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■トヨタ80スープラを買うなら今! しばらく値段は下がりそうにない
●映画の影響&アメリカへの輸出で人気は高値安定
トヨタを代表するスポーツモデルがスープラです。日本では1970年代から1980年代半ばまでセリカXXの名前が与えられましたが、3代目となるA70系は1986年に発売され、セリカと完全に決別したグランドツアラー的スポーツクーペになり、日本でもスープラと呼ばれるようになりました。後期モデルではエンジンやサスペンションを手直ししてスポーツ性能を向上させたほか、グループAレース用のホモロゲーションモデルも登場しました。
この流れに乗って1993年に発売された4代目のA80系は、設計段階からピュアスポーツカーとして開発されました。3リッター直列6気筒DOHCの2JZ-GE型と同ターボの2JZ-GTE型エンジンを搭載して、国際基準の動力性能を獲得していました。
この80スープラが生産を終了したのは2002年のこと。それから17年が経ち、ようやく後継モデルの5代目、DB型が今年発売されました。A80系は世界的なスポーツカー人気の低迷を受けて生産終了したのですが、なぜ今、スープラが復活したのでしょう。それは長く続いたスポーツカー冬の時代の反動で、国際的に日本のスポーツカーへの注目度が上がったからです。
2015年頃、日本メーカーのスポーツカーの中古車相場が激変しました。トヨタ2000GTに1億円が付き、初代スカイラインGT-Rは1000万円を超える相場になったのです。これは好景気が続くアメリカで投機対象になったことが原因です。古いフェラーリなどのスーパースポーツカーだけでなく、日本のスポーツカーにも注目が集まったのです。
そのきっかけは、R32スカイラインGT-Rでした。国内専売車でアメリカでは登録できなかったのですが、生産から25年が経ったモデルであれば、アメリカで新車販売されていなかったスカイラインでも登録ができるのです。
この「25年縛り」に気づいたアメリカの業者たちが、日本で安くなっていたR32GT-Rを大量に買い付けて、アメリカに輸出しました。これがジャパニーズスポーツカーの人気に火をつけたのです。
そしてもう1つ、映画の影響も見逃せません。『ワイルド・スピード』というアメリカ映画が2001年に公開されました。ロサンゼルスを舞台に、激しくチューニングした日本車に乗る青年たちの物語を描いた映画ですが、劇中に登場したのは80スープラやFD3SマツダRX-7、S14日産240SXなど。この映画を見て劇中車に憧れる人が続出した結果、スカイラインGT-Rだけでなく80スープラの人気も急上昇。中古車価格が暴騰することになるのです。
(『ワイルド・スピード』に登場した80スープラ。BOMWX製エアロなどが装着されていた)
しかし、アメリカでは新車当時からスープラが販売されていました。それなのに、なぜ日本の中古車相場が上がったのでしょうか。それは、熱心なアメリカの日本車ファンは、アメリカにはない右ハンドルの本国仕様を欲しがるからです。
80スープラが発売されたのは1993年。25年後の2018年になると、初期型80スープラの相場が暴騰しました。アメリカへ並行輸入しても登録可能になったからです。特に3リッターターボのRZはバイヤー同士で取り合いになった結果、なんと500万円を超える個体まで出てくるようになりました。こんな動きを予想して、トヨタは2019年になって、新型スープラを発売したのかもしれません!?
●新型が発売されても80スープラの中古相場は変わらない!?
前置きが長くなりましたが、中古車価格が急上昇している80スープラの相場は、新型が発売されたことでどう動いたのでしょうか?
80スープラに関しては国内有数の在庫数を誇る、千葉県市川市にある「キングバイヤー」さんに直接お邪魔して、最近の80スープラ情勢を聞いてきました。結論から言えば、「新型発売と80スープラの相場は関係ない」とのことです。
キングバイヤーの店長である刈谷康史さんは、開口一番「これからさらに中古車相場は上がると思われます」と話し始めました。普通は、新型が発売されると旧型の中古車相場は下落するものです。ところが、新型が発売された後も80スープラの相場は変わらないか、むしろ上がっているというのです。
どうしてこうなったのかと言えば、刈谷さん曰く「80じゃないとダメ、というお客さんが多いんです。映画に出ていたスープラというだけでなく、チューニングすることで簡単に500psくらいまでパワーアップできる素性も魅力のようです」とのこと。新型が出たとしても自分が欲しいスープラは80だ、と考える人が日本にもアメリカにも大勢いるのでしょう。また、新型はチューニングの素材には向いていないと考えられていることもあるようです。
そしてもう1つ、気になる情報があります。80スープラは1996年にマイナーチェンジして中期型になります。この時からNAエンジンのSZも、ターボのRZと同じゲトラグ6速MTを採用。さらに全車にABSとデュアルエアバッグが標準になるなど、装備の充実化が図られました。今後は、この中期型の相場が上がる可能性が高いというのです。
現在は、国内の中古車市場では、年式による価格の差は大きくありません。それは、アメリカの人気に引きずられて初期型相場が上昇しているためです。しかし、2021年になると、中期型が発売された1996年から25年が経つので、中期型の平行輸入車がアメリカで登録可能になります。これを見越して、80スープラの中期型を買い集めている輸出業者もいるようなのです。そうした様々な状況を踏まえると、新型が発売された後も、80スープラの人気はしばらく続くように思えます。
