■トール型標準軽乗用車の実用性
eKワゴン内外の詳細について見ていくユーティリティ編です。
さあて、どこまで迫れるか?
●運転席から
・インストルメントパネル
eKワゴン試乗第2回でも書きましたが、ハンドルを正面に、左にシフトレバー、その左に空調コントロール、上にトレイをはさんで空調吹出口、ナビモニターと、他の軽自動車とレイアウトに何ら変わるところはありません。サイドウォークスルーを構築するためにインパネシフト化するなら、どれもこれも同じ形になるのでしょう。
したがって、操作性も他のクルマと大同小異・・・といいたいところですが、シフトレバーだけは・・・(シフトレバーの項につづく。)
・メーター
左に回転計、右に速度計、その中央にカラーのマルチインフォメーションディスプレイを配した、自発光の2眼式。理路整然と並んでいるだけの何やらさびしい写真ですが、これはエンジンON時、照明&指針、ランプ、マルチインフォメーションディスプレイの灯りに時間差が与えられているため、回転計の指針が動く頃にはランプの多くが消えてしまうためです。始動時はそれなりに派手な見てくれになります。
水温計はランプではなく、指針式にしてほしいこと、燃料計が小さくて見にくい他に不便な点はありませんでしたが、燃料計はマルチインフォメーションの画面で拡大表示選択ができるので見にくさはカバーできます。
・マルチインフォメーションディスプレイ(以下MID)
アダプティブクルーズコントロール使用時や、道路標識を認識すれば自動で該当画面に切り替わるほか、ハンドル左スポークのスイッチで表示内容を選択することもできます。
そのスイッチ操作については後の「カスタマイズ」の回で解説するつもりですが、動きが煩わしければブランクにできる「画面OFF」以外に、「エコグループ」「インフォメーショングループ」「走行支援グループ」などにグループ分けされ、グループ名称に応じた項目が多彩に表示されます。もれなく写真に撮りましたので、「設定」以外の画面写真を載せておきます。ここには代表的なものを、その他は画像ギャラリーを。
・ステアリングホイール
他の日産車で見たような気がするハンドル。パッド部分の「NISSAN」がスリーダイヤモンドに変わっています。径は筆者実測370mmで、グリップが太めなこともあってちょい小径な印象があります。
電動パワーステアリング仕様で、駐車操作では軽く、車速上昇につれて適度に重みが増します。電動式にありがちな引っかかり感も戻りの不自然感もありませんが、電動式なら電流特性を変えるなどでアシスト量を変えることなど何の造作もないはずで、重い軽いの好みはひとそれぞれなのですから、電動式であることを活かし、3段階くらいで重さをセレクトできるようにしてほしいと思います。
・ワイパー/ウォッシャースイッチレバー
昔のミニカアミは、車種によりけりで、ワイパースイッチをONにするだけの1段式、LO、HIの2段式、間欠INT付きの3段式と3種類ありましたが、いまや軽自動車も間欠時間調整機能付きのワイパーが標準装備。
定位置から下に、間欠、LO、HI。上へのレバー保持で一時作動(ミスト機構)、手前引きでウォッシャー液噴射。内側のリングまわしで間欠時間調整。その間欠作動は、車速が高いほど間欠時間が短くなる車速感知式です。
レバー先端に目を向けて、向こうまわし1段、2段でリヤワイパーが間欠、LO作動、レバー向こう押しでリヤウォッシャー液噴射・・・いま気づきましたが、ウォッシャー液噴射、レバーを手前に引いてフロント用が、前に押してリヤ用とは逆ですな。まあ、慣習ということで。
フロントワイパー作動中、シフトレバーをRに入れるとリヤワイパーが作動するリバース連動機能付きです。
