eKワゴンのカスタマイズ機能にいまなお宿る、三菱自動車のETACS(エタックス)の息吹とは?【新車リアル試乗7-11 三菱eKワゴン カスタマイズ編】

■eKワゴンのカスタマイズ機能を見てみる

セッティング項目、けっこうな数がありました。
セッティング項目、けっこうな数がありました。

今回はeKワゴンのカスタマイズ機能に迫ります。

三菱のベーシック軽にどのようなカスタム機能が与えられているのか?

●実は三菱が老舗だった車両カスタマイズ機能

「ここがこうであればいいのに」というユーザーの願いを叶えてくれる車両カスタマイズ機能の搭載がいちばん早かったのは三菱自動車で、いまにつながるカスタム機能「ETACS」を、2002年11月に名跡復活を遂げた新生コルトに初搭載。順次、以降の三菱新型車に導入されました。

クルマの機能や使いやすさを思うと、クルマはユーザーの数だけ種類があってしかるべきなのですが、実際には無理な相談。「だったら機能の要否・ON/OFFをユーザーが好みに決めればいいじゃないか」と、三菱のひとが考えたのかどうか知りませんが、各機能のON/OFFにユーザー選択の余地を与えたのがカスタマイズ機能です。

2002年11月に復活した新生コルトのETACSカタログ説明
2002年11月に復活した新生コルトのETACSカタログ説明

この頃のETACS内容のすべてを覚えてはいませんが、ひとつふたつ例を挙げると、ウォッシャー液噴射に連動してワイパーを作動させるかどうか、その2~3回往復後の10秒後だったか、払拭エリア外から流れ落ちてきた液を拭う1往復動作をさせるかどうか、夜間の降車時、 エンジン停止後もライトを30秒だか60秒だか点灯し続けさせるかどうか、などなど…三菱はこの「ETACS」を2000年代初頭から採り入れましたが、「MIVEC」や「INVECS」ほど知名度は上がらず、ちょっと見たところ、その名称は、いまではデリカD:5に残っているにとどまります。

内容はいくらか異なるが、三菱自動車は、1980年のギャランΣ/Λの時点ですでに「ETACS」の名称を使っていた。このときの読みは「エタックス」。写真は1980(昭和55)年8月号に掲載された、ギャランΛの広告
内容はいくらか異なるが、三菱自動車は、1980年のギャランΣ/Λの時点ですでに「ETACS」の名称を使っていた。このときの読みは「エタックス」。写真は1980(昭和55)年8月号に掲載された、ギャランΛの広告

さきほど「いまにつながるETACS」と書いたのは意味深で、実はもっと前から「ETACS」名称は存在しており、筆者が以前、「三菱ギャランΣ/Λのすべて(2018年5月刊)」制作時に過去の三菱車の歴史を調べた際、「ETACS」が80年代のギャランΣ/Λですでに使われていたことを知りました。その内容はいまのものと少し異なるものの、意外と歴史のあるシステム名称だったのです。

その後特に定着することはなく、2002年に約数十年を経て生まれ変わったコルトでETACSも復活させたということでしょう。

このETACS、読みは「エタックス」で、「Electronic Time and Alarm Control System」の頭文字を取って「ETACS」となります。

このカスタマイズ機能は他のメーカーも採り入れるようになり、トヨタは三菱よりも盛んなほどであるいっぽう、日産はどこか消極的な感じがします。eKワゴンも最新日産車も、数えればかなりの数があるのですが、取扱説明書でも巻末でわかりやすく一覧表を載せているわけではなく、メーター説明項に組み入れているにとどまるので、ユーザーに知らしめようという思いが少ないのかなという感じがします。

カスタム機能は、搭載が早かった三菱こそ老舗ですが、eKワゴンのカスタム機能は、開発主体の日産のそれに則っているという前提で話を進めます。

●その数、トータル9項目43点

クルマの成り立ち上、取扱説明書全体も日産車に準じた造りになっており、他車の場合と違って何とも数が数えにくいのですが、筆者の数えでは、ユーザーがカスタマイズできるメニュー点数は9項目43点でした。

