「EV専用ハイパフォーマンスタイヤ」に求められるのは静粛性だった【週刊クルマのミライ】

■トレッドパターンは定評あるV107を踏襲する

「ADVAN Sport EV(アドバン・スポーツ・イーブイ)」を、2023年秋頃より欧州などで順次発売。発売サイズは16サイズを計画している。
「ADVAN Sport EV(アドバン・スポーツ・イーブイ)」を、2023年秋頃より欧州などで順次発売。発売サイズは16サイズを計画している

ADVAN(アドバン)のスポーツブランドで知られる横浜ゴムから、EV専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV(アドバン・スポーツ・イーブイ)」が発表されました。

見ての通り、トレッドパターンはハイパフォーマンスカー向けの標準装着タイヤや市販タイヤとしても定評がある「ADVAN Sport V107」のデザインを踏襲しています。

しかしながら、中身はプレミアムEV向けウルトラハイパフォーマンスサマータイヤとして専用設計となっているのが特徴。ハイパフォーマンスにつながるスポーツ性は当然ながら、EVに求められる「低電費」や「静粛性」といった部分において、アドバンテージを持つべく開発されたタイヤというわけです。

たとえば、「低電費」に貢献する低転がり抵抗については、自動車メーカーに納入しているOEタイヤ開発で実績のある、転がり抵抗を低めるコンパウンドを採用しているといいます。

これにより、EVの重要な性能である航続距離と、ハイパフォーマンスの料率が期待できます。また、V107のパターンを踏襲したことを考えると、ウェット性能も十分に高いレベルに仕上げられていることでしょう。

●「静粛性」を高めるポリウレタンフォーム「SILENTFOAM」に注目

「SILENTFOAM」の装着イメージ (実際には青色ではありません)。
「SILENTFOAM」の装着イメージ (実際には青色ではありません)

ご存じのように、EVはエンジンを積んでいませんから、車両由来のノイズや振動がエンジン車よりも小さくなります。そのため、タイヤ由来のノイズが気になる傾向にあるのです。

「ADVAN Sport EV」が、静粛性について考慮した設計になっているのは、そうしたEVの特性に合わせたからでしょう。

静粛性アップにおける設計上のポイントとなるのは、専用のポリウレタンフォーム「SILENTFOAM(サイレントフォーム)」をタイヤの内面に貼り付けていることです。

タイヤの内側に吸音材を配することで、路面の凹凸により発生する空洞共鳴音を低減、不快なノイズを減らすという手法は珍しいものではありませんが、ハイパフォーマンスタイヤで採用したというのは、EV時代に求められる新世代タイヤならではといえそうです。

「ADVAN Sport EV」のタイヤサイドウォールには、そうした静粛性の高さを誇示するように「SILENTFOAM」の刻印が施されています。さらに、横浜ゴムの電動車対応商品であることを示す、独自のマーク「E+(イー・プラス)」も打刻されている点も注目といえるでしょう。

●18~21インチまでの16サイズが計画されている

EV専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV」に採用したコンパウンドのイメージ。
EV専用ウルトラハイパフォーマンスサマータイヤ「ADVAN Sport EV」に採用したコンパウンドのイメージ

「ADVAN Sport EV」は、2023年秋頃より欧州などで順次発売される計画。18インチから22インチまでの16サイズを設定することがアナウンスされています。

【ADVAN Sport EV発売サイズ】
265/35R22 102Y
255/35ZR21 98W
275/35ZR21 103W
235/35ZR20 92Y
245/35ZR20 95Y
295/35ZR20 105Y
255/40R20 101W
255/40R20 101Y
245/45R20 103Y
255/45R20 105Y
275/45ZR20 110Y
235/40R19 96W
285/40R19 107Y
255/45R19 104W
255/45R19 104Y
235/45ZR18 98Y
※すべてXL(エクストラロードタイヤ)

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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