●1ランク上の快適性を実現した117系
JR西日本は7月22日から岡山・備後エリアに新型車両227系Uraraを導入します。これにより国鉄近郊形電車117系の定期運用が終了します。
117系は京阪神区間で運行している新快速用の近郊形電車として1979年に登場。1980年から営業運転を開始しました。
当時の新快速は並行する私鉄と熾烈なシェア争いをしていました。特に京都〜大阪間ではライバルとなる阪急電鉄京都本線と京阪電気鉄道本線が転換クロスシートを備えた特急を運行していました。
国鉄は阪急・京阪の特急に対抗して、近郊形電車でありながら、特急車両並みの転換クロスシートを備えた117系を導入したわけです。
当時の近郊形電車はボックスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシートが標準。急行形電車もボックスシートだったので、117系の座席がどれほどハイグレードだったかが想像つくと思います。
車体デザインも画一化された国鉄形デザインではなく、流線型のオリジナルデザインを採用。台車も近郊形標準のコイルバネではなく、特急・急行形電車に採用されていた空気バネを装備。座席も乗り心地も格上だったことから117系は国鉄形電車の中でも名車と言われました。
1982年には東海道本線名古屋地区にも117系を導入して、ライバルである名鉄に対抗しました。
1987年4月1日にJRが発足。京阪神地区の117系はJR西日本、名古屋地区の117系はJR東海が承継しました。1989年以降JR東海、JR西日本ともに後継車を続々と投入。JR東海の117系は引き続き東海道本線名古屋地区で活躍しましたが、2013年3月で引退しました。
引退後、3両が登場時の塗装に戻されて愛知県名古屋市のリニア・鉄道館で展示されました。現在は2両の展示が終了していて、クハ117-30の1両が引き続き展示されています。
一方JR西日本の117系は1999年までに京阪神地区の新快速から撤退しました。撤退した117系はJR宝塚線や岡山地区、下関地区に転用されました。
JR宝塚線に転用された117系は京都地区の湖西線・草津線や和歌山地区に再転用。和歌山地区の117系は2020年までに撤退し、京都地区の117系も2023年4月で引退しています。
引退した117系のうちクハ117-1は登場時のカラーに復元して吹田総合車両所で保存され、一般公開ツアーで展示されました。
クハ117-1の展示は7月16日のツアーが最後と発表されていて、今後の去就が注目されています。京都鉄道博物館での展示に期待したいところです。
1992年に岡山地区に転用された117系は専用カラーに塗装されて快速「サンライナー」に投入されました。
岡山地区の117系は2010〜2016年に濃黄色に塗装を変更。また、2015年に下関地区から117系が再転用されています。 定期運用終了が近い岡山地区の117系は以下の時刻で運行しています。
【下り列車】
岡山5時55分→福山6時55分(平日のみ)
岡山16時25分→糸崎17時53分
播州赤穂21時27分→岡山22時42分
【上り列車】
福山7時7分→岡山8時13分(平日のみ)
糸崎18時15分→岡山19時49分
岡山20時8分→播州赤穂21時19分
●117系は観光特急として存続
近郊形電車としての117系は7月21日で終焉を迎えますが、観光特急「WEST EXPRESS 銀河」に改造された117系7000番代が存在するので、形式としては消滅しません。
「WEST EXPRESS 銀河」は時期によって山陽・山陰・紀南の各エリアを運行。また、昼行特急または夜行特急として運行することを考慮して、多種多様な座席を設定しまします。
特急並みの水準で名車と評された117系。最後の生き残りは名実ともに特急車両として活躍していくことになりましたが、これも117系らしいと言えるかもしれません。
(ぬまっち)