その内容は下記のとおり。いつもなら青字の太字で初期設定を示すところですが、取扱説明書に初期設定の明記がないので今回は示さないことにします。

1.ASC(Active Stability Control):ON、OFF(ただし通常はON。カスタム操作でON/OFF。OFFにしても次回エンジン始動時に自動ON復帰)

2.時計
 1.時計調整
 2.12H/24H:12時間表示、24時間表示

3.日付設定

4.運転支援
 1.衝突被害軽減ブレーキ
  ・衝突被害軽減ブレーキ(FCM):(前方衝突・予測警報=PFCW、踏み間違い衝突防止アシスト=EAPMと一斉に)ON、OFF
 2.車線逸脱警報(LDW):ON、OFF
 3.車線逸脱防止支援(LDP):ON、OFF
 4.MI-PILOT
  ・車線維持支援(LKA):ON、OFF
 5.先行車発進お知らせ(LCDN):OFF、標準、早め
 6.速度標識表示(TSR):ON、OFF
 6-2.道路標識表示(TSR):ON、OFF
 7.センサー
  ・フロントセンサー:ON、OFF
  ・リヤセンサー:ON、OFF
  ・ボリューム:大、中、小
  ・センサー感度:遠距離、中距離、近距離
  ・表示設定(障害物に近づいたときの割り込み表示):ON、OFF
 8.ふらつき警報(DAA):ON、OFF

5.エコモード
 1.ECO情報設定
  ・ECOインジケータ:ON、OFF
  ・エコドライブレポート:ON、OFF
 2.燃費履歴 → 前記エコドライブレポート(燃費履歴)表示時に「OK」を押すとリセット

6.車両設定
 1.オートライト感度調整:より早い、早い、標準、遅い
 2.自動室内灯(キー連動室内照明):ON、OFF
 3.車速連動ワイパー:ON、OFF
 4.ドアミラー自動開閉(ドアロック連動自動格納機能):ON、OFF

7.メンテナンス
 1.オイル:交換時期を500km単位で距離設定、「リセット」選択のOK押しでリセット、「—」表示時のOK押しで機能停止
 2.オイルフィルター:交換時期を500km単位で距離設定、「リセット」選択のOK押しでリセット、「—」表示時のOK押しで機能停止
 3.タイヤ:交換時期を500km単位で距離設定、「リセット」選択のOK押しでリセット、「—」表示時のOK押しで機能停止
 4.ユーザー:交換時期を500km単位で距離設定、「リセット」選択のOK押しでリセット、「—」表示時のOK押しで機能停止

8.スケジュール
 1.誕生日:月日入力で設定
 2.記念日
  ・記念日1:月日入力で設定
  ・記念日2:月日入力で設定
 3.車検日:年月日入力で設定
 4.点検日:年月日入力で設定

9.画面カスタマイズ
 1.凍結注意:ON、OFF
 2.メーター演出
  ・スイープ演出:ON、OFF
  ・ディスプレイ演出:ON、OFF
 3.走行時間
  ・–分/—-分:設定した時間まで連続走行したことを報知。30分単位で最大360まで設定可能。
  ・リセット:「はい」でリセット
 4.オートストップ&ゴー(AS&G作動のガイダンス表示):ON、OFF
 5.ライトOFFガイダンス(ライトスイッチを「スモール/OFF」にしたときのポップアップ表示):ON、OFF
 6.工場出荷設定:「はい」で各設定初期化

eKワゴン試乗第2回で「スイッチは少なめ」と書きましたが、「4.運転支援」項を見ればおわかりのとおり、安全デバイス設定の多くはこのマルチインフォメーションディスプレイ(MID)で行うため。停車中でなければできないのが面倒ですが、かといってそれぞれにいわゆる物理スイッチを設置しようものならスイッチの羅列になるわけで、どのみち多くはONにしておいたほうが無難なものだし、あまりいじくらないほうがいいものだし、あえて面倒であるほうがいいのかも知れません。

