONでお出迎え
豊田佐吉の興した自動織布工場を前身とし、現在は自動車の内装・外装、パワートレーンなどを広く製造するトヨタ紡織。
東京モーターショー2019では、CASEやMaaSといった変革の中で新しい価値を生み出す「インテリアスペースクリエイター」を目指すとして、アイシン、デンソー、豊田合成、東海理化と連携して開発した車室コンセプトモデル「MX191」を公開しました。
このMX191は近未来の自動運転を想定したインテリアスペースです。テーマは「もっと心地よく、もっと安心に、もっと好きなことを」。多彩なシートアレンジに加えて、ホテルのコンシェルジュのように空間と人を見守る仕組みを備えています。
まずは「お出迎えシステム」。ユーザーがクルマに乗りたい時はスマホに仕込んだアプリでMX191に伝えます。満充電でスタンバイしていたMX191はあらかじめエアコンと空気清浄を働かせたうえ、ドアに向かってシートを回転させてユーザーを快適に迎えてくれるというわけです。
ちなみにこの前席シートは、自動運転時にはスライドや回転が可能です。こうなるとエアバッグの展開などが心配ですが、シート自体がシートベルトと複数のエアバッグを内蔵しているため、シート位置に関係なく安全性が維持できるということです。
乗員の状況は各種センサーによって常時モニタリングされています。頭部のふらつきや視線、まぶたの開閉頻度などから判断し、たとえばドライバーが眠そうだと判断した際には、自動でアップテンポな音楽をかけて注意を促します。まさに有能なコンシェルジュですね。
自動運転により運転から解放された車内は、これまでに考えられなかった使われ方、楽しみ方を求められるに違いありません。そんな中、長きにわたって自動車の内装に取り組んできたトヨタ紡織のノウハウは、今まで以上に注目を集めることになるでしょう。
(文と写真:角田伸幸)