軽自動車初のFF+ターボ+6MT、ホンダN-ONE RSのトランスミッションはチューニングに課題があるかも【週刊クルマのミライ】

■トランスミッションケースはN-VANと、変速ギアセットはS660とほぼ共通といえる仕様

N-ONE_RS_turboengine
N-ONEが搭載するターボエンジンはDOHCヘッドを持つ「S07B」型。最高出力47kW/6000rpm、最大トルク104Nm/2600rpm

ホンダの軽自動車「N-ONE」がフルモデルチェンジしました。ホンダの礎を築いたともいえる軽自動車「N360」を思わせるタイムレス・デザインのボディは従来モデルのパネルを流用しつつ、ブラッシュアップしたものですが、中身は軽自動車ナンバーワンモデルであるN-BOXとほぼ同じといえる新旧の良さをミックスしたモデルです。

そんな新型N-ONEのトピックスのひとつが、軽自動車初の「FF+ターボ+6MT」というパワートレインを採用していること。

もともとはホンダのミッドシップ軽スポーツである「S660」用に開発された6速MTと、N-BOXで定評あるロングストロークのトルクフルなターボエンジンを組み合わせているといえます。そして「FF+NAエンジン+6MT」という組み合わせについては、ホンダの軽商用バン「N-VAN」に採用実績があります。S660はミッドシップですが、エンジン横置きのため基本的にFFと共用可能なのです。

では、N-ONEの採用している6速MTはN-VANとS660のどちらに近いのでしょうか。開発エンジニアの方に伺ってみたところ、どちらに似ているとも言いづらい、両方の良さを受け継いだトランスミッションだということです。具体的には、トランスミッションケースについては搭載要件がほぼ同じN-VANと共通点が多く、一方でギアセットについてはS660に近いといいます。

Honda_N-ONE_RS
新型N-ONE RSに採用された6速マニュアルトランスミッション。変速比はリバース以外はS660と同じスペックだ

実際、変速比を見てみると、N-ONEとS660はリバースギアを除いてファイナルギアの変速比まで含めて同じ数値をなっています。ちなみにN-ONE RSの変速比は次の通り。リバースギア比はN-VANと同じ変速比です。

1st:3.571
2nd:2.227
3rd:1.529
4th:1.150
5th:0.869
6th:0.686
Rev:4.454
Final:4.875

N-VANはNAエンジンで最大350kgの積載性能を実現するため、6.307というかなり低いファイナルギアを与えられているのですが、その対応として変速比幅は広めとなっています。N-ONE RSはスポーツカー的なキャラクターを求められますから、変速比がタイトなS660と共通にするのがベストということでしょう。

さらに件のエンジニア氏は「タイヤサイズの違いから、N-ONEのほうが加速は鋭く感じるでしょう」というほどですから、期待が高まります。

Honda_N-ONE_RS
FFのターボエンジン車で、6速MTを組み合わせたのは軽自動車として初めてというN-ONE RS。メーカー希望小売価は199万9800円

では、ホンダ軽自動車の6速MT搭載車として最新モデルであるN-ONEがもっとも高いポテンシャルを持っているかといえば、そこにはひとつだけ気になる部分があります。それは「N-VANと同じトランスミッションケースを使っている関係からデファレンシャルが小さめになっている」という点です。

ホンダのエンジニア氏はチューニングについては明るくないということで断言はしませんでしたが、アフターマーケットで販売されているS660用LSDがそのまま流用できるかどうかには疑問符が付くといいます。

そうしたチューニングの可能性については、今後多くのチューナーやパーツメーカーの尽力によって課題はクリアされていくと思われますが、デフ容量が小さいとなれば、そこはチューニングを進めていく上で、ウィークポイントのひとつになる可能性があるわけで、N-ONEをゴリゴリにイジっていこうというオーナーの方(それほどいないとは思いますが)であれば、N-ONEとS660のトランスミッションケースの違いというのは、気になる部分となるかもしれません。

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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