・ターンシグナル/ライトスイッチレバー
レバー上下端まで動かして左右方向指示点滅。その途中保持でレーンチェンジャーが働きますが、チョン操作ですぐ手を離したときも3回点滅します。
レバー向こう押しでオートマチックハイビーム(AHB)起動、AHBハイのときに押すと手動ハイビーム、手前引きでロービーム、AHBロー時に押して手動ハイ。AHB起動中、手前に引くとパッシング。レバー前後に関しては、手を離すと自動で定位置に戻るロジックです。文字で書くとかなりややこしいのですが、ちょいと使えばすぐに慣れるでしょう。
・運転席右側スイッチ群
スイッチは2つ。すなわち、三菱では「オートストップ&ゴー(AS&G)」と呼ぶアイドリングストップ機能のOFFスイッチ(押すとアイドリングストップしない)、ヘッドランプの手動光軸調整のスイッチがあるのみ。運転姿勢では影に隠れがちですが、一般のひとはそう頻繁に使わないでしょうからこれでいいのでしょう。
・エンジンスイッチ
リモコン携帯&キーなしのボタン押しでエンジン始動ができるキーオペレーションシステムは、高いGにのみ備わり、安いMは在来どおりリモコン付きのキー挿し式。オプションの用意さえありません。
ハンドルの左に据えられ、シフトP、ブレーキ踏みのひと押しでエンジン始動。始動中のすばやい3回押しか2秒以上押しで、非常停止となります。
<ACC電源オートオン/オフ機能>
押すたびにONとOFFが切り替わり、従来のACC(アダプティブクルーズコントロールではなく、ここでは「アクセサリー」)は、OFFに内包という考え方になっています。
これはキー挿し式のクルマも同じで、ポジションは、「0.LOCK(OFF) → 1.(OFF) →2. ON → 3.START」となり、見かけ上、キー付き車でもACC位置はありません。
すなわち、リモコンで解錠したとき、またはエンジンを停止したときは、OFFでも自動でACCが作動。ACCが約13分続く、またはリモコン解錠後約3分経過すると自動でOFFになります。ということは、試さなかったのですが、最後にラジオのNHK第1をつけっぱなしでエンジン停止&施錠し、翌朝6:30に解錠してドアを開けたときはラジオ体操の音楽が迎えるのかな。
本当は、ボタン分割するなどでエンジンOFFかACCかを任意で選べるといいんだけどな。
・キーレスオペレーションキー
Gに標準のキーレスオペレーションキーのリモコンは、車両1台につき2個付属・・・2008年に買った筆者のティーダは1個だったぞ。
中身はシンプルで、施錠ボタン、解錠ボタン、内蔵キーがあるほか、作動ランプもついている・・・ランプもティーダのときはなかったぞ。
施錠/解錠でブザー&ハザードによるアンサーバックの他、施錠時に約10秒、解錠時に約30秒、ヘッドライト以外の灯火が点灯するウェルカムライト、カミングホームライト機能付き。この機能搭載は、国産では三菱自動車が早かったのではないかと記憶しています。
他の三菱車と異なり、日産の「インテリジェントキー」と同じ形をしており、「NISSAN」マークが三菱スリーダイヤモンドに変わっています。
経験からいうと、この形はポケットに入れても中で引っかからず、かさばらずで実に都合がいい。長い間この形なのは、好評だからなのかも知れません。
なお、このリモコンは同じ車両につき、最大4個まで使用可能。家族分、または予備でご入用の方は三菱販売店へ。1個がけっこう高いんだ、これ。
・シフトレバー
全機種CVTで、PRNDLの5ポジション式。レバーサイドにはSPORTボタンがあり、実質6ポジションといいかえることもできます。
