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■「ガソリンの補助金の継続」より「税金見直し」を求める声が3倍
高騰が止まらないガソリン価格。資源エネルギー庁の発表によれば、2023年8月21日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は183.7円/Lと、14週連続で値上がりを続けているだけでなく、15年ぶりの高値となっています。
これは、主に円安による原油高の高騰と、政府の補助金が2023年6月から段階的に縮小されていることが要因だといわれており、しかも補助金は今のところ9月末で終了する予定となっています。
こうした状況に関し、政府は、ガソリン価格上昇を抑制する補助金制度の継続も検討しており(2023年8月23日現在)、8月中には対策案がまとまる方針だといいます。
そんな中、多くのドライバーは、ガソリン価格の高騰に対し、どんな対策を望んでいるのでしょうか?
「gogo.gs」が車を利用するユーザーなど1774名に行ったアンケート調査(実施期間2023年6月30日〜7月10日)によれば、全体の61%が「ガソリンにかかる税金の見直し」を求めると回答。「ガソリンの補助金の継続」と回答した22%を大きく上回る結果となったそうです。
そして、「税金の見直し」を求めるユーザーのなかには、「二重課税」や「トリガー条項凍結」など、ガソリン税に関わる問題点を指摘する人も多かったのだとか。
では、そうした問題は、いったいどんなもので、なぜ問題視されているのでしょうか? ここでは、そもそもガソリンにはどのような税金がかかっているのかも含め、さまざまな問題点についておさらいしみます。
●「税金見直し」を求める理由は?
まずは、アンケート結果を紹介しましょう。「ガソリン価格高騰の対策として求めることはありますか?」という質問に対する回答結果は以下の通りです。
1位:「ガソリンにかかる税金の見直し」 61%
2位:「ガソリンの補助金の継続」 22%
3位:「自動車にかかる税金の見直し」 13%
4位:「特に対策は求めない」 2%
5位:「そのほか」 2%
1位と2位で全体の83%を占めることから、ガソリンの税金または補助金に関わる対策を望む声が圧倒多数であることが分かります。
なかでも、1位となった「ガソリンにかかる税金の見直し」が61%と半数以上を占めることで、補助金よりもガソリン税を見直して欲しいという声の方が多いことが分かります。
ちなみに、「ガソリンにかかる税金の見直し」を選んだ人のなかには、以下のような「二重課税」に関するコメントが多かったそうです。
・ガソリン税を含めた総額に消費税がかけられているから。(harry318jp さん)
・税金に税金をかける二重課税は絶対にやめてほしい。(tk23yama さん)
・ガソリン税の上に消費税と、税金の二重取りをされている。(ayatriangle さん)
・長らく問題にされている二重課税問題を何とかしてほしい。(QZT さん)
また、現在実施されている暫定税率(25.1円/L)に反対する声や、その課税の停止に関連する「トリガー条項」の発動を求める声も一定数あったようです。
・そもそも暫定税率を延長しまくっていること自体が問題。(kuro1997 さん)
・トリガー条項凍結を解除すればいい。(hemy3665 さん)
・いつまでも暫定税率をガソリンに掛けるな。(godzilla.19 さん)
・特定財源が一般化され、道路整備ではない事に使われている。本来の形にするべき!(ken.tanaka6601 さん)
●ガソリン税にはどんなものがある?
このように、ガソリン価格高騰には、税金の見直しを求める声が多いようですが、そもそもガソリン税とはどんなもので「二重課税」や「トリガー条項」とはどんなものなんでしょうか?
まずは、ガソリン税ですが、これは正確にいえば「揮発油税」(国税)と「地方揮発油税」(地方税)があります。
現在、それぞれの税率は、揮発油税が48.6円/L、地方揮発油税が5.2円/Lで、合計53.8円/Lとなっています。
ただし、これらには道路財源の不足を理由として設定された特例税率、いわゆる暫定税率が含まれており、本来であれば揮発油税は24.3円/L、地方揮発油税が4.4円/Lで合計28.7円/L。元々の税率よりも25.1円/L高くなっています。
この暫定税率は、一時的に課税されるという意味のもので、目的を達成すれば廃止されるもので、実際、2010年に一旦は廃止されています。ところが、すぐに同額分の特例税率が創設され現在も続いています。しかも、当初の使用目的は道路財源だったのが、今では一般財源に充てられていることで、これを問題視する声が多くなっているのです。
先述したユーザーのコメント「そもそも暫定税率を延長しまくっていること自体が問題」という意見は、まさにこういったことを示しているといえます。
なお、ガソリンに課せられている税金には、ほかにも石油石炭税と環境税(石油石炭税に上乗せ)の合計2.8円/Lもり、これらを合計すると56.6円/Lが課税されていることになります。
●ガソリン税の二重課税とは?
