希少な道路標識「軌道敷内通行可」、実は都内にもある!

■実は併用軌道のほとんどは軌道敷内通行不可

「軌道敷内通行可」という標識は、自動車教習所での教本でしか見たことないという人もたくさんいるのではないでしょうか。そんなレアな標識をなんと東京都内で見ることができます。

東京都内を走る都電荒川線と軌道敷内通行可の道路標識
東京都内を走る都電荒川線と軌道敷内通行可の道路標識

路面電車の軌道には、道路上に敷かれた線路=併用軌道と、鉄道線のように独立した専用軌道があります。併用軌道自体は各地にありますが、実はそのほとんどは原則として、軌道敷内を自動車が走ることは道交法21条1項で禁じられています。

ただし以下の例外があります。

左折・右折・横断・転回のための軌道敷を横切る必要がある場合と、危険回避のためにやむを得ない場合(道交法21条1項)。

横道から右折してきた自動車が軌道敷を横断しています(富山県高岡市・万葉線)
横道から右折してきた自動車が軌道敷を横断しています(富山県高岡市・万葉線)

道路の左側部分から軌道敷を除いた部分の幅員が、車両通行に不十分な場合(道交法21条2項1号)。

道路の損壊・工事のそのほかの障害のため当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分の幅員が車両通行に不十分な場合(道交法21条2項2号)。

軌道敷を除いた車道の幅が不十分なケース(滋賀県大津市・京阪電気鉄道石山坂本線)
軌道敷を除いた車道の幅が不十分なケース(滋賀県大津市・京阪電気鉄道石山坂本線)

そして、道路標識等により軌道敷内の通行ができるとされている時(道交法21条2項3号)で、軌道敷内通行可の道路標識はこれに該当します。

東京都電荒川線(通称さくらトラム)は、三ノ輪橋〜早稲田間12.2kmの路面電車です。このうち三ノ輪橋〜熊野前間、小台〜王子駅前間、飛鳥山〜早稲田間は、軌道が独立している専用軌道区間で、併用軌道区間は熊野前〜小台間と王寺駅前〜飛鳥山間の2ヵ所となっています。

ただし、熊野前〜小台間は物理的に自動車が軌道敷に入れないように、軌道の両側に縁石を設置したセンターリザベーション方式を採用していています。

センターリザベーション方式を採用している都電荒川線熊野前〜小台間
センターリザベーション方式を採用している都電荒川線熊野前〜小台間

純粋な併用軌道区間は王寺駅前〜飛鳥山間で、ここに軌道敷内通行可の道路標識が設置されています。

軌道敷内通行可の道路標識が設置されている王子駅前〜飛鳥山間
軌道敷内通行可の道路標識が設置されている王子駅前〜飛鳥山間

この区間は国道122号線上にあり、軌道敷を除いても片側2〜3車線もあります。しかし、王子駅前・音無橋・飛鳥山交差点があって交通量も多いためか、軌道敷通行可となっています。

ただし、この区間はカーブしている坂道となっているため、軌道敷内を二輪車が通行することはできないので注意が必要です。

軌道敷内を通行する場合の注意点としては、道交法第21条3項に「軌道敷内を通行する車両は後方から路面電車が接近してきたときは、当該路面電車の正常な運行に支障を及ぼさぬように、すみやかにエリア外に出るかまたは当該路面電車から必要な距離を保つようにしなければならない」と定められていて、路面電車の運行を妨害するような運転をしてはいけません。

なかなかできない路面電車の追走することができるのも、都電の魅力かもしれません
なかなかできない路面電車の追走することができるのも、都電の魅力かもしれません

ともあれ、路面電車と縦列して走ることができるというのは全国的にも珍しいことなので、一度経験してみるのもいいかもしれません。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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