07年当時「トヨタとスバルの開発陣が、レガシィをベースに水平対向エンジンをフロントミッドに搭載したFR試作車を作って、乗り回している!」と雑誌で読んで直感しました。これは凄いことになるゾと!「レガシィの低重心」と「BMWのバランス」と「ロードスターの軽快さ」を併せ持つ唯一無二のFRが登場するゾと! しかもレガシィベースならFRが200万で作れるゾと!
08年、あのリーマンショックを乗り越えて、日常でも普通に使える生粋のスポーツカーを出してくれた訳ですから、クルマ好きとして本当にうれしい限りです。
共同開発においては、「独自独創の技術で生き抜いてきたスバル」と「販売台数世界トップクラスのトヨタ」では、文化も考え方もまるで違ったそうです。その上で3万点もの部品が有機的に組合わさったクルマを共同開発するのですから大変!両社とも、使っているワードの意味合いから設計・生産の基準や方法、判断根拠もまちまちだったとのこと。
最初は、お互いの「クルマ造りのバイブル」をつきあわせて、基準を作り直すところからはじめたそうです。なるほど「BRZ&86」の開発責任者は、商品企画本部副本部長職の増田さんでないと務まらない理由がよくわかりました。
両社の役割分担は「トヨタが企画とデザイン」&「スバルが開発と生産」と、最初から決まっていたそうです。ちなみに「水平対向+FRの言い出しっぺはどちら?」かについては、トヨタは自分が企画を持ちかけたと言うし、スバルは技術検討を行っていたと言ってもよくわかりませんでした。その真相は、開発ストーリーに記されていました。
スバル社内でさまざまな提案を検討し、また実際にさまざまな提案を実施したというが、その中に「水平対向エンジンを使ったFR2駆の超低重心スポーツカー」という、スバルのエンジニアなら一度は夢見る「理想の超高運動性パッケージ・スポーツカー」のアイデアもあったようだ。まさにその時期、トヨタ自動車からも「水平対向エンジン・低重心スポーツ」のパッケージ提案をしてほしいという打診があった。
そういう意味では、まさに相思相愛だったのですね。
ただスバルが独自に技術検討を行いながらも商品化できなかったのは、やはり販売台数の確保が難しかったからでしょう。200万円前後のスポーツカーを作るためには、グローバル販売10万台/年という大変なハードルをクリアしなければなりません。
でもあらためて増田さんのコメントを読んでみてください。スバルBRZとトヨタ86連合が、日本だけでなく世界中のクルマ好きから満面の笑顔で迎えられる姿が眼に浮かんでくるようです。
「このクルマはボディも着座位置も重心高も低いです。2ℓ200㎰のNAエンジンですから、スポーティに走ろうとすれば、おのずとアクセルを50%以上踏み込んで走るという走り方になります。地面近くに低く座って、低い目線で世界観の変わるドライブを楽しんでもらいたい。アクセルを踏み込みながらコントロールする。そういう奥行きの深い『これぞポーツカー』という楽しさを、いまの若い方々にもぜひ体感していただきたいと思います」。