新世代プジョー「408」はスタイリングや乗り味も刷新され快適に。ピュアエンジンやPHEVとラインアップも充実【プジョー408とは?】

■プジョー400番台の歴史/従来の400番台シリーズとは異なるモデル

1934年に登場した401
1934年に登場した401

プジョーの400番台は、1934年に登場した401に始まります。その後、402、403と順当に番号を増やし407までは、それぞれフルモデルチェンジモデルとして扱われています。

2010年に408となったその後、408は2014年にフルモデルチェンジし2代目に、今回のフルモデルチェンジで3代目となります。

2014年に登場した、先代モデルとなる408
2014年に登場した、先代モデルとなる408

しかし、今回の408については、従来モデルのフルモデルチェンジではないとステランティスの担当者は語りました。従来は、基本のボディタイプがセダンであったのに対し、今回のモデルは5ドアのファストバックスタイルであることも理由のひとつだといいます。

とはいえ、従来の408と併売されるわけではないので、やはり後継であることには変わりはありません。ただし、従来の400番台とはずいぶん異なる性格が与えられたモデルであることは確かです。

●プジョー408の基本概要 パッケージング/基本プラットフォームは先代モデルからのキャリーオーバー

新型408のエクステリアスタイル
新型408のエクステリアスタイル

新型プジョー408に採用されるプラットフォームは、従来型と同様のEMP2と呼ばれるタイプです。

ピュアエンジンモデルは、フロントセクションにエンジンとミッションを搭載する一般的なFF車のレイアウト。プラグインハイブリッドモデルは、エンジンルーム内にモーターを収め、駆動用バッテリーはラゲッジルーム下に配置されます。

ボディサイズは全長×全幅×全高が4700×1850×1500mmで、ホイールベースが2790mm。乗車定員は5名で、フロント2名、リヤ3名と一般的なもの。最低地上高は170mmで、クロスオーバーモデルとして十分な高さが確保されています。

俯瞰めでみた408のエクステリア
俯瞰めでみた408のエクステリア

ラゲッジルーム容量は、定員乗車時のウエストラインまでで、ピュアエンジンモデルが536リットル、プラグインハイブリッドモデルが471リットル。リヤシートを前倒しとした際のルーフまでの状態では、ピュアエンジンモデルが1611リットル、プラグインハイブリッドモデルが1545リットルとなります。

新型408の発表に併せて、特別仕様車のファーストエディションを設定。ファーストエディションは、ブラック・ナッパレザーシート、パノラミックサンルーフ(メッシュシェード付)、フォーカル製HiFiオーディオの3点を特別装備します。ファーストエディションのラゲッジルーム容量は、定員乗車時が454リットル、2名乗車時のラゲッジルーム容量が1528リットルとなります。

●プジョー408の基本概要 メカニズム/1.2リットルピュアエンジン&1.6リットル・プラグインハイブリッドの2本立て

1.2リットルターボエンジン
1.2リットルターボエンジン

プジョー408には1.2リットルターボのピュアエンジンモデルと、1.6リットルターボ+モーターのプラグインハイブリッドの2種が用意されます。

1.2リットルターボはボア×ストロークが75.0×90.5mmの直列3気筒、弁形式はDOHCで、圧縮比10.5とガソリンターボとしては高め。

プラグインハイブリッド用パワーユニットに使われるエンジンは、ボア×ストロークが77.0×85.8mmの直列4気筒、弁形式はDOHCで圧縮比は1.2リットル同様に10.5。最高出力は132kW(180ps)/6500rpm・最大トルク250Nm/1750rpmです。

PHEV用の1.6リットルエンジン
PHEV用の1.6リットルエンジン

プラグインハイブリッド用モーターは交流同期型で、最高出力81kW(110ps)/2500rpm・最大トルク320Nm/500~2500rpmです。バッテリーはリチウムイオンで総電圧は305V、総電力は12.4kWhです。充電は普通充電のみで、急速充電には対応していません。

PHEVの充電口
PHEVの充電口

組み合わされるミッションは、いずれも8速のATで、ピュアエンジンモデル、ハイブリッドモデルで同じものを用います。ハイブリッドシステムは1モーター1クラッチ式で、アシスト時はアシストのみ、回生時は回生のみ、というシンプルな作動で、国産モデルのようにアシストしながらも充電、というようなモードはありません。

1.2ピュアエンジンモデルのWLTCモード燃費は16.7km /L、プラグインハイブリッドのWLTCハイブリッド燃費は17.1km /L。ハイブリッドモデルのEV走行可能距離は66kmとなっています。

●プジョー408のデザイン/ファストバックとクロスオーバーSUVの融合

408のフロントスタイル
408のフロントスタイル

クロスオーバーという言葉は、2つのジャンルにまたがる、もしくは2つのジャンルの特徴を合わせ持つ、といった意味を含みます。クロスオーバーSUVというのは、クロスカントリー4WDの持つオフロードでの走破性と、舗装されたオンロードでの快適性や高速性能を合わせ持つモデルです。