Dでも変速比を上りでロー傾向にして加速性を優先し、下りではロー寄りにしてエンジンブレーキを効かせるアダプティブシフトコントロール付き。
それをより積極的に使いたいときに押すのがSPORTボタンですが、この状態でD以外に入れるとキャンセルされ、その後Dに戻してもSPORTは再開しません。
試乗記にも書きましたが、インパネシフトがただ壁面についているだけというクルマが多い中、このクルマでは操作性向上ねらいで意識的に設置パネル部を寝かせ、操作する手首に負担がかからないレバー角度となっています。詳しくはeKワゴン試乗第3回を。
・電動パーキングブレーキ
Gでのみ選べる「先進快適パッケージ(PKG2)」に内包されるデバイス。
マイパイロットによる自動停止には、駐車ブレーキは電動式のほうが都合がいいのでしょう。
引いて制動、押して解除。シートベルト着用時のDまたはRでの発進時は自動解除されますが、そのような機能があろうとベルトをしていようと、「駐車ブレーキをかけた、解除した」の自覚を促すためにも、原則的には常に操作するほうがいいと思います。
このスイッチは、走行中の非常事態時に引き上げ続けたときも制動、離すと解除されます。
<ブレーキオートホールドスイッチ>
押すとブレーキオートホールドON。ドライバーのブレーキペダル操作で停車した際、制動を保持し、アクセルペダルを踏むと解除されます。
電動パーキングの自動解除と似ていますが、あちらは後ろ2輪に対して制動するのに対し、こちらはブレーキペダル操作を保持する・・・つまり4輪に対して保持制動するという違いがあいます。
どちらのスイッチも手は届きやすいものの、運転姿勢ではハンドルの影に隠れて見えないのが欠点。緊急時のことを考えても、常に目に入る位置にあるべきなのですが、どこかいい場所はないものか・・・
・サンバイザー
サンバイザーは、着座位置も屋根も高いため、タテ寸がちょいと長めの大きめサイズで、運転席用はバニティミラー付き。
・ルームミラー
試乗車には、本体下のレバー操作でリヤモニター化するデジタルルームミラーがついていましたが、これはGだけに用意される「先進安全パッケージ(PKG1)」のひとつで、左半分弱のデジタルミラー部にマルチアラウンドモニターが表示されます。その詳細はリアル試乗「車庫入れ編」に。
本来はGもMも、在来どおりの単なるプリズム式の防眩ミラーが備わります。
・後席シートベルト非着警告灯
カードホルダータイプB(次項)の向こう側には、後席乗員のシートベルト未装着を知らせる警告灯が据え付けられています。約15km/h以上で走行中、ベルトが装着されていないと、ランプが点灯してブザーが約65秒間吹鳴。荷物を置いただけで鳴っていました。
前席用はメーター内に設置されており、こちらは同じ条件でブザーが約95秒間鳴ります。
・カードホルダー
駐車券などを挟むホルダーは、ありがたいことに2か所にある!
ひとつは取扱説明書上で「タイプA」と称するサンバイザーに。天井側に格納した状態でも使えるのがいい。こんなのあたり前だと思っていたら、下ろして使うバニティミラーのふたに任せるものも多く、これじゃあいちいち下ろさなきゃいけないじゃないかというものに比べたら使いやすいので◎を差し上げます。
「タイプB」はルームランプ前方にあり、これもおおいに気に入った!
この部分、日産デイズでは「SOSコール(ヘルプネット)」スイッチの設置場所になりますが、未装備車ではただのふたにせず、ちゃんと機能を持たせたのがえらいので、こちらも◎を。
ところでこの「SOSコール」、三菱eKワゴン/eKクロスには用意されません。何で?
