目次
■REエンジンは嫌いだけど、シリーズとしてのロータリーなら大歓迎!
●ACCの使い勝手はあともう一歩か?
REファン待望のロータリーエンジンが、RX-8以来、約11年ぶりに復活、マツダのSUV「MX-30」に搭載されました。
でも「発電のためだけね」という、その1ローター・シリーズハイブリッドのパフォーマンスはどうなのか? 国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが初体験してきました。
クリッカーでは2023年11月28日に、清水さんのYouTubeチャンネル「StartYourEnginesX」の生配信「頑固一徹学校」で語られた、『世界でマツダだけ。誰もやらない「ロータリーEV」のすべてを清水和夫が語る!「アウディとピエヒとヴァンケルとマツダ」の秘密の関係って?』を公開。
「オレはロータリーが嫌い!」と前置きしたうえで、「でも発電に使うのには興味シンシン♪」と語っていました。
さて、MX-30 Rotary-EVに初試乗した清水さんはどう評価したのでしょうか? さっそく見てみましょう!
●「エンジンの出力」「モーターの出力」「バッテリーの電気を出す出力」、この黄金比があるのかな
さて、今回のMX-30のロータリーシリーズハイブリット。ロータリーエンジンが生まれ変わりましたね。見た目も違う! これ本当にロータリーなの?って感じですね。どんな走りなのか? 結構、楽しみです。
マツダの最終秘密兵器!? MX30ロータリーEV。
元々ロータリーエンジンって、一定回転で回してるとコンパクトで効率がいいのかなと思う。だからシリーズに特化してエンジンを新しく設計すると、結構軽量化とかできているような話です。
元々、私は個人的にあんまりロータリーエンジン好きじゃなかったんだけど、このシリーズだったら意外に好きになれるかもしれない…という期待を持って、試乗したいと思います。
エンジンは発電機に徹しているので、モーターを介して電気を作ってバッテリーに電力を入れる。で、そのバッテリーから持ち出された電力でモーターで駆動する。モーターは確か125kWくらいです。
エンジンはシングルローターで60kW以下かな、57kWとか。だから、エンジンの出力とモーターの出力が約1対2くらいの感じになっている。エンジンの出力とモーターの出力とバッテリーの電気を出す出力、その辺にシリーズハイブリッドの”黄金比”があるような気がする。そこは経験が長い日産が、いろんなものを経験的に持ってるかなと思いますね。
最近、ホンダもシリーズハイブリッドのe:HEVを出しました。ただホンダは、高速へ行けば直接エンジンがタイヤを回すようなシステムも持ってるので、高速燃費はホンダの方がいいと思います。
でも今、ココを走ってきた感じでは、タイヤのロードノイズ以外はいい。これだけ静かになるんだから、もうちょっとタイヤのロードノイズも抑えてもいいのかな。
このMX-30、ドア2枚なんだけど、後ろが観音開き。こういうボディパッケージもユニークさがありますね。
この辺がコルク。マツダって元々、コルク産業で創業したので、こういったところにマツダの思い入れがある。でも、デザイン的にちょっと…合わないな。
●高速走行でのこの静かさは、 まるでEV感覚!!
走りは静か。EVだな、これは。今はノーマルモードで走ってます。
さぁ、鬼の首都高、路面のつなぎ目のハーシュはどうでしょうか?
お! イイな♪ 最近乗ったマツダ車の中じゃ1番まともかも。ハーシュ、いいですね。
首都高速の路面のつなぎ目が、かなり自動車のハーシュネスを厳しくしてますけど、今回、合格! 非常にしなやかに、タイヤの当たりがしなやかです。
さっきロードノイズうるさい!って言ったけど、ソレ、撤回!! 荒れた路面でも、ロードノイズ的にはそんなには気にならない。…でも、まぁ多少あるか。
エンジンが静かだっていうのはいいですね。ウン、魅力的。でもね、価格が400万円オーバーなんだよな~。
おぉ~いいね、加速も。お!イイじゃん!! ドライビングポジションもいいし、視界もいい。
普通のMAZDA3とかのSUVに載せてあげたいね、このパワートレーン。これをたくさん作って、少しでも安くなればな。
バッテリーが17kWhくらい、そこまでいるのかな?っていう気もするけど。EV航続距離が100km超えると、国によってはクレジットがもらえるので、ソコ頑張ってもうちょっとバッテリー少なくして電比を良くする、みたいな方向で技術革新っていうのはひとつありますね。
●ACCよ、もうちょっと車間詰めてもいいんじゃない?
今、ADAS使ってます。車間距離開けすぎかな。お! 今LKASでステアリングが動いてます。この辺のLKASは悪くない。でも、ACCはもうちょっと、半車身分くらい車間詰めもいいかな。設定で1番距離短いとこにしてるんだけど。
シリーズハイブリッドのEVで走っているので、モーターの応答性がいいから結構、追従性はいい。LKASもこのくらいのカーブだと…おぉ~行く行く行く行く!
