eKワゴンの販売比率、実は廉価版Mが8割! その結果が表す堅実性とは?【新車リアル試乗7-12三菱eKワゴン 販売動向/燃費報告 まとめ編】

■eKワゴンの販売動向と商品性、燃費を総まとめ

本来こうあるべしという売れ方でした
本来こうあるべしという売れ方でした

eKワゴンのリアル試乗。最終回の今回第12回は、eKワゴンの販売動向と燃費などを見ていきます。

●販売動向

三菱自動車の広報の方にお願いし、最後の改良を受けた昨年2022年9月8日から、ことし2023年1月末までの販売動向を出していただいています。

【eKワゴン販売動向データ(最新改良2022年9月8日発表・発売モデル)】

1.販売台数(2022年9月8日~2023年1月31日)
3421台

2.2WD・4WD比率
8:2

3.機種別比率

<2WD>
M:67% G:13%

<4WD>
M:14% G:6%

4.人気ボディカラー
1位:スターリングシルバーメタリック 20%
2位:ミントブルーメタリック 17%
3位:ホワイトパール 15%
4位:ホワイトソリッド 14%
4位:ブラックマイカ 14%
5位:ナチュラルアイボリーメタリック 9%

5.メーカーオプション装着比率(Gのみ)
1位:先進安全パッケージ(PKG1) 19%
2位:先進快適パッケージ(PKG2) 5%

6.ユーザー層
60歳以上が56%を占めており、万が一に備えて、安全装備を重視するお客様のご購入が多くなっております。

5ヶ月弱で3421台とは少ない気がしますが、半導体不足による納車遅延の影響もあるでしょう。これだけだと深刻に感じますが、これはeKワゴン単独で見るからであって、たぶん同じシリーズのデリカD:5顔にして価格帯も上であるeKクロスのほうが売れているでしょうから全体では問題ないと思われます。

ホッとしたのは、eKワゴンの場合は、価格の高いGよりも安いMのほうが、販売比率の8割超を占めている点です。

これまでリアル試乗で採り上げてきたクルマは、シリーズの中で最上級機種がいちばん多く売れているので、メーカーに確認したのですが、Mのほうが売れているのだと。

GとMとでは、もともと装備差が少ないeKワゴンですが、空調がマニュアル式に格下げとなっても、エンジンスタートがボタン式ではない従来型のキー挿し式になっても、実際の使用頻度がそれほど高くはなさそうなレーダークルーズコントロールが選べなくてもMのほうが売れているとは、あれもこれもと求めることのないユーザー思想を反映しているようで、なかなか堅実な売れ方をしている点に好感を持ちました。

なお、筆者は、ハンドルロックも電気式となるボタンスタートは、走行中のハンドルロック誤作動を恐れているのでキー式がいいと思っています。

シルバーカラーは手入れが楽といわれていますが、これまたユーザー層と車両キャラクターを反映するように、色の1番人気はスターリングシルバーメタリックときました。

筆者は写真で見て、どのクルマもいちばん営業車臭が漂ってつまらない色と思っているのがシルバーなら、いざ実車を見て「けっこういいな!」と心変わりするのもシルバーなのですが、このeKワゴンのシルバーも深みとツヤがあり、肉眼で見るとなかなか魅力的な色でした。

2番手のミントブルーメタリックはともかく、意外だったのはパール塗色のホワイトパールが3位なことで、ユーザーイメージに反して余分な金額を払ってでもパール塗装を好む層がいるとは想定外。

数が少ないGにのみ用意される2種の先進パッケージオプションは、なお選択率が低くなっています。片やデジタルルームミラー+マルチアラウンドモニターをまとめた先進安全パッケージ(PKG1)、他方マイパイロットや電動駐車ブレーキなどをくくった先進快適パッケージ(PKG2)。

俗に軽自動車は近隣までの買い物、駅までの送り迎えといった、1日せいぜい往復20km以内といいます。となると、高速路を使って県外に行くこともまれでしょう。

全体の13%しか売れていないGの中のたった5%と、ことのほか低い選択率こそ、いかにもeKワゴンが軽自動車の典型な使われ方であるかを示しているように思います。そして使うか使わないかわからないようなものには手を出さない…ここにも堅実な買われ方であることが現れているように思えます。

eKワゴンの購入を検討中の方、この販売動向があなたにとってベストなeKワゴン選びの参考になればありがたいと思います。

★メーカーコメント
132万5,500円(消費税10%込)からのお求めになりやすい価格で、サポカーSワイド対応の高い安全性を備えており、安心してお乗りいただける1台です。また後席足元スペースをはじめとする広い室内スペースと、数多く配置した収納スペースなどにより、便利にお使いいただけます。