・ルームランプ
ここに設置した左右マップランプを同時点灯させることでルームランプと称する強気なクルマもあるなか、eKワゴンではひとつのレンズの中に左右マップランプとルームランプ、きちんと3個電球を入れてくれました。そういやあ、ここにあった昔のミニカアミのランプはレンズを外した中に予備の電球もセットされていたっけ。
シーソースイッチが小さすぎて使いにくいですが、中央のスイッチAは左がOFF、水平状態がDOOR、右がON。左右のマップランプは、左用は左側、右用は右側を押して点灯です。
<キー連動室内照明システム>
ルームランプスイッチがDOORにあるとき、ドア開での点灯に加え、解錠から約15秒間、エンジンボタンOFF(キー付き車はキーを抜き取って)から約15秒間、ドア閉じ後約15秒間・・・それぞれのタイミングで点灯します。初採用は、記憶では確か1996年のU14ブルーバードじゃなかったかな。この機能は切ることも可能です。
・ラゲージルームランプ
ルーフ後端から荷室を照らす角度で設置されています。
スイッチポジションは3つで、左からON、DOOR、OFF。働きはルームランプと同じで、キー連動室内照明システムはこのランプにも働きます。
●電源各種
・USBポート(充電用)
電動パーキングブレーキレバー上にあります。いまや携帯電話もスマートホンもUSB使用が多いので、その電話機を隣のトレイに置いて充電できるよう、ここに設置したのでしょう。そのような配慮のないクルマがいかに多かったことか!
なお、ポートの四角をなぞるように灯る夜間照明がついているのが親切です。
・アクセサリーソケット(DC12V)
前席フロア中央のもの入れの上に、ふた付きで設置されています。容量は12Vの10Aの120W。設置場所が昼間でも薄暗いフロア側となるこちらにこそ、USBポートと同様、何らかの照明がほしかった・・・
何だかUSBポートからの供給電装品が増えているので、12V電源の存在感が薄れていますが、前のクルマからの12V電装品を持ち越しで使いたいひともいるはずなのでなくさないでほしいもんですな。
●ドア内張り
最近、やや減少傾向にある布貼りがきちんと施されているのと、全体がしっかりした造りになっています。
・ドアハンドル&ドアロックノブ
ドアハンドルとロックノブが併設されていることはいうまでもありません。
運転席用ドアハンドルは、施錠状態でも引けば開けられると同時に、他の全ドアも解錠されるという便利機能付きです。
運転席用ロックノブは他の3枚ドアロックの操作を兼ねていますが、できれば専用スイッチを設けてあったほうが便利です。
筆者がいつもほしいと思っている、解除可能が前提の車速検知式のロック機能もありませんが、衝撃を感知すると全ドア解錠する「衝撃感知式ドアロック解除システム」はついています。
・パワーウインドウスイッチ&電動ミラー調整スイッチ
パワーウインドウは運転席のみ、はさみ込み防止機構&AUTO開閉付き&キーオフ後でも開閉可能なタイマー付きとなっています。ありがたいのは、そのタイマーがいつもここで要望している15分であることで、両社の最新型であるセレナやアウトランダーを見てみたら45秒でした。最新型のほうが不便というのはどういうことだ・・・
その前方には電動ミラーの調整スイッチがあり、格納スイッチは押しボタン式。押すたびに格納/復帰となり、復帰状態で施錠すると格納される自動格納機能付きです。スイッチを運転姿勢のまま調整できる位置に置いたのが○。
ところではさみ込み防止機構は運転席にとどまっていますが、この機構を日本車で初めて採り入れたのは同じ三菱のミニカ。景気がよかった時代の設計だけに、全ドアについていました。発売されたのはバブル崩壊後でしたが(1993年)。
・ドアプルハンドル
・・・と勝手に命名しました。その後ろはアームレストになっていますが、この穴ぼこを後ろいっぱいに伸ばし、後端に手を入れれば軽くドアが閉じられるのに。腕を置いても感触にたいした違いはないでしょう。
ついでといっちゃあ何だけど、他のドアの内張りも載せておきます。あんまり見ないでしょう?
というわけで、話はやはり1回で終わりませんでした。
2回に分けることにし、他は後編まわしということで・・・
(文:山口尚志 モデル:海野ユキ 写真:山口尚志/モーターファン・アーカイブ)
【試乗車主要諸元】
■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕
●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:154万0000円(消費税込み)