ディーゼルの気持ちよさに感動【マツダ・アテンザ(プロトタイプ)試乗】

11月後半に発売が決定、昨日10月5日より正式受注を開始したマツダ・アテンザのプロトタイプに試乗することができました。

プロトタイプと言えど、その完成度は発売を目前に控え、ほとんど市販車と変わりないレベルにあると思えます。

そのステージとなったのはTOYO 箱根ターンパイク。発売前の新型車に乗ってもらいたい、できればテストコースという本来は普通走ることのない道でなく公道で。しかし、発売前の車両にナンバーを取得するのは難しい。そこで、私有地であるターンパイクを貸し切り、クローズドにしてステージを用意してくれたわけです。

余談ですが、以前はこのターンパイクと言えば新型車を試す定番コースでした。ところが、自動車の評価がパワーや操縦性が重視された時代から、環境性能や使い勝手なども重視されるようになり、そのステージは山道から街へと降りてきています(その他の理由もあるとは思われますが)。

そこへきて新型アテンザ・プロトタイプの試乗をターンパイクをわざわざ貸し切ってやるというからにはアテンザに対するマツダの自信が見て取れます。

とくに、今回のアテンザで話題になりそうなディーゼルのパワー/トルクをこの急勾配で「どうぞお試し下さい」と言うからには、相当な余裕があるとみて、まずはディーゼル・マニュアルのステーションワゴンのハンドルを握ります。

エンジン音はどんな音がするのでしょう。ドキドキしながらスタートスイッチを押します。「シーン」。静かというより音がしません。そうです。マニュアルだったのでクラッチを踏んでいないとエンジンがかからないのでした。

気を取り直してエンジンスタート。その時のSKYACTIV-Dディーゼルエンジン音はコチラ。

 

クラッチを踏まずにスタートスイッチを押したのがバレますね。

ちなみにガソリンはコチラ。

 

ディーゼルのは比べるとやはり多少ガラガラというような音が聞こえていますが、これは窓を開けている状態。

窓を閉めているとたぶん耳を澄まして意識して聞いていないとディーゼルだと気付かないでしょう。

いや、ディーゼルの音がどんなものかよく知っているという人以外には「フツウのエンジン音」に聞こえるんじゃないでしょうか。

そんな軽やかなエンジン音とともにギヤを1速に入れてクラッチを繋ぎます。最近乗ったマニュアルといえば86やBRZですが、あの水平対向エンジンはちょっと油断するとスタートでエンストしがちになりますが、このディーゼルはあまり意識せずにクラッチを繋いでもスイッと走り出してくれます。

で、タイヤが2回転ぐらいするくらいで、もはやエンジンの音がどんな感じかはわからなくなります。

それは加速感も手伝ってる気がします。

CX-5のディーゼルですごく感心して、ぜひマニュアルで乗ってみたいと願っていたとおりの感動です。

タコメーターを見ていなきゃならないディーゼルって初めて乗った気がします。

レッドゾーンは5000rpmから始まるんですが、ま、回転数はあまり関係ないですね。

しっかりエンジンが回ってパワーもついてくる感じが心地よいです。

ターンパイクのかなりの急勾配でもシフトダウンしてグングン上ってくれます。

というより、シフトダウンして回転を上げて走りたくなる、そんなディーゼルがあったんですね。いや、まだ発売されてないか。

その気持ちのよいエンジンに、ハンドリングもかなり気持ちよくできています。さすが、SKYACTIV-シャシー。

ハンドルを切ると、スッとノーズが向きを変えてくれる気持ちよさです。

この最初にいただいてしまった本日のメインディッシュと言えるディーゼルのマニュアルには、今回セダンボディが組み合わされています。

で、この後に、ディーゼルにATの組み合わせのワゴンボディにも試乗しました。

走りはMTが気持ちよく走れるんですが、ATとの組み合わせもCX-5同様にいい感じです。

そのワゴンボディのほうが個人的には気に入りました。

実はワゴンはセダンよりショートホイールベースなんですが、クイックには感じませんでした。セダンのほうが鼻先が向きを変えやすいように思えます。ワゴンのほうがしっとり向きを変える、けれど、それがスゴく自然で好みでした。

こういった部分はもしかすると、プロトタイプから販売モデルになると少し印象が変わったものになるかもしれません。

さて、ガソリンのほうは、こちらもSKYACTIVのガソリンエンジン。2.0リッターと2.5リッターが用意されます。基本的には同じような特性で、低速から高速まで自然に回り、気持ちよいエンジンです。

ターンパイクのような山道では、上りで2.5リッターのほうが余裕があるのは感じられます。ただ、それがとても大きな違いかと言えば、それほどでもないかなとも言えます。

もしかすると、高速道路を巡行する時、追い越しする時など、その余裕の部分が運転の楽さにつながり、長距離ドライブで疲れない走りができるかもしれません。場合によっては燃費も良くなることもある可能性もあります。

話題の減速エネルギー回生システムi-ELOOPは、メーターパネルの表示によってキャパシタに貯められた電気エネルギーの量がわかります。が、それ以外はとくに意識することはなく、加速中はオルタネータ(発電機)を休ませているハズなので理論上は加速が良くなるんでしょうけど、感じるほどではありません。

エネルギー効率を上げてくれています。このように、個人的な意見ではどれを選んでもOKなアテンザ。ご覧の通り、デザインもセダン/ワゴンともに流麗でまとまり感があり、破綻がない。

ボディタイプ、エンジンとも、使い道、好き嫌い、ご予算にあわせてどれを選んでも大丈夫と言えそうです。個人的にはディーゼルのマニュアルと言いたいですが、XD(クロスディー)と呼ばれるディーゼルのベーシックグレード(290万円)にのみ用意され、マニュアルはプラス12万6000円の302万6000円となります。ATの出来映えもいいだけに、わざわざ10万円以上も追加するとなると、現実に購入するのは躊躇してしまうかな。

けれど、今度のアテンザはマツダのフラッグシップであり、プレミアム感も漂っています。他車やアテンザ内の他グレードなどと比較対象を考えずに選ばれてもいいかもしれません。それくらい「いいモノ感」は感じられます。CX-5といい、今度のアテンザといい、マツダのクルマ作りとその仕上がりは一貫した走らせて楽しめる、移動の道具として優れているものが感じられ、好印象でした。

 (小林和久)

 

 

 

 

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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