クロスオーバーSUVは、すでにクロスオーバーしているジャンルなのですが、ひとつのジャンルとして確立されています。プジョー408は、このクロスオーバーSUVというジャンルと、ファストバックの5ドアハッチバックモデルの、さらなるクロスオーバーが果たされたモデルです。

408の真横スタイル
408の真横スタイル

サイドから見ると、垂直に切り立ったグリル部から、水平となるボンネットへのラインが滑らかにつながり、Aピラーが立ち上がり、リヤに向けてゆるい角度でルーフが流れ、リヤハッチに至ります。全長が4700mmと長めなので、1500mmの全高も高くは感じません。タイヤは205/55R19と大径で、どっしりとした安定性が見てとれます。

408の正面スタイル
408の正面スタイル

正面のスタイルは、プジョー車に共通するライオンの牙をモチーフとした、シャープなデイタイムランニングライトが特徴。グリルは長方形のピースが放射線状に配置されたようなデザインで、先進性を感じるものとなっています。

408の真後ろスタイル
408の真後ろスタイル

リヤも、プジョー車らしいライオンの爪をモチーフとしたリヤコンビネーションランプを配したもの。最初の頃のこのリヤコンビランプは、個々のランプが縦方向に長い形状をしていましたが、現在は横長のランプが採用されています。

408のリヤスタイル
408のリヤスタイル

フロントバンパー下、前後フェンダーアーチ、サイドステップ、リヤバンパーには、ぐるっと一周、つや消しブラックの樹脂パーツが採用されSUVらしさが強調されています。

●プジョー408の走り/3気筒は軽快、PHEVは落ち着いたトルクフル。どちらも上質

408 ピュアエンジンモデルのフロントスタイル
408 ピュアエンジンモデルのフロントスタイル

最初に試乗したのが、1.2リットルの3気筒ターボを搭載するモデル。アイドリングから振動を感じることはなく、「あれ、これ4気筒だっけ?」とスペックシートを確認したほど。発進加速時もまるで振動は感じません。

ミッションが8速ということもあり、変速時のショックはほとんどなく、スムーズに加速していきます。高速巡航に入っても、3気筒の頼りなさみたいなものは感じません。

一方のプラグインハイブリッドですが、自分が試乗する時点で電池を使い切ってしまっていた状態だったので、運悪く走行用バッテリーが残っている状態での試乗はできませんでした。とはいえ、EV走行ができないだけで、回生された電力を使ってのアシストは効いています。

250Nmのエンジントルクに320Nmのモータートルクがプラスされた力強さは、上質で落ちついたフィールです。日本のハイブリッド系だと、充電モードや節電(キープ)モードが存在しますが、408にはそうしたモードはありませんでした。

また、走行モードはエレクトリック、ハイブリッド、スポーツの3モードがあり、スポーツモードにすると回生力が強くなります。

408PHEVの走行シーン
408PHEVの走行シーン

ピュアエンジンモデル、PHEVモデルのどちらもシームレスで快適なシフトアップ&シフトダウンが楽しめるのですが、5km/h程度からの停止に至る際にガクンとギヤダウンすることがあり、この領域でのコントロールが苦手なのかな?と感じることもありました。

408のフロントシート
408のフロントシート

ハンドリングは良好で、タイトなコーナーでも機敏な動きを実現します。それでいて、ロールがたまるような、深く回転半径の大きなコーナーでも、グッと路面をつかむ感覚があり、しっかりとしたコーナリングが味わえます。

かつて、プジョーはそのしなやかな足まわりを「猫足」と称されたことがあります。少し前までのプジョーは、ドイツ車のようなガッシリした足まわりになっていましたが、この408はサスペンションの初期の動きが柔らかで、その後はグッと踏ん張るところは、まさに本物の猫のような動きです。

408のリヤシート
408のリヤシート

今回は運転席で試乗しただけでなく、後席にも乗るチャンスがあり、両席での乗り心地をチェックできました。

運転席に乗っている際の乗り心地、静粛性はともに十分に高いもので、上級モデルに乗っている感覚です。ハッチバックボディを採用する408の後席は、セダンよりもノイズが進入しやすいボディ構造となりますが、なかなかの快適性。路面が荒れていると、サスペンションを通して伝わる音が若干ノイジーですが、そこに目をつぶれば十分に快適です。

●プジョー408のラインアップと価格/パワートレインは2種 基本グレードは上級のGT。1.2ターボにはベーシックグレードも設定

408のフロントスタイル
408のフロントスタイル

プジョー408のグレード展開は、基本はGTという上級グレードのみで、GTは1.2リットルピュアエンジン、1.6リットルプラグインハイブリッドともに設定されます。

ベーシックグレードのアリューリュは、1.2リットルピュアエンジンモデルのみの設定で、受注生産という形でオーダーを受けます。また、デビュー記念ということで、1.6リットルプラグインハイブリッドに「ファーストエディション」というモデルが80台限定で用意されます。