●エピローグ

実際に会ったこともないくせに、テレビの料理番組や雑誌で見かけるや「おっ、土井先生!」と筆者が勝手に「先生」をつけて慕っている、料理研究家の土井善晴さんは、最近「一汁一菜」を提唱しています。一汁一菜…「いちじゅういっさい」と読み、国語辞典で調べると「汁もの一品とおかず一品。質素な食事のたとえ」と出ています。

土井先生の掲げる「一汁一菜」は、「毎日の食事に何も凝ったものは要らない。ごはんとみそ汁があり、おしんこさえあればそれで充分なのです」という考え方です。

その代わり、みそ汁には何でも入れてしまいましょうとしています。

定番の豆腐、油揚げのほか、野菜、きのこ、肉、海藻、卵…とにかく自由に具だくさんに。組み合わせもお好きなように。テレビで多彩なバリエーションを写真紹介していたことがありますが、普通なら入れないトマトやベーコンを入れるものがあれば、お椀の縁にトーストを立て掛けたものまでありました。要するに、あれもこれもと入れて、みそ汁ではあるものの汁そのものはほどほどにし、お椀からあふれんばかりの具だくさんにすれば、それ自体りっぱなおかずにもなるというわけ。

お話戻ってeKワゴン。

特に大きな特徴もなく、ひとまず走ればいいというクルマのことを「ゲタ代わり」と称し、自動車メディアは「つまらない」と評価することが少なくありません。

今回のeKワゴンも、他のクルマを選びたくなるような大きな欠点が見当たらない代わりに、「これ買おう!」と思わせる決め手が見つからないクルマです。

しかし、よく考えてみると、90年代あたりまでの、ほんとに「ゲタ代わり」でしかなかったアルトやミニカの安モデルと比べれば、パワーウインドウはあるわ、自動ブレーキを筆頭とする安全デバイスはあるわ、エアコンはオートであるわ、オプションながらアダプティブクルーズコントロールはあるわ…時代の違うクルマと比べるのは無意味ですが、装備レベルはひと昔前のクラウンを超え、安全デバイスの面については以前のディアマンテやデボネアもしっぽ巻いて逃げるほど(eKワゴン試乗第4回)。よく見れば時代に即したあれもこれもがきちんと備えられていて、不足な点は何ひとつないことがわかります。

見たり乗ったり走らせているうち、土井先生の「一汁一菜」のみそ汁を思い出し、そのクルマ版がeKワゴンじゃないかと思うに至ったわけです。

筆者も1~2度、「一汁一菜」を試したことがありますが、「何だ、この程度でも充分おなかいっぱいになるじゃないの」と思ったもの。eKワゴンだって見た目に華やかさがなくても、必要な機能は「具だくさん」に備えられていて、これ1台あれば満足できる・・・こじつけの感はあるでしょうが、やはり一汁一菜のみそ汁。

見た目に派手さはないが、それだけに盗難の率だって少ないのがいい。クルマで目立ちたくないというひとにはうってつけなクルマだと思う
見た目に派手さはないが、それだけに盗難の率だって少ないのがいい。クルマで目立ちたくないというひとにはうってつけなクルマだと思う

何だか今回、食の話を引き合いに出すのが多くなっていますが、私たち自動車関連メディアの人間が喜んだり悪ふざけしたりしながら褒めそやし、持ち上げるような決して「すごいクルマ」ではありません。際立った特徴があるわけでもない。だからといって送迎、買いものといった日常の足として使うとき、これでいったい何に困るというのか。

ユーザー層は60歳以上が多いとのことですが、家族の駅までの送迎、あるいは孫の学校や習い事の送り迎えといった何ていうことのない日常を、さりげない姿で走りまわるeKワゴンの姿が目に浮かびます。

とはいえ、クルマは商品である以上、売れなきゃ困るのがメーカーなら、どうせ安くはない金額を払うならいいものにありつきたいと思うのが客。「これがあるから売れた!」「これがあるから買った!」と、造る側(と売る側も)と買う側の双方が幸せになるeKワゴンだけの機能、特徴があればなあと思うのも事実です。別に「すごい!」と思わせるものでなくてもよろしい。

