パイオニア通信型オールインワン車載機「NP1」が園児車内置き去り防止の安全装置に認定【パイオニアNP1実証実験】

■送迎バスの置き去りをゼロにするためのガイドラインが4月からスタート

ゴールデンウィーク前の4月下旬ながら、最高気温25度以上の夏日を300地点以上で記録。一部の地域では、最高気温が30度を超えた真夏日を記録する暑さとなっています。

置き去り防止機能をもつNP1を搭載した送迎バス
置き去り防止機能をもつNP1を搭載した送迎バス

気温が30度以上になると、閉め切ったクルマの車内温度は40度以上となり、短時間で熱中症になります。昨年、一昨年と送迎バスに園児が取り残され、亡くなるという悲しい事故が起きました。

このような悲しい事故を防ぐために、2023年4月より園児送迎バスへの安全装置設置義務化がスタートしています。

今回は、様々な高性能カーナビゲーションを展開しているパイオニアが、いち早く、この園児送迎バスへの安全装置設置義務化に対応した製品をマスコミ向けに公開しましたので、リポートします。

置き去り事故を含む保育事故は2021年に2,347件発生し、前年比332件増と増加傾向です。これは園内だけの問題ではなく、社会課題と言える状況です。この状況を受けて、内閣府は2022年12月に、車内における園児(幼児)置き去り事故防止を目的とした「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全措置のガイドライン」を策定しました。

降車時確認式はこのような停止ボタンを操作し、警報を止める
降車時確認式はこのような停止ボタンを操作し、警報を止める

そして、2023年4月から、幼稚園や保育園などにおける全国約4万台を超える送迎バスにおいて、同ガイドラインに適合する装置の義務化が始まりました。

「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全措置のガイドライン」を違反した場合は、業務停止命令の対象となる厳しい罰則があります。また、装備には1年間の猶予期間が設けられていますが、装着にかかる手間などを考えるとそれほどの余裕はありません。

そして、安全装置の購入および設置費用には、17万5000円の政府による補助金が適用されます。

したがって、企業は少しでも早く高性能で低価格な商品を開発する必要があります。

置き去りがあった場合、追加されたホーンが鳴り知らせる
置き去りがあった場合、追加されたホーンが鳴り知らせる

補助金の対象となる置き去り防止安全装置は2種類あります。まずは、置き去りを確認で促す降車時確認式。そして、センサーで置き去りを検知する自動検知式です。このどちらかの機能を搭載していれば、補助金の対象となります。

降車時確認式というのは、子どもの降車後に、運転手や乗務員に車内に残っている子どもがいないか確認を促す方式のものです。これは、エンジン停止後に音声やブザーによる警報が発せられ、車内の確認後に運転手や乗務員が車内後方に取り付けられた停止ボタンを操作することで警報を止めることができます。一定時間警報の停止が行われなかった場合には、車外スピーカー等の警報で置き去りの可能性があることを車外に知らせる、という方式です。

青いランプが点灯している時、NP1は起動中
青いランプが点灯している時、NP1は起動中

そして、自動検知式は、センサーによって車内確認され、子どもが車内に取り残されてしまった場合は、車外へ警報を発し知らせる装置のことです。

エンジン停止から一定時間後にセンサーによる検知が開始され、子ども(動き)を検知すると車外スピーカー等の警報や、運転手や乗務員へのメール通知で置き去りの可能性を知らせます。あくまで人による車内確認をしたうえで、万が一の見落としや確認漏れを補う方法であるということです。

市販されているNP1用のアプリを利用できる
市販されているNP1用のアプリを利用できる
NP1に搭載されている機能を絞っているためスピーディーに開発できた
NP1に搭載されている機能を絞っているためスピーディーに開発できた

降車時確認式、児童検知式ともに、ヒューマンエラーを防ぐことが目的であり、決して運転手や乗務員による確認が不要になるわけではありません。

今回、パイオニアがいち早くこのガイドラインに認定された商品を公開できた理由は、すでに商品化されている乗用車向けAI搭載通信型オールインワン車載機「NP1」をベースに開発した特別仕様だからです。

NP1に搭載されたカメラで車内の様子をスマートフォンで確認できる
NP1に搭載されたカメラで車内の様子をスマートフォンで確認できる
センサーで認識する範囲を設定可能
センサーで認識する範囲を設定可能

今回、実際に送迎バスに装着されたNP1特別仕様は、本来NP1の機能のうち、OTA、クラウドドライブレコーダー、走行中衝撃検知、マイカーウォッチという4つの機能を残し、そのほかの機能は停止されています。

NP1に搭載されている機能を利用し、駐車後の自動検知式、降車時確認式の両方を併用できる併用式として内閣府の認定を受けて、4月下旬から順次出荷を開始する予定です。

川越幼稚園の榎本円園長先生
川越幼稚園の榎本円園長先生

今回、パイオニアの実証実験に対して協力、撮影場所となった川越幼稚園の榎本円園長先生は、

「送迎バスはドライバーのほか、先生が1人か2人乗車し、乗車時そして降車時に園児の数を確認しています。園児を降ろした後に車内を除菌していますので、その際に置き去りがないかはチェックしています。
しかし、普段と異なったイレギュラー対応時や緊急時に、思いも寄らない事故が起きるかもしれません。そういった時にこのような装置が威力を発揮してくれると思うと、お守りのようなものと考えるようにしています」

と話してくれました。

フロントガラスに装着されたNP1
フロントガラスに装着されたNP1

NP1の特別仕様は、降車時確認式と自動検知式の両方の機能を備えた併用式というだけでなく、通信でアップデートも可能なので、取り付け後の園の需要やガイドラインの変更などにも対応できるのが特徴と言えます。

これまではエンターテイメント面での注目が多かったNP1ですが、今後は『園児の見守り』という大事な機能を担うことになりそうです。

(文、写真:萩原 文博)

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この記事の著者

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萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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