ロータリーエンジン搭載の「MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV」は、すべての走行をモーターが担うシリーズ式プラグインハイブリッドシステム

■EV航続距離は85km、1500Wの給電機能などを備える

ついに、マツダのロータリーエンジン搭載車が約10年ぶりに復活を果たします。

「ブリュッセルモーターショー2023」で初公開された「MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV」は、2つのサプライズが用意されていました。従来から伝えられてきた、単なるレンジエクステンダー仕様ではなく、充電(給電も)できるプラグインハイブリッド仕様であり、すべての走行をモーターで駆動する100%電動駆動である、という2点です。

 MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
「MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV」のエクステリア

マツダは、2019年5月の中期経営方針で「ブランド価値向上への投資」と題し、電動化を含むパワートレインのバリエーション拡大、先進技術の拡大により、市場や顧客からの多様なニーズに対応するとしています。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
ロータリーエンジンをモチーフとしたエンブレム

マイルドハイブリッド化やMX-30 EVモデルといった形で具現化してきました。バッテリーEVをはじめ、48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドなどが例としてあげられています。

さらに、2019年11月の中長期計画では、EVの投入、マルチxEV化、プラグインハイブリッドの投入を再度アナウンス。

少し遡ると「次世代技術コミュニケーション&導入プラン(2018年秋)」の電動化の項目に、2020年以降「BATTERY EV WITH OR WITHOUT RANGE EXTENDER」という説明があり、バッテリーEV(MX-30 EVモデル)、そして、レンジエクステンダーモデル(ロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダー仕様)の投入も示唆されていました。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
e-SKYACTIV R-EVの専用ロゴ

一部の新聞報道で、ロータリーエンジンの開発中止が掲載されたことがありましたが、マツダはその後、2020年11月の中期経営計画見直しで、この先2年と前置きし、ロータリーエンジン技術を活用したマルチ電動化技術を掲載。ロータリーエンジン技術を使ったレンジエクステンダーは、スモール商品群向けとも説明しています。

そして、2022年11月の中期経営計画アップデート、および2030経営⽅針では、電動化戦略の項目に「RE MULTIPLE ELECTRIFICATION TECHNOLOGY」とあり、ロータリーエンジン技術を使ったマルチ電動化技術として明示されています。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
発電用エンジンとして復活するロータリーエンジン技術

今回の発表は、こうした流れに沿ったものであるはず。そして、2023年1月13日、ロータリーエンジンを発電機として使うプラグインハイブリッドモデル「MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV」がついに「ブリュッセルモーターショー」で初公開されたことになります。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
ラゲッジにAC1500Wコンセントを配置

先述したように、MX-30 EVモデルは、マツダ初の量産バッテリーEVとして2020年に導入。マイルドハイブリッド仕様も日本などの一部市場向けに投入されていて、マツダの電動化を主導してきたモデルです。

観音開きのフリースライドドアを採用するMX-30は、「わたしらしく生きる」をコンセプトに掲げ、上質な内外装を備えるなど、ほかのSUVとはひと味異なったライフスタイルを予感させるモデルに仕上がっています。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EVのシステムイメージ

MX-30 e-SKYACTIV R-EVは、こうしたMX-30の基本的な提供価値はそのままに、EVとしての使い方を拡張したシリーズ式プラグインハイブリッドモデルになります。

日常の幅広いシーンでEVとして使える85kmのEV(モーター)走行距離を確保し、発電によってさらなるロングドライブにも対応します。もちろん、電欠の心配もありません。さらに、走行すべてをモーターが担う電動駆動仕様になります。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
エンジン型式は8C

発電機として復活するのが、マツダが開発を中止せずに進めてきたロータリーエンジン。新たに開発された発電用ロータリーエンジン(エンジン型式:8C)は、 必要とされる出力性能をコンパクトに実現できる同エンジンの特徴が活かされています。

高出力モーター、ジェネレーターが同軸上に配置され、モータールームに搭載。このコンパクトな電動駆動ユニットと、17.8kWhのリチウムイオンバッテリー、50Lの燃料タンクを組み合わせることで、独自のシリーズ式プラグインハイブリッドシステムを構築したそう。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
ドライブモードスイッチ

充電は、普通・急速の両方に対応します。さらに、1500Wの給電機能、使用や走行シーンに合わせて選択できる「EVモード」「ノーマルモード」「チャージモード」の3つの走行モードを備えるなど、万一の際の走る電源として使用でき、アウトドアなどでも重宝しそうです。

さらに、MX-30 e-SKYACTIV R-EVには、特別仕様車の「Edition R」を設定。ブラックのボディカラー、インテリアカラーを基調として、ルーフサイドにはマツダ初の乗用車である「R360 クーペ」のルーフ色を復刻した「マローン・ルージュメタリック」をアクセントカラーとして採用。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
特別仕様車の「Edition R」

また、フロアマットやシートのヘッドレストには、ローターの形状を模したというバッジやエンボス加工などの専用デザインも施されています。

RX-8の販売終了以来、約10年ぶりに復活を果たしたロータリーエンジンを使ったレンジエクステンダー仕様は、シリーズ式プラグインハイブリッドモデルという電動化車両として初公開されたことになります。

MAZDA MX-30 e-SKYACTIV R-EV
特別仕様車の「Edition R」のインテリア

※写真は欧州仕様です。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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