さらに、ガソリン価格には、これらの税に加え、消費税もかかっています。しかも、ガソリンの場合、消費税はガソリン税や石油石炭税も含めた価格に課税。そして、この課税方式が「ガソリン税に消費税を課す二重課税」だと問題視されているのです。
そのため、「ガソリン価格は約半分が税金だ」と指摘する声も多いようです。
たとえば、ガソリン価格(本体価格+ガソリン税+石油石炭税)が150円/Lだとしても、実際にユーザーが支払う金額は、消費税込みで165円/Lとなります。
このうち、特例税率下のガソリン税と環境税が上乗せされた石油石炭税が合わせて56.6円/L、消費税が15円/Lなので、全ての税額は71.1円/L。ガソリン小売り価格165円/Lのうち、43%以上を税金が占めることになっているのです。
●税金が25.1円/L安くなるトリガー条約
次は、トリガー条項について。先述したユーザーのコメントには「トリガー条項凍結を解除すればいい」という意見もありましたよね。
このトリガー条項とは、2010年度の税制改正で導入された制度で、レギュラーガソリンの全国平均価格が「3ヵ月連続で160円/L」を超えた場合に、先に紹介した「暫定税率分の25.1円/Lを課税しない」というもの。
国民生活に大きな影響があるガソリン価格が一定基準以上になった場合に、拳銃などのトリガー(引き金)を引く、つまり「税金を引き下げる」ことで、価格の安定を図ることが目的です。
資源エネルギー庁のデータによれば、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2021年10月4日時点で160円/Lになって以来、ずっと160円/L以上を続けています。そのため、本来であればこの制度が発動され、前述した2023年8月21日現在の183.7円/Lという価格は、25.1円/L安い158.6円/Lとなっているはずです。
ところが、今のところ、このトリガー条項は凍結された状態となっています。理由は、2011年に発生した東日本大震災の復興財源を確保するため。そのため、レギュラーガソリンの全国平均価格が180円台となっても、依然として「税金額はそのまま」の状態が続いているのです。
●「補助金継続」派は税金の見直しに慎重
このように、ガソリン価格に占める税金の割合がかなり高いことが、「税金の見直し」を支持する声が多い理由だといえます。でも、一方で、今回の調査では「ガソリンの補助金の継続」を支持する人も2位と一定数いました。
そして、そうした人のなかには、以下のような意見があったようです。
・急激に価格が上がると対応が難しいので、緩やかな価格変動になるように補助金等で調整してほしい。(3kyoudai さん)
・ガソリンにかかる税金を減らすと他の税金が増額される可能性が高い。補助金の継続の方が日常生活にかなり負担が減少できると思います。(f0978 さん)
・ガソリン価格は補助金の減額により上がっているから。(本当はガソリンに係る税金見直しを求めるが、たぶん無理なので)(kuwabara さん)
・一時的な値上がりならば補助金等で補填して欲しいが、長期的な問題であればガソリン税の見直し・消費税の二重課税問題など、より国民に寄り添った政策をお願いしたい。(somme0412 さん)
これらのなかで、ちょっと注目したいのが「ガソリンにかかる税金を減らすと他の税金が増額される可能性が高い」というコメント。ガソリン税による税収が減ると、結果的に政府は、そのほかの税金を上げるのではないか?といった意見です。
たしかに、国が一定の税収を確保するには、もし継続的にガソリン税を減らす場合、なにか他の財源を増やす、つまりガソリン税以外の税金を増やす可能性は否めません。
一方、ガソリンの補助金も税金から出てはいますが、一定の金額を超えないと出ないようになっています。たとえば、現在の燃料油価格激変緩和補助金では170円/Lを超えると発動されるようになっていますが、ガソリン価格が落ち着いて、170円/Lを下回れば補助金は出なくなる=税金も使わずに済むことになります。
つまり、価格が高騰するなど国民が必要な時にだけ出す補助金の方が、結果的に「ほかの税金を上げることになりにくいのでは?」というのが上で紹介した意見だといえます。
ともあれ、ガソリン価格の高騰が今後どれくらい続くのかや、政府がそれに対しどんな対策を行うのかなど、今後の動向に注目したいところですね。
(文:平塚直樹) *写真はすべてイメージです