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■コルベットがハイブリッド化、ゼロヨン10.5秒
北米生まれのスポーツカー、スーパーカーの象徴は「シボレー・コルベット」でしょう。アメリカン・マッスルカーといえば、大排気量のV8エンジンで豪快に走るというイメージを持っている方も多いかもしれません。
そんなコルベットが、ついに電動化に踏み切りました。『E-Ray』と名付けられたコルベットは、リヤを6.2L V8エンジンで、フロントを電気モーターで駆動する電動AWDモデルとなりました。
電動化システムの分類でいうと、パラレル式ハイブリッドになったというわけです。
それまでFRレイアウトをアイデンティティとしていたコルベットですが、現行型ではキャビンの後ろにエンジンを積むミッドシップ・レイアウトに大変身したことは大きな話題となりました。
エンジンがなくなったフロントにモーターを配置する電動AWDパワートレインですから、ミッドシップに変身したときから計画されていたということでしょう。
そのパフォーマンスは、コルベット史上最速といえるもので、0-60マイル(0-96km/h)加速は2.5秒、1/4マイルのタイムは10.5秒という超俊足です。
それでいながら、V8エンジンには気筒休止機能を持たせているほか、フロントモーターだけで走行する”ステルスモード”を用意するなど環境対応もしているのですが、いまどきのハイブリッドスポーツカーらしところといえるでしょうか。
さらにコルベットらしいと感じるのはボディバリエーションです。
2023年後半の発売を予定しているコルベットE-Rayには、クーペとコンバーチブル(屋根開きバージョン)が設定されるということです。
●リヤはV8エンジン、フロントは電気モーター
あらためてエンジンとモーターなどパワートレインに関するスペックを整理してみましょう。
●エンジン
型式:LT2 6.2L V-8 VVT
ボア×ストローク: 103.25 x 92mm
最高出力:369kW/6450rpm
最大トルク:637Nm/5150rpm
潤滑システム:ドライサンプ
●モーター
最高出力:120kW
最大トルク:165Nm
●バッテリー
種類:リチウムイオン電池
総電力量:1.9kWh
●ボディサイズ
全長:4699mm
全幅:2025mm
全高:1235mm
ホイールベース:2722mm
なお、バッテリーは外部充電には対応していません。通常のハイブリッドカーのように減速エネルギーなどにより発電、充電する仕組みとなっています。
●システム最高出力481kW、価格は10.5万ドル
ところで、ミッドシップにV型エンジンを積み、フロントをモーターで駆動するハイブリッドスポーツカーは、コルベットE-Rayが史上初…というわけではありません。
ご存知のように、ホンダNSXがミッドシップに3.5L V6ツインターボ、フロントに左右独立モーターを積むハイブリッドスポーツカーとして存在していました。さらにいえば、NSXはリヤにもシングルモーターを積んでいる3モーターでしたから、より凝った電動ミッドシップ・スーパーカーだったといえるでしょう。
そこには様々なマイナスポイントもありました。フロントがダブルモーター故に、ラゲッジスペースはまったく確保できていませんでしたし、車両重量も1790kgとかさんでいました。なにより価格が高くなっていました。最終仕様であるタイプSの日本価格は2800万円近かったのです。
NSXと比較すると、コルベットE-Rayはそうしたネガを解消している新時代の電動ミッドシップ・スポーツカーといえます。北米での価格は、クーペが10万4295ドル、コンバーチブルが11万1295ドルと、内容を考えるとリーズナブルです。
フロントを駆動するモーターを小型にしたことで、フロントのトランクスペースも確保しているといいます。車両重量にしても、V8エンジンを積んでいながら1712~1749kgの乾燥重量に抑えています。
さらに電動パワートレインのパフォーマンスを示す指標である、システム最高出力は481kWです。NSXタイプSのシステム最高出力が449kWでしたから、1割増しのパフォーマンスを期待できるというわけで、コスパに優れた電動ミッドシップ・スポーツカーの誕生といえそうです。
NSXタイプSは日本向けは30台限定でしたから、欲しくても買えなかったという方は少なくないでしょう。ホンダのスポーツフラッグシップとしてのNSXではなく、2020年代にふさわしい電動ミッドシップ・スーパーカーが欲しいというユーザーにとっては、リーズナブルなコルベットE-Rayは大注目かもしれません。