新型スバル「インプレッサ」は、スポーティなエクステリアと上質な走り、実用性の高さが光る

■SUBARU新型クロストレックと新型インプレッサのエクステリアデザインの違い、狙いとは?

スバルのエントリーモデルである新型インプレッサが2023年4月20日(木)に正式発表されました。新型になり、インプレッサスポーツからインプレッサに車名が変更されています。新型インプレッサのコンセプトは、「ユーティリティ・スポーティカー」。スポーティであり、使い勝手も高いという狙いが込められています。

新型インプレッサのエクステリア
新型インプレッサのエクステリア

スポーティかつ上質な走りとエクステリアを備えつつ、高い実用性、使い勝手の良さも両立しています。正常進化といえるフルモデルチェンジといっていいでしょう。

同じプラットフォームを使うXVがクロストレックに車名を変えたように、クロストレック(旧XV)とインプレッサ(旧インプレッサスポーツ)を明確に差別化する狙いが込められています。分かりやすい車名にして各モデルの個性を立たせることで、カニバル(食い合う)ことを防ぎ、各モデルの支持をそれぞれ広げる戦略。

新型インプレッサのフロントマスク
新型インプレッサのフロントマスク

一方で、「インプレッサ=スポーティ」という印象を付加したいのであれば、インプレッサスポーツのままであっても良かったように思えます。過去のインプレッサスポーツでは、「私のクルマではない」、「スポーツ」の割にその度合いがもの足らない、逆にそれほど「スポーツ」を求めていない、といった声もあったようです。

新型インプレッサのエクステリアは、クロストレックと同様に攻めたデザインになっています。クロストレックと同様にデザインをまとめたデザイン部主査の井上恭嗣氏に伺うと、インプレッサのオーナー像は、ロングドライブやアウトドアなどにも使うなど、「想像よりも行動的」という結果が出たそうです。

伸びやかなフォルムが目を惹く新型インプレッサ
伸びやかなフォルムが目を惹く新型インプレッサ

先述したように、筆者の目には攻めたエクステリアに映ったわけですが、「むやみに速そう」という狙いではなく、ユーザーの行動に沿うデザインが与えられたそう。また、一般論と前置きしながらも、多くのSUBARUユーザーがいるアメリカでは、おとなしい顔つきは好まれないとのこと。そういう意味では、新型インプレッサはアメリカでも好みと捉えてくれる人が多そうです。ただし、市場からこうした声が求められた結果に基づくフロントマスクではないとのこと。

新型インプレッサのリヤビュー
新型インプレッサのリヤビュー

そうなると、クロストレックもインプレッサの狙い所が被ってきます。前者を指名する人は、SUVやクロスオーバー系が好き、後者はベーシックでスポーティな仕様が好きという、単に好みの違いになってきます。もちろん、クロスオーバーは、最低地上高が異なり、ルーフレールが備わるなど、機能面での差はあります。

ワイド感を強調している
ワイド感を強調している

デザインの悩みどころはそこだったそうです。インプレッサは、昔からの定番モデルということもあり、その時代のライバルよりも「しっかりした」ような雰囲気があり、新型も「しっかりした」ムードを重視。全体の印象としては、高くて分厚く見えるクロストレックよりも、乗用車らしさが追求されています。分かりやすく表現すると、インプレッサは、「伸びやかさ」も重視。「しっかり感があり、伸びやかなフォルム」に映ることが狙いのようです。

フォグランプまわりの造形にもこだわったという
フォグランプまわりの造形にもこだわったという

なお、新型クロストレックと新型インプレッサは、「金属とガラスは共通」で、見事に差別化されています。異なるのは、グリルと前後バンパーで、その中で伸びやかさを強調。クロストレックよりもグリルを薄くし(クロストレックとサイズが異なり、薄くなっている)、グリルの下を伸びやかに、横方向に意識させるため、フォグランプとフォグランプの間が凹んだ造形で1本でつながっています。リヤもディフレクターの間を1本でつなぐことで、ワイド感を演出。

リヤバンパーのリフレクター
リヤバンパーのリフレクター

また、フォグランプの上半分を暗く、下半分を明るくすることで、穴が空いているように(穴が空いているわけではない)見せることで、前後に長く見えるようにされています。

一方のインテリアは、クロストレックと同様で、先進的なイメージを印象づけつつ、スマホのワイヤレス接続なども含めたインフォテイメントシステムの進化により、使い勝手の向上が盛り込まれています。