ADASシステムって、チューニングする人が「法規/安全性/使い勝手」っていう3つの苦しみの中でもがいてると思うんだけど。
いや~本当に静かでトルキーでいいな。EVだな、コレ。
結構、気に入りましたね、乗り心地もいいし。これ手に入れたら、『和ちゃんスペシャルチューニング』で、もっともっとこの車よくできそうな感じがしています。
ロータリーエンジン、結構頑張るね。けどちょっと50数kWじゃ足りないのかなぁ? 80km/hくらいまではスタビリティ、乗り心地いいんだけど、それ以上になるともう少しスタビリティを上げたいかなと思います。
でも、最近のマツダ車の中じゃすごく完成度が高い!
昔のロータリーを知ってる人が乗ると、アレ? これ本当にREエンジン??って感じになるくらい、ロータリーエンジンのキャラクターは変わっています。一定回転でシリーズでもあるので、昔みたいな高回転までパーン!って回っていくようなエンジンではない。
だから、日産とかホンダのシリーズ系のハイブリッドよりも、コッチの方がエンジンの存在感がないのでも、本当にEVなんだなって感じです。
●プラグインじゃなければ、もうちょっと車両価格、安くなるんじゃない?
エンジンをかけてみたいと思います。チャージモードにすると…。
おぉ~! 今、ロータリーエンジン回ってんだけど、昔のロータリーとは全くキャラが違います。日産のシリーズハイブリッドよりも、コッチの方がEV風味が多く感じられます。
ということで、これは非常にいい車かなと思います。
ただ、値段が400万円台の真ん中ぐらい。そうすると、プリウスのプラグインハイブリッドも450万円くらいで同じような価格帯になるのかな。そうするとプリウスは結構パフォーマンス高いんですよ。エンジンは2Lの高速燃焼だし、モーターの出力も大きいので、走ったらプリウスの方がパフォーマンスは高い。そうすると、MX-30ロータリーEV最大のライバルはプリウスになっちゃうのかな?
コレ、何もプラグインにしなくてもいいんじゃないかな?と思う。ロータリーシリーズハイブリッドにしておけば、バッテリーは17kWhもいらないので。少なくともコストは100万円くらい下がりそう。まあ「PHEV」と「PHEVじゃない」バージョンの2つあってもいいような気がします。
●ロータリーEVは充電の紛らわしさのないEV風、ありありだな!
知る人ぞ知るマツダのロータリーエンジンなんだけど、元々これ、ヨーロッパのNSUという会社のナントカ・ヴァンケルさん(※フェリクス・ヴァンケルさんです!)という人が考案したエンジン。なので、日本ではロータリーエンジンだけど、ヨーロッパでは“ヴァンケルエンジン”と言ってます。マツダがそのパテントを買い取って量産にこぎつけた。確かコスモロータリーから始まり、その後はカペラやRX-7に搭載された。
当時のロータリーエンジンは、筑波サーキットとかいろんなところで散々走りました。ポワ~ンっていったまま、なかなかエンジン回転が戻ってこないとか。ロータリーのおむすびの重量が重いのでイナーシャがあって、ロータリエンジンは応答性みたいなところが個人的にあんまり好きじゃなかった。
でも今回はシリーズと聞いて、一定回転で回せるのであれば、逆にロータリーエンジンは最もコンパクトで効率がいいので、それはあるかなと思っていた。
実は10年くらい前に、プレマシーというミニバンで、水素ロータリーシリーズハイブリッドみたいなもののプロトタイプを広島の研究所で乗ったことがあります。当時から水素ロータリーでシリーズはあるかな?っていうことをずっと思っていた。
ロータリーエンジンは基本的には好きではなかったんだけど、シリーズを今日乗ってみて、これはやっぱりあるあるだな!と。昔のロータリーを知らない人が乗ったら、このエンジンはロータリーエンジンとは思えない。どこまででも走れるEVか?みたいな感じ。チャージモードにするとエンジンがかるんだけど、ほとんどそれは気がつかないくらいの感じ。
ということで、日産のシリーズ、ホンダのe:HEVのシリーズよりも、このマツダのロータリーハイブリッドの方が、よりEVチックになっています。ですから、充電のいらない面倒くさくないEVだと思えば、十分“あるある”ですね!
充電の要らないEV感覚で乗れるという、このマツダMX-30ロータリーEV。『せっかち和夫』にも、まさにピッタリな電動化システムということですね。ウン、一度は乗ってみたい車です。すべてのインプレッションは動画で!
(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
【SPECIFICATIONS】
車名:MAZDA MX-30 Rotary EV
全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm
ホイールベース:2655mm
トレッド(前/後):1565/1565mm
車両重量:1780kg
最小回転半径:5.3m
乗車定員:5名
エンジン型式/種類:8C-PH/水冷1ローター
総排気量:830cc
エンジン最高出力:53kW(72ps)/4500rpm
エンジン最大トルク:112Nm(11.4kgm)/4500rpm
燃料タンク容量:50L(無鉛レギュラー)
モーター型式/種類:MV/交流同期電動機
モーター最大出力:125kW(170ps)/9000rpm
モーター最大トルク:260Nm(26.5kgm)/0-4481rpm
駆動方式:前輪駆動
サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(前/後共):215/55R18
ハイブリッド燃費(WLTCモード):15.4km/L
車両本体価格(税込):4,235,000〜4,917,000円