■足まわりを専用チューニングした4WD仕様は、オン/オフロードを問わず安定感のある走りを披露
2023年7月23日に発表された三菱自動車の決算報告において、新型デリカミニは2万台超の受注を獲得したと明らかにされています。なお、全軽自協発表の2023年7月の軽自動車販売ランキングでは、デリカミニ/eKとして12位にランクイン。前年同月比104.7%の3280台で12位となっています。今後、どれだけランキングを上げていくのか気になるところです。
三菱デリカミニも日産と三菱のジョイントベンチャーであるNMKVで企画されたのは、従来どおり。
しかし、これまでと異なるのは、4WD仕様の足まわりについて、専用チューニングが施されたことで、単なるバッジエンジニアリング(OEM)の域を超えているのが特徴であり、美点となっています。
4WDはエアボリュームのある165/60R15サイズを履き、専用ショックアブソーバーの開発により、オートキャンプなどを見据えた未舗装路での走行安定性を重視。なお、2WDは「T Premium」と「G Premium」が165/55R15、「T」と「G」が155/65R14タイヤを履いています。
低速ではありますがオートキャンプ場を走らせたところ、背の高い軽スーパーハイトワゴンにも関わらず、左右に揺すぶられる感覚が薄く、確かに安定した足まわりという印象を受けました。
使用シーンの大半になるはずのオンロードでもフラットライド感は続き、郊外路のコーナーや高速道路のカーブなどでは、多少のロールを許しながらも確かな接地感を抱かせます。オンロードでも、路面が荒れているシーンが多い郊外路でも、低速粋を中心に足がスムーズに動く印象を受けます。
一方で極低速粋では、微少な突き上げ感が多少残るものの、背の高さを抱かせない乗り味。ドライバーだけでなく、乗員にとっても酔いにくい乗り心地に仕上がっているように感じられました。
40〜50km/hくらいだと、多少、こもり音やドラミングが伝わってきます。大空間、大開口部を備える軽スーパーハイトワゴンなどの泣き所であり、実質的なマイナーチェンジでは、コスト面も含めて手当てできなかったはず。とはいえ、ラジオなどの音量を消した状態での走行時であり、耳を澄ませてのチェックでしたので、それほど気になる課題とはいえません。
なお、4WDはタイヤサイズが変わったことで、2WDよりも最低地上高が5mm高まり、160mmとなっています。キャンプ場や雪上などを走らせる分には、十分なロードクリアランスが確保されています。4WDモデルは、60%の販売シェアを占めているそうで、「デリカ」ブランドの認知度と期待の高さを伺うことができます。
この4WDは基本的には、ビスカスカップリングを使うオンデマンド式4WD。なお、同社は「前後輪間の回転速度差をわずかに設定し、駆動力を常に4輪に配分するフルタイム4WD」と表現しています。つまり、通常走行時でもリヤにわずかでもトルクが配分されています。
こうした実用車の場合、降雪地域やよほどのスキー、スノーボード派でもない限り、非降雪地域に住んでいるのであれば、イニシャルコスト、ランニングコスト(燃費)も考慮に入れつつ、実用上も2WDという選択肢で十分に満足できます。
しかし、デリカミニの4WDモデルに乗ってみると、専用タイヤとチューニングによる効果は確かにあり、4WDを指名するのが正解といえそう。
さらに、「先代」のeKクロススペースと同じように、滑りやすい路面での発進性、脱出性を高めるグリップコントロール、急な下り坂でも電子制御により、一定速でクリアでき、操舵に集中できるヒルディセントコントロールも標準化されるなど、アウトドアシーンや冬道なども安心、安全な機能が引き続き採用されているのも美点。
居住性をはじめ、シートアレンジや荷室の使い勝手などは、eKクロススペースが好評だったこともあり従来型と同様で、高めのアイポイントをはじめ、後席の320mmロングスライド、左右分割式の前倒し機能などを用意。
「T Premium」と「G Premium」は、ラゲッジボードと後席シートバックに、汚れに強く、手入れしやすい素材が使われていてアウトドア向きの仕様になっています。
実質的なマイナーチェンジでガラリと顔を変え、4WD限定とはいえ三菱自動車らしい足まわりによる乗り味を提示させて見せた開発陣の努力には頭が下がります。そういえば、兄貴分のD:5も(D:5が長男、OEM版のデリカD:2が次男、デリカミニは末弟?)ビッグマイナーチェンジで大変身を遂げています。
デリカミニも今後のモデルライフを通じて、どういった商品力維持策、あるいは向上策が盛り込まれていくのか気になります。
「東京オートサロン2023」で披露されたコールマン仕様や、SNOW SURVIVOR(スノー サバイバー)などの反響も大きいようですが、当面は多くの受注台数に応える生産に注力するはずです。
(文・写真:塚田 勝弘)