●スポーティで上質な走り、腰が据わった安定感の高さも印象的

こうしたエクステリアデザインを差別化しつつ、新型インプレッサは、スポーティな走りも魅力。クローズドコースで新旧を走らせる機会がありました。

新型インプレッサの走り
新型インプレッサの走り

クロストレックと同様に最大の美点は、静粛性の高さと乗り心地の良さにあります。構造用接着剤の使用範囲の拡大(延長)などのプラットフォームの「SUBARU GLOBAL PLATFORM」の進化、サスペンション取付部の剛性向上、ルーフに高減衰マチックを採用し、フロントシートの刷新なども利いていて、新型はより安定感がある走りを披露してくれます。新旧では、同じ速度域でコーナーやスラロームに侵入しても、新型の方が腰が低く、安定した挙動なのも印象的。

安定感のあるコーナーワークが印象的
安定感のあるコーナーワークが印象的

特設コース内に凹凸が設けられた場所では、サスペンションやルーフ、フロントシートの減衰の差が明らかで、短時間で減衰。こうした、音・振動面やフロントシートの進化は、ロングドライブになるほど効果を実感できるはずで、行動範囲が広いユーザーが多いインプレッサにとっても欠かせない訴求ポイントになるはず。

また、AWDとFWDでは、前者の方がスタビリティの高さを感じさせる一方で、後者は軽快感があり、街乗り中心であれば十分に満足できる走りが得られそうです。

●新型インプレッサの装備、グレードの違いをチェック

そのほか、安全面では、ステレオカメラに単眼カメラが加わった新型「アイサイト」をはじめ、ヘッドライト内蔵コーナーランプ、マルチビューモニター、ドラバー異常時対応システム(ツーリングアシスト作動時)への対応など、SUBARUが重視する安心、安全もさらに高まっています。

旧型と乗り比べると静粛性や乗り心地、ハンドリングなど全方位で進化しているのが分かる
旧型と新型を乗り比べると静粛性や乗り心地、ハンドリングなど全方位で進化しているのが分かる

グレード構成は、2.0Lを積む純ガソリンエンジンの「ST」、2.0Lエンジン+モーターの「e-BOXER」である「ST-G」、「ST-H」を設定。組み合わされるトランスミッションは、全車CVTのリニアトロニックになります。また、タイヤサイズは、「ST」が205/50R17、「ST-G」と「ST-H」が215/50R17。

エクステリアや機能装備の違いは、「ST」と「ST-G」がLEDハイ&ロービームランプが標準で、「ST-H」はフルLEDハイ&ロービームランプ(ステアリング連動ヘッドランプ+コーナリングランプ)が標準(ST-Gにメーカーオプション)になります。全車に標準の電動格納式リモコンカラードドアミラーは、「ST-H」にリバース連動機能、ドアミラーメモリー&オート格納機能が標準装備(「ST-G」はメーカーオプション)。

新型インプレッサの走行シーン
新型インプレッサの走行シーン

内装では、フルオートエアコンとパドルシフトが全車標準で、「ST-G」と「ST-H」が本革巻きステアリング(シルバーステッチ)付になり、キーレスアクセス&プッシュスタートは、ハイブリッド車(e-POWER)に標準(「ST」はオプション設定)になります。センターディスプレイは、「ST」が7インチ、ハイブリッド車は11.6インチが標準(STにメーカーオプション設定)で、ナビ機能は全車オプション。コネクティッドサービス(SUBARU STARLINK)は、「ST」がオプション設定、ハイブリッド車は標準になります。

新型インプレッサのインパネ
新型インプレッサのインパネ

シート表皮は、「ST」と「ST-G」がトリコット(シルバーステッチ付)で、「ST-H」がジャージ(シルバーステッチ付)になります。なお、ハイブリッド車には、ブラック/グレーの本革シート(シルバーステッチ付)がオプションで用意されています。「ST-H」には、運転席10ウェイ&助手席8ウェイパワーシートが標準化されています。

純ガソリンエンジン車の美点は、大型サブトランクを備えていることで、収納力を重視するのであれば考慮したいところ。

新型インプレッサのラゲッジスペース
新型インプレッサのラゲッジスペース

「アイサイト」では、ハイブリッド車に「ECOクルーズコントロール」が備わり、ACCで高速道路を巡航する際に省燃費運転が可能です。後側方警戒支援システム、エマージェンシーレーンキープアシストの「運転支援テクノロジー」はハイブリッド車にのみ標準になりますので、高速走行時などの安全性を重視するのであれば、ハイブリッド車を選択したいところ。

また、デジタルマルチビューモニター、前側方警戒アシストからなる「視界拡張テクノロジー」は、「ST-H」に標準で、それ以外はオプション設定になっています。

ステレオカメラと広範囲を見る単眼カメラ。なお、カメラの検知としては連動していないという
ステレオカメラと広範囲を見る単眼カメラ。なお、カメラの検知としては連動していないという

●価格
「ST」:229万9000円(FWD)、251万9000円(AWD)
「ST-G」:278万3000円(FWD)、303万3000円(AWD)
「ST-H」:299万2000円(FWD)、321万2000円(AWD)

(文:塚田 勝弘/写真:SUBARU)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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