急速充電時間10〜15分! 次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズを2026年北米に投入、日本でも発売へ

■薄くて軽い次世代のプラットフォームを開発

ホンダは、アメリカのラスベガスで開催されている「CES 2024」において、2026年にグローバル市場に投入される予定の新型EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズを発表しました。

同時に、コンセプトモデルである「SALOON(サルーン)」「SPACE-HUB(スペース ハブ)」、そして次世代EV向けの新「Hマーク」も初めてお披露目されています。

「CES 2024」で発表された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ
「CES 2024」で発表された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ

ここではまず、新型EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズについてご紹介します。

ホンダは、2050年に同社が関わるすべての製品、企業活動も含めて、カーボンニュートラル化を掲げています。車では2040年までにEV、FCEV販売比率を世界で100%とする目標を掲げ、電動化を推進しています。

世界初公開された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ
世界初公開された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ

「Honda 0」シリーズはこうした電動化方針のもと、同社がこれから大きく変わることを象徴するモデル。ホンダが車づくりで大切にしてきた理念である「M・M思想」も大切にされています。

「M・M思想」とは、マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想のことで、人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、車のスペース効率を高めようとする車づくりの基本的な考え方です。

さらに、ホンダらしい操る喜び、自由な移動の喜びをさらなる高みへと進化させることも掲げています。第1弾となるモデルを2026年より北米市場を皮切りに、日本、アジア、欧州、アフリカ・中東、南米など、世界各地域に投入するとしています。

●2020年代後半には、AD(自動運転システム)に対応

次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズのインテリアイメージ
次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズのインテリアイメージ

「Honda 0」シリーズでは、「これからの時代にHondaが創りたいEVとは何か」を原点から見つめ直し開発。長い航続距離を確保するためのバッテリー搭載量の増加、電池を搭載するためプラットフォームの大型化などによる、「厚くて重いEV」という制約から解放し、新たなEVの価値を創造することを目指すとしています。

ホンダでは、新たなEV開発アプローチを「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」と表現しています。

「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」を個別にチェックすると…

  • 「Thin(薄い)」は、フロア高を抑えた薄いEV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなどデザインの可能性を拡張するとともに、高い空力性能を実現。
  • 「Light(軽い)」により、原点に立ち返って生み出した独自技術で、これまでのEVの定説を覆す軽快な走りと電費性能に寄与します。
  • 「Wise(賢い)」は、これまで培ってきた知見と知能化技術の進化により、車そのものが賢くなるホンダ独自のソフトウェアデファインドモビリティを実現していきます。

この開発アプローチのもと、専用に開発されたアーキテクチャーを軸として「共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン」「安全・安心のAD/ADAS」「IoT・コネクテッドによる新たな空間価値」「人車一体の操る喜び」「高い電費性能」という5つの価値がもたらされます。

●急速充電時間(15%~80%)を10~15分程度に短縮

ワールドプレミアされた次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ
ワールドプレミアされた次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ

1つめの「共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン」は、デザインコンセプトの「The Art of Resonance(ジ アート オブ レゾナンス)」のもと、「環境、社会、ユーザーとの共鳴」をテーマに、見る者の共鳴を呼び起こし、暮らしの可能性を拡げるサステナブルなモビリティを掲げています。

2つめの「安全・安心のAD/ADAS」は、世界初の自動運転レベル3を実現したレジェンドの知見が活かされます。2021年に自動運転レベル3である条件付自動運転車(限定領域)に適合する先進技術を有する「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」が搭載されたレジェンドをリースで100台発売し、自動運転レベル3を実用化しました。

「Honda 0」シリーズでは、「Honda SENSING Elite」の技術を活用したADAS(先進運転支援システム)の採用に加え、2020年代後半には、AD(自動運転システム)を採用し、手の届く自動運転車として展開する構えです。

自動運転システムは、「人間中心」という哲学のもと培った同社の安全思想をベースに、AI、センシング、認識判断、ドライバーモニターといった知能化技術の進化により、人の感性に近い、自然で高精度な危険予測を目指し、安全で安心な自動運転の実現を目標としています。

最新のADAS/AOにより、高速道路における自動運転領域が拡大されるとともに、現在、高速道路のみで使用可能なハンズオフ機能を、一般道でも一部利用可能とすることを目指し開発が推進されています。

「IoT・コネクテッドによる新たな空間価値」では、ホンダ独自のビークルOSを軸とするIoT・コネクテッド技術により、「運転して楽しい、使って楽しい、繋がって楽しい」という価値の提供を目指しています。

AIやビッグデータの活用により、音楽などのユーザーの好みや運転中の行動傾向を車が学習し、さまざまな提案がされます。さらに、下車後から目的地までのラストワンマイルも、車が周辺情報や経路を教えてくれるなど、ユーザーの気持ちを理解するかのような価値を提案。使えば、使うほど車とユーザーが親密になり、生活の多様なシーンにおいて「繋がる楽しさ」も享受できます。

「CES 2024」で披露された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ
「CES 2024」で披露された次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズ

「人車一体の操る喜び」では、同社独自の電動化技術とダイナミクス技術により、軽快で、心身ともに車と⼀体になる⾼揚感を得られる次世代の操る喜びを目指しています。「Honda 0」シリーズの低全高のスタイルに、モータースポーツで鍛え上げた空力技術が惜しみなく投入され、空力性能、ダイナミクス性能、デザインを高次元で融合させます。

そして、EVで欠かせない「高い電費性能」では、ハイブリッド車の開発などで得られた電動化技術をベースに、エネルギー効率を突き詰め、高い電費性能を追求。

具体的には、電気変換効率やパッケージングに優れた「e-Axle(イーアクスル)」、軽量で高密度なバッテリーパック、高い空力性能により、バッテリー搭載量を最小限にしながら十分な航続距離が追求されています。

Honda 0シリーズ コンセプトモデルとして「SALOON」「SPACE-HUB」を公開
Honda 0シリーズ コンセプトモデルとして「SALOON」「SPACE-HUB」を公開

また、EVの普及で課題となる充電時間やバッテリー劣化などの不安に対しても、ストレスフリーな充電性能、長年使用しても性能劣化が少ない安心のバッテリー性能を目指すとしています。

20年代後半に投入される「Honda 0」シリーズモデルでは、15%~80%の急速充電時間を10~15分程度に短縮するとともに、100万台を超えるリチウムイオン電池搭載車の膨大な走行データをベースに培ったバッテリーシステム制御技術により、使用開始から10年後のバッテリー劣化率を10%以下とすることで、バッテリー劣化への不安を払拭する構えです。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
続きを見る
閉じる