カムリの昨年一年間の世界販売割合を紐解いてみると、トップは北米の52%で過半数、次いで中国22%、中近東11%、アジア・豪州・ロシアと続きます。ちなみに日本シェアは1%にも満たないあり様・・・。
というのも、北米でのカムリは大衆車的なポジションです。日本のように「大型車=高級車」感覚の国で、北米カムリを大型高級セダンとして売ろうとした所に無理がありました。またおそらく日本と同じ感覚の他国でも、似たような傾向があったのでしょう。
そこで今回のカムリは「世界の顧客ニーズにきめ細かく応える」べく、2種類のモデルを造り分けてきました。
ひとつは「北米モデル」で、従来路線の「合理性」を踏襲したモデルです。
そしてもうひとつは様々な国のニーズに応えるべく、「高級感」を全面に押し出した「グローバルモデル」です。日本はこちらに含まれます。
開発陣も、これまで北米カムリで我慢していた憂さを晴らすべく?!日本流の高級感や気配りを徹底的に織り込んできたのでしょう。新型カムリ(グローバルモデル)には、従来のような間延び感を感じません。見事にサイズ以上の高級感を、達成できていると思います。
更に日本仕様においては、ガソリン車を廃止してハイブリッド一本に絞り込みました。「高級感+超低燃費」という新しい価値を訴求するためで、これは今一番のニーズかもしれませんね。
そして燃費では、ヴィッツと同燃費の26.5km/lを達成しました。それには、①クールドEGRを採用したアトキンソンサイクルの新エンジン開発と、②バッテリーユニット冷却と電子制御改善によるEV走行の拡大、③車体の軽量化の3点が効果的だったそうです。
中でも軽量化では、先代ハイブリッド車を100kg軽くした「ダイエットモデル」を作って試走したところ、誰もが「こんなに良いクルマになっちゃうの?」と実感したそうです。こうなると「先代比100kg減」が目標となる訳で、達成には悪戦苦闘の連続だったとの事。低燃費達成は、本当に総力戦なのですね。
開発ストーリーを読んで、開発責任者岡根さんから「日本のニーズを満たせば、必ずグローバルモデルとして通用する!」という信念を強く感じました。「広さ、上質感、低燃費。プレステージセダンとして妥協はない!」という岡根さんの思想が、新型カムリそのものだと実感した次第です。
ただ苦言をひとつ。プリウスαでもそうだったのですが、ディーラーの展示車さえ充分に供給できない生産体制なのに、販売を開始するのはいかがなものかと思います。多くの顧客が実車を見ずに予約を入れる販売方法は、決して健全ではありません。震災影響や減税期間など制約があるかもしれませんが、販売部門の早急な「カイゼン」を求めたいと思います。