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■業界団体「JEMPA」に聞いた公道走行の必須条件
街中や観光地などの手軽な移動手段として注目されている「電動キックボード」。
電動モーター付きだから、足でキックしなくてもスイスイと楽に走れるし、ひどい渋滞時などには電源を切り乗らずに押せば歩道も通れます。オシャレなスタイルのモデルも多く、ネット通販などではリーズナブルな価格の製品も購入できるなどで、若者を中心に人気急上昇中です。
ところが、最近は、交通ルールやマナーを守らない人が増え、社会問題にもなっています。道路を逆走したり、歩道を走行したり、スピードを出しながら歩行者の橫ギリギリを抜けていくなど、かなり危険な行為も目に付きます。
ついに5月には、大阪で電動キックボードに乗る男性が、ぶつかった女性に重傷を負わせたまま逃走し逮捕されるという、「ひき逃げ事件」まで起きているのです。
ちゃんとルールを守って走れば便利な乗り物なのに、これでは「危ない乗り物」として街を走れなくなります。また、歩行者に迷惑をかけるだけでなく、クルマと同じ道路を走る際には、ちゃんと法規や交通ルールを守らないとクルマに衝突され重大事故につながる危険性すらあります。
そこで、ここでは電動キックボードで公道走行する際に注意すべきポイントを、業界団体のJEMPA(日本電動モビリティ推進協会)に聞いてみたので紹介します。
●ナンバープレートやヘッドランプなどは必須
JEMPAは、乗用の小型電動モビリティを開発したり、販売・運用する事業者による次世代に向けた電動モビリティの在り方を提言する協議会です。メンバーには、電動キックボードなどの製造メーカーなどが参加しています。
まず、電動キックボードで公道走行をする際に、法律上はどんな扱いになるのでしょう。JEMPAによると、道路交通法や道路運送車両法上では「原動機付自転車」に該当するといいます。つまり、原付バイクと同じ扱いなのです。
そこで、まず、公道走行をする際に、必要な車体の装備にはどんなものがあるのか聞いてみました。具体的には、「道路運送車両法の保安基準」に定められている規定を守る必要があるそうですが、外観上の判断としては、主に以下のようなものが挙げられるそうです。
・ミラー
・警報機
・ヘッドランプ
・テールランプ・ブレーキ灯
・前後ブレーキ(2系統以上の制動装置)
・スピードメーター
・ウインカー
・ナンバープレート取り付け版
・ナンバープレート照明灯
・リフレクター(後部反射板)
これらの中で、ミラーはハンドルの左右どちらかに装着していればOKですが、原付バイクと同様に道路の左端を走るのであれば、ハンドル右側に付ける方が後方確認はしやすいでしょうね。
JEMPAによると、ほかにも警報機の音の大きさやミラーの大きさなど、法律上はさらに細かい決まりがあるそうです。実際に公道走行する際は、自分が購入したモデルが法規を守った装備を付けているのかは、購入したショップなどに相談することをおすすめします。
なお、電動キックボードは原付バイクと同じ扱いなので、ナンバープレートを付けることは必須ですし、自賠責保険にも加入して保険証を携帯しなければなりません。また、軽自動車税の納付も必要です。原付バイクを所有し乗ったことがある人なら、常識的なことですね。
●免許の携帯やヘルメット着用は義務
次に、公道走行する場合に守るべき交通ルールについても聞きました。
電動キックボードは、前述の通り、原付バイク扱いですから、主に以下のようなことを遵守する必要があります。
・原動機付自転車を運転できる免許を携帯(原付免許・2輪免許・普通免許)
・車道を走行すること
・逆走や歩道走行は禁止
・最高速度30km/h(30km/h以下の速度制限がある道路では制限速度を遵守)
・片側2車線以上の交差点では2段階右折
・2人乗り禁止
・ヘルメット着用義務
・押して歩く場合は電源を切る
・電源を切っていても歩道ではデッキに乗ってはいけない
よく、電動キックボードはノーヘルでもOKだと誤解している人もいるようですが、ヘルメットは必須です。また、2人乗りや歩道の走行、逆走などは違反です。
モデルによっては最高速度が30km/h以上出る車体もありますが、制限速度がない一般道の場合は電動キックボードは30km/h以下で走らなければ速度違反になります。また、当然ですが、高速道路は走行できません。
●ヘルメットなしでも走れる場合とは?
ちなみに、電動キックボードでもヘルメットの着用が任意で公道走行できる場合はあります。それは、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」により、経済産業省から認可を受けた事業者が行っているシェアリングサービスなどを利用する場合です。
これは、東京や大阪、福岡などの特定地区で行われているもので、電動キックボードなどの小型電動モビリティを都市の新しい移動手段として活用できるかどうかの実証実験です。
実験では、自転車のシェアリングサービスのように電動キックボードをレンタルし、都市の移動手段として使うサービスなどが行われており、2021年10月までの予定で進められています。
こういった実証実験で使われている電動キックボードは特例措置が適用されることで、道路交通法上の扱いが「小型特殊自動車」となり、最高速度が15km/hまでとなる一方、ヘルメットの着用が任意化されています。
つまり、速度を出さない変わりに、ヘルメット着用は任意でもいい…となっているということですね。
注意したいのは、この特例措置は実証実験にのみ適用されるということです。なので、たとえば実証実験を行っているエリアで、自分が購入した電動キックボード、つまり認可を受けた事業者が扱う車両以外の電動キックボードを個人や団体が持ち込んで走行する場合には、やはり「原動機付自転車」扱いになります。
ヘルメットはもちろん、2人乗り禁止や車道を走るなど、前述した装備や交通ルールを守る必要があり、違反すると警察に捕まる可能性がありますので、念のため。
なお、実証実験を行っている事業者は、今年2021年6月まではEXx、mobby ride、Luup、長谷川工業の4社でしたが、7月12日からは、JEMPAに加盟するSWALLOWも福島県南相馬市で実証実験を開始する予定です。
●ナンバープレートは自分でも取れる
このように、電動キックボードは、基本的には原付バイクと同じ法規や交通ルールが適用されます。なお、公道走行に必要なナンバープレートや自賠責保険の加入は、自分でも取得が可能です。
以下にJEMPAから聞いた方法を紹介しておきましょう。
【ナンバープレートの取得方法】
1. 申請に必要なもの
・販売証明書
・印鑑
・身分証
・保安部品の写真(一部自治体で必要な場合あり)
2. 申請手続き
居住する(住民票がある)自治体の市民税課で、軽自動車税申告(報告)書兼標識交付申請書(原動機付自転車・小型特殊自動車)」に必要事項を記入し提出
【自賠責保険の加入方法】
1. 申請に必要なもの
・ナンバープレート番号(標識交付証明書に記載)
・車台番号(標識交付証明書に記載)
・標識交付証明書(セブンイレブンで加入できる保険など、保険会社や内容により不要な場合あり)
2. 加入窓口
郵便局(一部取扱いのない局もある)から手続ができるほか、一部の保険会社(組合)では、インターネットやコンビニでも手続が可能
いかがでしたか? せっかくの快適で便利、楽しい電動キックボードですから、公道走行する場合は、くれぐれもルールやマナーを守り、安全に走りましょう。
(文:平塚 直樹)
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【関連リンク】
JEMPA(日本電動モビリティ推進協会)公式ホームページ
https://jempa.org/