現在の80スープラのオーナーさんの傾向についても聞いてみました。
チューニングしてドリフトしたり、サーキット走行を楽しんだりする方が多いのかと思っていたのですが、そうではありませんでした。確かにサーキット走行を楽しむ人もいますが、それは昔から80スープラを所有されているオーナーさんで、最近になって乗り始めた方は、「旧車だから壊してしまってはもったいない」と思っていて、ほぼ9割以上が街乗り専用なのだそうです。
かといって、フルノーマルがベストというわけでもないようです。80スープラには数多くのエアロパーツがリリースされていましたが、それらを装着したカスタム車の人気も根強く、カスタムしてある中古車にも買い手はつきます。昔憧れたスタイルで乗りたい、と考える人が多いようです。
(レーシングドライバー、織戸学選手が手がけたチューニング仕様の80スープラ)
●狙い目はゲトラグ6速MT付きの中期SZ-R
相場としては、ターボのATモデルで300万円前後から、ターボの6速MTだと400万円弱で推移しています。これがNAエンジンになると一気に下がり、ATでもMTでも100万円代後半から探すことができます。
スープラの雰囲気を楽しみたいようでしたら、前期のSZやSZ-Rが手頃です。中期のSZ-Rならトランスミッションはゲトラグ6速MTなので、刈谷店長もオススメでした。
20年以上が経過した中古スポーツカーですので、購入時にはいくつか注意点があります。エンジンはオイル漏れを起こしている場合があります。また、クランクプーリーが突如脱落することもあるそうです。これは事前に予防する意味で、タイミングベルトの交換時にいっしょに交換するのがいいそうです。
内装では、電動スライドするシートがきちんと動くか確認しましょう。白いビスが外れてモーターが動かなくなる症状が多い、とのことです。
また、前期型ではダッシュボード中央にあるオーディオ周辺のパネルがボロボロになっていることもあります。材質の問題なのですが、中期以降は改善されているので、前期型を選ぶ場合はチェックしておきましょう。
スポーツカーですので、修復歴のある車両も少なくありません。足周りよりも中央寄り、つまりAピラーからCピラーまでのキャビン部に衝撃が加わり変形しているものがあるそうです。このような車両でも、見た目は普通に感じるほど修理されている場合があります。できることなら、修復歴のないクルマを選びたいものです。
キングバイヤーさんでは大きな修復歴がある車両は販売しないそうですが、一般的な販売店には出回っている可能性があります。
80スープラの在庫数では国内有数の規模となるキングバイヤーさん。とはいえ、さすがに80スープラの流通量は減る一方です。キングバイヤーさんですらトヨタ86の在庫が増えつつあり、80スープラは少なくなってきたそうです。
店長の刈谷康史さんによれば、中古車相場は下がることはなく上がり続けるだろうとの見込みです。しかしながら、ハコスカGT-Rやトヨタ2000GTと同様に、「いずれ高止まりする可能性はあるでしょう」とのことでした。
いずれにせよ、80スープラにもし今後乗りたいと思っているのでしたら、早めに実現しておいた方がいいかもしれません。
●キングバイヤーさんで見つけたUSED 80スープラPICK UP!
(現在キングバイヤーさんで最も高い販売価格のクルマは、この1996年式RZです。走行距離は16万キロを超えていますが、RIDOX&トップシークレットのエアロパーツを纏い、タービンを変更してエンジンをチューニングしてあります。車検整備付きで419万円です)
(エアロのほかにアルミホイールも変更されています。履いているのはレイズ製のグラムライツで18インチになっています。車高調サスペンションでローダウンしてあり、迫力のルックスです)
(サーキットが似合いそうなGTウイングはトップシークレット製です。軽量なカーボンを採用する強度の高いパーツです)
(2JZ-GTEエンジンは3リッターの排気量から280psを発生しましたが、このクルマではタービンをHKS製T88-33Dに変更して大幅にパワーアップしてあります)
(室内には追加メーターが並びチューニングカーらしい風情になっています。16万キロ走行しているとは思えないほどキレイな状態です)
(純正のレカロシートが残されています。運転席に若干シワがあるものの、しっかりサポートしてくれます)
●まだまだありますUSED 80スープラ
(NAモデルの1995年式SZ-Rはエンジンに戸田レーシングのハイコンプピストンやハイカムが組まれ、6連スロットルまで装備してあります。ローダウンしてエアロパーツを装備した状態で224.6万円です)
(こちらは1996年式SZ-Rで走行距離が10.6万キロ。中期のゲトラグ6速MT採用モデルで、マフラーを変更してビルシュタイン製車高調を装備して224.5万円です)
(こちらも1996年式SZ-Rのゲトラグ6速MTなのですが走行距離が18.6万キロのため車検が令和元年12月まであっても170.6万円です。VeilSideのフルエアロを装着しています)
(2000年式の後期RZ-SはMTモード付きATなので、300.2万円とお買い得かもしれません。希少なフルノーマル車でルーフバイザーまで装備してます)
(最終型になる2002年式のSZです。走行距離が6.1万キロでBOMEXのエアロパーツとWedsSport製18インチホイールを装着しています。エンジンはノーマルです)
●取材協力:キングバイヤー 千葉県市川市新井2-21-6 TEL047-359-3333
※このページで紹介している中古車は、取材時点での情報です。
(写真・文/増田 満)
【関連リンク】
キングバイヤー
http://www.king-buyer.co.jp