電動キックボードの自転車レーン「特例」走行を実証実験も利用者の「便利さ」見通せず

●原付バイク扱いなのに時速20km/hまで

電動キックボードを自転車専用レーンで走行可能にする実証実験が今秋からスタートします。事業計画の認定をうけた事業者が提供する電動キックボードに限り、計画地域の中にある自転車専用レーンの走行が可能になります。警察庁はパブリックコメントで、その是非について意見を求めています。

シェアリングできる電動キックボード
今回の特例は、事業用か個人所有かで、自転車専用レーンを通行できるか否かを分ける珍しい特例だ。(撮影=中島みなみ)

自転車専用レーンが走行できる電動キックボードは原動機付自転車、いわゆる原付バイクに分類される車両です。公道を走る要件として、ウインカーなどの保安部品を装備し、自賠責保険への加入も義務付けられます。運転には原付免許を所持し、ヘルメットの装着が必要です。

最近、都市部で増えている自転車専用レーンは、道路と歩道の間の1メートル前後を自転車を優先して走らせる区間のこと。路面が水色にペイントされ「専用」という文字が記載されています。正式名称は自転車専用通行帯で、通行帯に面した車庫などに入る場合を除いて自転車以外の車両は走行できません。

今回のパブリックコメントは、この通行帯に電動キックボードを走らせることを可能にするものですが、その方法がかなり複雑です。

自転車レーンを走ることができるのは、あくまでシェアリング事業者が貸し出す電動キックボードだけです。市販されている電動キックボードが原付扱いであればナンバープレートを取得して、公道を走ることができます。

写真はイメージです

しかし、個人が所有して車両は通行できません。個人所有の電動キックボードは、今まで通り自転車専用レーンの外側(右側)車線を走るしかないのです。

なぜなら今回は特例措置の制定手続きに沿って、事業者が電動キックボードを使ったシェアリング(貸出)ビジネスを行う新事業活動の計画を警察に提出。その計画で示された範囲内でしか、自転車専用レーンの走行はできないからです。

特例措置では、貸し出される電動キックボードは速度20km/hまで出せない構造でなければなりません。原動機付自転車の法定速度は30km/h。自転車専用レーンを走るから20km/hというのであれば、わかりやすいルールなのですが、今回の措置はあくまで事業者のための特例。新たに電動キックボードが自転車専用レーンを走る場合の規制緩和に踏み込んだわけではないのです。

シェアリング事業者が20km/hまでしか出せない構造の車両を使うという建前だから、道路交通法の変更はありません。

特例措置では自転車専用レーンを走ることのできる電動キックボードの大きさを、次のように定めます。
・車格:長さ140cm、幅80cm、高さ140cm以下
・車重:40kg以下
・原動機は電動
・乗車姿勢が立席であること

シェアリングできる電動キックボード
国外ではほとんどが自転車扱いだが、モーターで動く電動キックボードは国内では原付扱いになる(撮影=中島みなみ)

●シェアリング事業者の強い要望

車両が道路のどの部分を走るのかを定めているのは道路交通法で、その車両の定義は道路運送車両法が決めています。しかし今回、自転車専用レーンの走行を可能にしたのは、そのどちらの法律でもありません。2013年に制定された「産業競争力強化法」です。

この法律は日本の競争力を強めるため、経済産業省が中心となって関係省庁にルール変更を働きかける法律です。その特例が今回のルール変更ということになります。

電動キックボードは、都心での短距離の移動や観光地の散策でレンタサイクルのような移動手段として、MaaSのラストワンマイルを担うアイテムとして期待されています。認定を申請する事業者は電動キックボードに通信機能を搭載し、どこでも乗り降り自由な環境を作ることで、新たなシェアリング事業の展開を目指しています。

この強化法で生まれる新しい道路の使い方には、多くの乗り越えなければならない課題があると言われています。最も大きな問題は誰でも使えるはずの道路を特定事業者の営利目的のために使わせることに、道路利用者の理解が得られるのかということです。

特例の要件に当てはまる車両や走り方だったとしても、個人が所有する電動キックボードで自転車専用レーンを走った場合は、通行帯違反で5万円以下の罰金が科される可能性があります。一方、事業者が用意した電動キックボードなら、法律上は原付バイクなので、一般道ならどこでも走ることができます。ただし、20km/h以下で車道を走るわけです。

「時速20km/hしか出すことのできない原動機付自転車が自転車専用通行帯を走ることと、電動キックボードが自転車専用通行帯を走ることは、まったく別の話」と、警察庁関係者は話しますが、これを免許教育を受けていない自転車利用者を含めた国民全体が理解しなければなりません。

シェアリング事業者には、貸し出す電動キックボードの走行速度などについて記録を作成すること。キックボードで事故があった場合は国家公安委員会へ報告することなどが義務付けられていますが、そうした各論より、これを機会に、新しい乗り物に対応した道路の使い方はどうあるべきかを議論する必要がありそうです。

(文・写真 中島みなみ)

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