筆者としては、ぜひほしかったのが車速連動ドアロック機能。

これまでにも何度か書きましたが、筆者は車速連動ドアロックの賛成派です。

ロックすると、横転時など、周囲からの救出を自ら妨げていると認識されるというヨーロッパの話に影響を受けてか、ヨーロッパ車かぶれの自動車評論家は反対を唱えますが、本来そのへんはドライバー個々が任意で判断することだと思います。

ついぞ最近、日本でも家人を襲い、金品を奪って逃走するという事件が発生。留守宅ではなく、明らかに家人在宅中の家屋こそを狙っての犯罪でした。残念ですが、近所のひとが気軽に入れるよう、鍵をかけていなくてもよかった、昔の下町の頃とはとっくに違う世の中になっているのです。

となると、アンロック状態の車中でひとを待っているときだって、急に見知らぬ暴漢がドアを開けてこないとは誰にもいい切れません。

ときおりタイミング悪く、スクランブル交差点上で信号待ちしてしまうことがありますが、そのときは自車の前後左右、ひとがうごめくことになります。うっかりアクセルを踏んで周囲のひとを跳ね飛ばしたりしないようにとシフトをPに入れ、駐車ブレーキもかける瞬間ですが、考えてみるとこのとき、こちらはクルマを動かして前の歩行者を襲うスタンバイ状態であるいっぽう、周囲のひとだっていつでもドアを開けて入って来られる状態なのです。選ぶひとが少なくなったトランク独立のセダンでなければ、バックドアからでも侵入できる。

こう考えると、いまはどこを走るのにも、ドアロックはしておいたほうが無難というのが筆者の考えです。

ただ、自分の考えが絶対正しいとは微塵も思っておらず、この記事をお読みの方の中には反対派のひともいるでしょう。考えひとそれぞれなのは当然。だからこそ、常時ロック派と常時アンロック派の折衷策(といえるかどうかわかりませんが)として、ON/OFF付き車速ロックを追加してほしいと思うわけです。

eKワゴンには、ロック時でも運転席ドアはドアハンドルを引くとドア開になる(ロックすれば外からは開かなくとも、中からは常に開けられる)と同時に、他のドアもアンロックされるのと、キーON時に限られますが、車両が前後方向または側面から強い衝撃を受けると約3秒後にアンロックされる、衝撃感知式ドアロック解除システムがついています(このさい、このシステム自体が故障したらどうするんだということはいいっこなし! 話が続かなくなっちゃう)。

このあたり、カタログには出ていないので添えておきます。カタログに入れときゃあいいのに。

あと、コンフォートフラッシャー(ライトレバーに触れるとターンシグナルが3回自動点滅する機能)は、筆者にとってはちっともコンフォートじゃないので、これもON/OFFのメニューがほしいな。

●MID操作用ステアリングスイッチ(MID操作に使用するステアリングスイッチ)

MID操作に使用するステアリングスイッチ
MID操作に使用するステアリングスイッチ

ハンドルスポーク左には、こうでなきゃ! という配列のMID操作スイッチがあります。

これだよ、これ! MID設定でカーソルを上に下に動かせというなら、それぞれを独立させたスイッチにしなきゃ。このクルマは上下ばかりか、「左右」「OK」のほか、「戻る」もちゃんと個別に設けてくれている。

ひとつのボタンの単押し、長押しだけですべてを賄っておしまいにしているクルマには見習ってほしいものです。

あとは押しやすい形であれば・・・

というわけで、カスマイズ編はここまで。

次回はeKワゴン試乗最終回。販売動向に燃費報告、そしてエピローグです。

(文:山口尚志 写真:山口尚志/三菱自動車工業/モーターファン・アーカイブ)

【試乗車主要諸元】

■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕

●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格154万0000円(消費税込み)