しつこいが、リヤシートスライドはぜひ前席ギリギリまで
しつこいが、リヤシートスライドはぜひ前席ギリギリまで

例えば、何度も書いた、前席スレスレにまで迫るスライド機構もそのひとつ。

ほかには、これも過去に何度か書いていますが、灰皿があるとありがたい。それもできるだけ大きいやつ。「この禁煙・嫌煙時代に!」というなかれ。クルマの灰皿は、小銭や折ったお札を入れるには実にちょうどいいのです。灰皿型の引き出しポケットでもいい。

いまやETCがあるとはいえ、コイン式駐車場やマクドナルドのドライブスルーなど、窓からお金のやりとりをする機会がなくなったわけではありません。

そのようなとき、いちいちシートベルトを外してポケットから財布を取り出さなくてはならない。スッと引き出すだけで中の小銭が取り出せる従来の灰皿or引き出しがインパネ中央あたりにあればどれだけありがたいことか。禁煙時代だからと短絡的に灰皿をやめるのではなく、機能を置き換えて継続させればいいのです。喫煙者は灰皿として使えばいい。

また、最近のクルマは、降車してドアロックすればドアミラーがたたまれるようになっていますが、ここにもひとつ機能を加えられないか。

昔むかしのフェンダーミラー時代は、降車時、後ろからのクルマや自転車、歩行者の有無をフェンダーミラーで確認しながらドアを開けることができました。ドアミラーだと、ドア開に応じてミラーはあさってのほうを向いてしまいます。

振り向いての目視が原則ではありますが、どうせ降車後のドアロック時まで電源が来ているなら、ドア閉で一気にたたむのではなく、運転席側だけでもドア開度に応じてミラーを少しずつ格納側に動かし、常に後方を写す角度に維持するロジックを組み込めば、ずいぶん利便性は上がると思うのです。

これらひとつひとつは大したことはなく、灰皿式引き出しもドアミラーロジックも日ごろ筆者が抱いている素人アイデアに過ぎませんが、どのクルマも忘れたり見落としたりしている点でもあります。

他にはないアイデアの採用が注文書にハンを押させる動機になることだってあるでしょう。初代や2代目の「プチごみ箱」、初代の「スクレーパー」、初代からいまなお続くドア内張りの「車検証入れ」など、もともとeKワゴンは他にはないアイデアを投入していたクルマなのだから、あとひとつふたつ加えてオリジナルを推し進めてみたらと思うわけです。

今回、4代目に乗っている間、初代、2代めeKワゴンをよく見かけました。発売からそれぞれ約21年半、16年半経っているにもかかわらず、です。同年代の軽自動車を見かけることはなく、それだけ愛着を持たれている証拠です。

その初代、2代目の三菱オリジナルeKワゴンを知る目には、3代目もこの4代目も他のクルマの中に埋もれがちなクルマに映ってしまうことは否定できません。日産との協業・NMKV開発により、自社ブランド「eKワゴン」の開発を三菱単独ではできなくなったことが大きいでしょう。

ゆえにいまのeKワゴンからは独自性は薄れ、キャラクターは変貌してしまったわけですが、現代的ベーシック軽の要件はしっかり満たしています。

ベーシック軽の本流がアルトなら、その背高版の称号はワゴンR…ではなく、eKワゴンに与えていいのではないか。そう思わせるeKワゴンでした。

eKワゴンを三菱のクルマとして見たらいいのか、日産のクルマとして扱うべきなのか、最初から最後まで迷いっぱなしのまま進めてしまいましたが、eKワゴン試乗、燃費の報告で幕とします。

(文:山口尚志 写真:三菱自動車工業/モーターファン・アーカイブ)

【燃費報告】

燃費計測のために行った給油は、最初のスタート給油を除き、今回も都合上2回でした。スタート給油ですべての走行を賄い、走行後の給油で燃費計算をしなければならないのですが、思ったより減ってしまったので1回増えてしまったわけです。

この途中給油でまいった、おまぬけ話があるのでご参考に。

燃料残量警告発令! このとき、前回給油から334km走行
燃料残量警告発令! このとき、前回給油から334km走行
このとき航続可能距離は「61km」を表示。燃料残量を示すバーグラフは、このまま赤ゾーン内で減量していくのかと思ったのだが・・・
このとき航続可能距離は「61km」を表示。燃料残量を示すバーグラフは、このまま赤ゾーン内で減量していくのかと思ったのだが・・・

