ビッグモーター事件から考える、中古車買い取り業者はなぜ増えた?街路樹の意義とは?

■買い取り業者が増えたのはディーラー下取りが安くなったから

●そもそも中古車買い取り業者はなぜ増えた?

なぜビッグモーターに代表される買い取り業者がこれだけ成長したのだろう? 当然ながら30年前だって中古車買い取り業者は存在した。

東京・環七にあるビッグモーター前には、1本の街路樹が元気に植えてある
東京・環七にあるビッグモーター前には、1本の街路樹が元気に植えてある

当時の自動車雑誌を見ると、広告も多数散見される。ただ、群雄割拠状態で基本的に小規模。そんな流れを変えたのはガリバーやラビットである。TVに代表されるメディアで派手な宣伝を行い、急成長していく。ビッグモーターもそんな一社だ。

中古車買い取り業者隆盛の理由は簡単である。ディーラー下取り価格が安いからに他ならない。

昭和の時代、クルマを乗り換える際は、ディーラー下取りがスタンダードだった。もっといえば、ディーラーの下取り価格も良かった。私も昭和の時代に、買い取り業者とディーラーを比較した記事を何度か書いたけれど、次に買うクルマの値引き+下取り査定を合計したら後者有利多し。

しかし、平成の中頃から状況に変化が出てきた。ディーラーの下取り価格+値引きの方が安くなる傾向になっていく。特に、人気車や高年式車、低走行車など、明らかに買い取り業者有利。所有しているクルマは買い取り業者で手放し、次に買う新車の値引き交渉をディーラーで行う、という流れになる。

この状況、今でも続いている。ディーラーの下取り価格、あまりに安いと思う。

この店舗、遠目で見ると街路樹が生い茂っているように見えたが、実際には1本
この店舗、遠目で見ると街路樹が生い茂っているように見えたが、実際には1本

ディーラーに聞くと、「中古車専門店は薄利多売だから」と言う。実際、買い取り価格と販売価格の差は20万円程度。片やディーラーを見ると、最低で40万円というイメージ。実際、一昔前なら40万円くらい利幅を持っていないと、十分な整備が出来なかったと思う。

されど昨今は、クルマの信頼性は大きく向上。メンテナンスフリーになってきた。簡単な整備で問題なし。

特に、5年墜ち&走行5万kmくらいまでのクルマなら、簡単なチェックしておけば壊れることなどない。利幅20万円に、整備業務や保険業務を載せていくことで、十分利益を上げられる商品になっていたワケ。逆に考えたら、ディーラーの利幅が大きすぎるまんまなんだと思う。自分のクルマを手放す際、価値が20万円違えば(輸入車なんかもっと違うケース多い)、迷わない。

さらに、新型コロナ禍や半導体不足により、自動車は慢性的な供給量不足となり、当然ながら値引きだって少なくなった。消費者からすれば、高い値を付けてくれる買い取り業者は正義です。ビッグモーター、競合他社と競り合えば高く買い取ってくれるため、これだけ短い期間で急成長した。

この構造、今後も変わらないと思う。買い取り業者を上手に使い、賢い消費者になるべきだろう。

●慣習で植え続ける「街路樹」も再考の時期

もう一つ。ビッグモーターで街路樹が問題になっている。枯らすことはもっての他ながら、このタイミングでジックリと意義を考えてみるべきだと思う。

環七店舗前は、1本の街路樹と、背の低い植木もある
環七店舗前は、1本の街路樹と、背の低い植木もある

確かにある程度の太さまでは、クルマの車線逸脱事故を防ぐ効果を持つ。そもそも街路樹って、人が歩いて移動していた時代の道路境界である。景観はともかく、自動車と歩行者の安全を考えたら、ガードレールをもってベストだと思う。

なのに、慣習で街路樹を植え続けている。小さいウチはいいけれど、広葉樹の巨木になると、秋は枯れ葉の処理で苦労するし、雪が降れば枝墜ちなど出て危険。古木は強風で折れたり倒れたりする。

はたまた、コースアウトしたクルマにとっても危険。ガードレールや電柱と同じくらいの強度を持つ街路樹なら衝撃を吸収してくれるが、巨木になったら太いコンクリートの柱と同じ。

困ったことに、国も地方自治体も予算不足で十分なメンテナンスが出来なくなっている。今後、我が国の人口は漸減していくこと間違いなし。メンテナンスに少なからぬ予算を必要とする街路樹は、見直しが必要になるだろう。

リストラを最大の危機と考える行政からすれば、メンテナンス業務の予算や人員を確保出来る街路樹は”安定財源”かもしれないが、このあたりで見直すべきだと考える。

国沢 光宏