アリューリュでは、GTと比べて以下の装備が省略されます。

・ステアリングヒーター
・フロントパワーシート
・フロントシートヒーター
・ブラックルーフライニング
・フロントドアステップガード
・フロアマット
・クリーンキャビン(エアコンの内気循環・外気導入自動切り替え)
・i-Toggleスイッチ(デジタルShortカットスイッチ)
・コネクティッドナビゲーション
・ボイスコントロール
・360度ビジョン
・マトリックスLEDライト
・スポーティフロントグリル
・フロントフェンダーライオンエンブレム
・ハンズフリー電動テールゲート
・3Dデジタルヘッドアップインストルメントパネル

さらに、GTではシートがテップレザー&アルカンターラと、2種の合成皮革を使った仕様ですが、アリューリュではテップレザー&ファブリックとなり、アルカンターラは使われません。

408のグリルまわり
408のグリルまわり
408のリヤエンブレム
408のリヤエンブレム

限定車のファーストエディションは、GTの装備に加えて、ブラック・ナッパレザーシート、パノラミックサンルーフ(メッシュシェード付)、フォーカル製HiFiオーディオの3点が追加装備されます。

ただし、408に用意されるオブセッション・ブルー、パール・ホワイト、エリクサー・レッド、ぺルラ・ネラ・ブラックの4色のボディカラーのうち、ファーストエディションはオブセッション・ブルーのみの設定となります。

■プジョー408/バリエーション&価格
●1.2リットルピュアエンジン
PEUGEOT 408 アリューリュ (受注生産) 429万円
PEUGEOT 408 GT 499万円
●1.6リットルPHEV
PEUGEOT 408 GT HYBRID 629万円
PEUGEOT 408 GT HYBRID First Edition (限定80台) 669万円

●プジョー408のまとめ/スタイリッシュなスタイリングは魅力にあふれ、PHEV、ピュアエンジンどちらを選んでも十分に満足できる

408のフロントスタイル
408のフロントスタイル

スタイリングがクラウンクロスオーバーに似ている、などと言われることも多い新型プジョー408ですが、このディメンション、このスタイリングがまさに世界のトレンドとなりつつあるのでしょう。実車の存在感はバツグンで、素直に「カッコイイ」と言えるタイプのクルマだといえます。

1.2リットルピュアエンジンのGTが499万円、PHEVのGTが629万円で、その差は130万円。この差はけっこう大きなものですが、PHEVの場合は各種の補助や税金の減免があります。

プジョー408PHEVの場合、国の補助金は45万円、東京都なら都の補助金が40万円の計85万円を補助。登録時の自動車重量税は100%減税、環境性能割は非課税、翌年度の自動車税は75%減なので、この合計が約23万円となります。自治体によって違う部分もありますが、少なくとも東京都の場合はかなりのお得感があります。

408のインパネ
408のインパネ

ただし、プジョー408は急速充電に対応していないので、自宅やよく行く場所で普通充電ができない場合は、単なる1.6リットルのハイブリッドとしての役目しか果たしません。購入にはそこの部分の見極めが大切です。

自宅や通勤先に充電施設がなくても、週に2回行くショッピングモールで充電ができるなどの条件が揃えば、かなり“アリ”な状況でしょう。その充電器が6kWならば、ゼロからでも2時間半程度で満充電が可能。条件さえそろえば、自宅に普通充電器がなくても、PHEVを使うことはさほど難しくないのです。

408のフロントスタイル
408のフロントスタイル

一方、1.2リットルピュアエンジンも軽快な吹け上がりが気持ちいいモデルです。じつに軽快で、PHEVとは異なる魅力を持っていて、PHEVを買えないから、PHEVをあきらめて、という感じではなく、「私は1.2ターボがいい」と胸を張って言えるクルマに仕上がっているのもいい部分です。

どちらのモデルを買っても、満足のいくカーライフが送れることでしょう。

(文・写真:諸星 陽一)

●プジョー408GTハイブリッド (※〈 〉内はGT)
主要諸元
・寸法
全長×全幅×全高(mm):4700×1850×1500
ホイールベース(mm):2790
トレッド 前/後(mm):1600/1605
車両重量(kg):1740〈1460〉

・エンジン
タイプ:直列4気筒DOHCターボ〈直列3気筒DOHCターボ〉
総排気量(cc):1598〈1199〉
最高出力(kW[ps]/rpm):132[180]/6000〈96[130]/5500〉
最大トルク(Nm /rpm):250/750〈230/1750〉

・モーター
タイプ:交流同期電動機
最高出力(kW[ps]/rpm):81[110]/2500
最大トルク(Nm /rpm):320/500~2500

・走行用バッテリー
タイプ:リチウムイオン
・駆動方式:FF
・燃料消費率(WLTCモード、km /L):16.7(ハイブリッド燃料消費率)〈17.1〉

・シャシー
サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
タイヤサイズ:205/55R19
ブレーキタイプ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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