最初のスタート給油から334km走行時点で燃料残量警告ランプが点灯しました。この時点で航続可能距離は61km程を表示していたからと、試走と撮影を続行したのがまちがいの元。ランプが点いたこともあり、撮影を早々に切り上げてガソリンスタンドに向かう最中、燃料計のバーグラフが赤ゾーン内で減っていくのかと思いきや、354.5km時点でバーがいきなり消えた! そのようなときに限って、入ろうとしていたスタンドが閉鎖しており、全身ビクビクさせながら他を探し、やっとスタンドにありついたのは、そこから3.5km走った後の358.0km時点、給油量は27Lタンクに対して22.37Lでした。

やっぱり表示はゼロだった。
やっぱり表示はゼロだった。
この写真はヒヤヒヤ給油時のスタンドで停止時に撮ったものだが、さっきの「61km」は何だったんだ? 話が違う! で、燃料計を拡大表示すればいくらか残量を示すかと思って切り替えたら・・・
この写真はヒヤヒヤ給油時のスタンドで停止時に撮ったものだが、さっきの「61km」は何だったんだ? 話が違う! で、燃料計を拡大表示すればいくらか残量を示すかと思って切り替えたら・・・

つまり、限りなく空っ欠の状態だったのかと思いきや、タンク内にはまだ5L弱の燃料が残っていたわけです。ここで燃料残量を一気に消してしまうのはちと乱暴な気もするのですが、そもそも点灯したらまずはスタンドに向かうべきところ、おおよその数字とわかっていながらも作業を続行したこちらが悪いわけで、まあ、よくいわれることですが、燃料残量が「E(empty)」に近づいたらさっさと給油に向かいましょう。

■1回め給油
★燃費:16.0km/L(カタログ燃費:21.0km 〔WLTC総合〕)
★走行距離:358.0km(給油量・22.37L)

【経路内訳】
一般道:東京都練馬区~新宿区~江東区、群馬県前橋市、高崎市内
高速道:
首都高11号台場線・台場IC~都心環状線C1左まわり~5号池袋線・早稲田IC 計13.6km
関越自動車道・練馬IC~北関東道・前橋南IC 計88.1km
関越自動車道・前橋IC~沼田IC 計34.2km
関越自動車道・沼田IC~前橋IC 計33.3km
山間道:
赤城山 計9.5km(雪のため、中腹までの往復で途中退散)
高崎観音山1往復 3.1km

■2回め給油
★燃費:19.16L/km
★走行距離:119.0km(給油量・6.21L)
一般道:群馬県高崎市内、前橋市内、東京都練馬区 計30.8km
高速道:北関東道・前橋南IC~関越自動車道・練馬IC 88.2km

■1回め+2回めのトータル値
★燃費:16.7km/L
★総走行距離:477km(総給油量・28.58L)
★試乗日:2023年1月28(土)~29(日) 期間中、晴れ。クーラーほとんどOFF。アイドリングストップは1/3ほどはOFF(停車時でもエンジンストップしない)

【所感】
毎回、他のクルマのときとだいたい同じアクセルワークで走ったつもりだが、にもかかわらず、1回め給油のカタログ燃費達成率は約76.2%で、カタログ値からの乖離が2割減を超えた約75%ちょいなのは残念。2回め給油はいきなり上昇して約91.2%に。トータルではWLTC総合に対して約79.5%と、まあ常識的な2割減と相成った。

高速路では80~100km/hの範囲内で巡航、タイヤ圧は規定値(前後とも2.4kg/cm2)だったが、常時4WDであることによる機械ロスの影響があるのかも知れないと推測している。これが4WDでなければどう変わるのか、別の機会に2WDのeKワゴンで試してみたい。

なお、試しに高速走行ぶんだけの燃料消費量を、数字動かしで算出してみたら、WLTC-L(高速モード)値の21.5km/Lに極めて近い約20.6km/Lとなり、カタログ値に対して約95.8%の達成率となった。

【試乗車主要諸元】

■三菱eKワゴン G〔5BA-B36W型・2022(令和4)年型・4WD・CVT・スターリングシルバーメタリック〕

●全長×全幅×全高:3395×1475×1670mm ●ホイールベース:2495mm ●トレッド 前/後:1300/1290mm ●最低地上高:155mm ●車両重量:900kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:BR06型(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:659cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:52ps/6400rpm ●最大トルク:6.1kgm/3600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射 ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/22.7/21.5km/L ●JC08燃料消費率:24.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トルクアームリンク式3リンク ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格154万0000円(消費税込み)