本物はホンモノでも、よりマニアックなトヨタ・セリカGT-Fourの「レッキカー」【ラリーファンミーティング2023】

■オーナーズクラブからの繋がりで購入したレッキカー

2023年10月8日に、静岡県・富士スピードウェイにて開催された「Rally Fan Meeting 2023 in 富士スピードウェイ」の会場内には、多くのラリーレプリカなどが展示されていましたが、その中でも私が注目した車を紹介していきます。

今回は、ラリーカーはラリーカーでも、あまり表に出てこないホンモノの「レッキカー」を紹介します。この車は、トヨタ・セリカGT-Four ST205型のグループN仕様の「レッキカー」です!

TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様。ルーフベンチレーターが特徴
TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様。ルーフベンチレーターが特徴

「グループN」というのは、市販車ベースで改造範囲の狭いカテゴリーのマシンになります。以前のWRC(世界ラリー選手権)は「グループA・WRカー」の下位カテゴリーとして「グループN」クラスが設けられていました。

現在、全日本ラリー選手権にて活躍をしている新井敏弘選手がシリーズチャンピオンを獲得した「プロダクションカーラリー選手権」もグループNマシンで競われていた選手権で、現在の全日本ラリー選手権もグループN規定をベースに行われています。

リアウィンドウにもレッキ3号車を示すステッカー
リアウィンドウにもレッキ3号車を示すステッカー

ラリー本番前にドライバーとコ・ドライバーは必ずコースの「下見」をします。ラリーの舞台となる公道や林道などは、コ・ドライバーが読み上げる「ペースノート」がなければ走り切るのは非常に困難です。そのために「下見」をしてノートを作っていきます。

その際に使う車が「レッキカー」になります。

このマニアックな車のオーナーである「れっき@とき」さんにお話を伺いました。

TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様
TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様

この車との出会いは、セリカのオーナーズクラブを通じてとのこと。当時、黒のST205を所有していたそうです。そのオーナーズクラブの仲間から「テインのレッキカーが売りに出される」という情報が。この仲間は、元々テインと繋がりがある人とのことでした。

ここでテインについて触れていきます。TEIN(テイン)というと鮮やかな緑の足回りがまず頭に思い浮かびますよね。TEINは1985年に創業しました。その経営陣の1人に藤本吉郎というラリードライバーがいました。

彼をエースドライバーとして1987年から「テインスポーツ」というラリー活動がスタートし、全日本からWRCまで挑戦と実績を積み重ねて、藤本吉郎は、TTE(トヨタ・チームヨーロッパ)のドライバーとして日本人初のサファリラリーウィナーを飾り、その結果、テインスポーツはTTEのサテライトチームとして活動の幅を広げました。舞台は、WRCと負けず劣らずの人気を集めていたAPRC(アジア・パシフィックラリー選手権)でした。

レッキ3号車を示している
レッキ3号車を示している

このセリカは、その1997年シーズンAPRCのレッキカーとして用意されたTTE製のグループNラリーカーなのです。ボディ側面やリアウインドウに「RECCE3」というステッカーがありますが、これはレッキカー3号車を意味しています。オーナーによるとレッキカーは3台用意され、今実走できるのは、この1台だけとのことです。

そんなテインスポーツから限られたコミュニティの中で、オークションの一品としてこの車が出品されたので購入に至ったとのことです。

●基本的にオリジナル状態を維持しているが、メンテナンスに苦労している

TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様
TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様

このセリカは、「れっき@とき」さんの手元に渡ってからもその当時の状態を維持し続けています。ベースとなっているセリカはTTE製なのでヨーロッパ仕様なので左ハンドル仕様です。外観は、ルーフのベンチレーターを除けば市販車そのものです。

TTE製トヨタ・セリカGT-Four Gr.N仕様。基本的外観は市販車そのまま
基本的外観は市販車そのまま

ホイールは、ラリータイヤにDYMAG製のTTE特注ホイール。このホイールは、当然市販されているものではないのでとても貴重なものになります。

インテリアはグループNということで市販車と大きく変わりません。違いといえば、ダッシュボードに設置されているターボブーストを切り替えるスイッチ、ナビシート側のラリーコンピューターといったところでしょう。またこのナビシートの足元には、チームと連絡を取るための無線機があります。これも当時のままだそうです。

維持するに当たって苦労している点についてお聞きしたところ、年式なりの劣化や所々に装着されている専用パーツを壊さないように維持するのが気を使うとのことでした。また、この車を手にしてからは、こういったイベントなど、オーナーズミーティングなどで声をかけられることが多くなったとのこと。

トップドライバーが猛スピードでラリーステージ駆け抜けるのに必要不可欠な1台。普段、私たちが見ているラリーには滅多に出てくることのない「レッキカー」を紹介しました。こういった「変化球」とも言える1台に出会えるのはイベントならではですね。

(栗原 淳)