新型「アトレー」はバンでも乗用車感覚! 運転席から後席まで室内を徹底チェック【新車リアル試乗6-7 ダイハツアトレー 運転席まわり編】

■商用車とは名ばかり。乗用ユースに耐える実用のほどはいかに

main 1
ひなのさんと見ていきましょう

今回はアトレー内外の詳細を見るユーティリティ編です。

今回のアトレーにはどんなユーティリティが採り入れられているのか、あちらこちらを見ていきましょう。

●運転席から

・インストルメントパネル

instrument panel
インストルメントパネル

パネルのどこを叩いても厚みの感じられる造り。第1回の試乗記事でも書きましたが、全体が低く抑えられており、視界がすっきりしています。

第1回ではトラック的と評しましたが、写真を見ると全体的に角ばっているからなのかもしれません。しかしヘンにカーブしていたり、妙な曲線、曲面があったりするよりはずっとましで、ひとによっては直線的であることを利用して車幅間隔をつかむのにいいというひともいるほど。

かつてのランドクルーザーは、道なき道を、空を向いたりうつむいたり、ときには横に傾きながら這いずりまわるというクルマの性格上、計器盤はシャキンッ! と横一直線にしていたものでした。

・メーター

meter 1
スイープ作動中のメーター
meter 2
通常時

速度計を左に、エンジン回転計を右に、その間に縦長マルチインフォメーションディスプレイを置いた、加飾の少ないデザインをしています。

エンジンをONにするや、ランプ点灯~指針がいったんフルスケールまで振り切れた後(スイープ機能)、順次ランプが消えるとともに液晶がじんわり表示されるというもの。筆者からすればこの遊びは邪魔で、エンジンをかけたらすぐにアイドル回転を指してほしいし、液晶で燃料をすぐに示してほしく、余計な間(ま)でしかありませんでした。

何よりも困ったのは、すべてのタイミングが合わず、液晶、ランプ、ハザードすべてが点灯する瞬間が1秒もなく、全点灯状態の写真を撮るのが不可能だったことなのだ!

・マルチインフォメーションディスプレイ

mid 1 furl efficiency of average and cruising distance
平均燃費/航続可能距離表示

ハンドル左のスイッチで、平均燃費/航続可能距離、平均速度/走行時間、アイドルストップの時間/積算時間、時計/外気温、アダプティブクルーズコントロール作動状態などを、ハンドル左スポーク上のスイッチで切り替えながら表示。インフォメーション部は切り替えで変わっても、底部の燃料計やシフト位置表示などは常時変わりません。

その中にあって、燃料計下の積算距離、区間距離A、区間距離Bが切り替え表示なのが不便極まりなく、積算距離と区間距離計は2段にして常時表示するのが本当だと思います。

・ステアリングホイール

steering wheel
3本スポークステアリング

3本スポークのウレタン仕立てで、筆者実測でハンドル径は370mmでした。

電動パワーステアリングはタイヤの減りが早まるのではないかと心配するほどアシスト量が大きめです。

チルト機構を省いたので上下調整は不可。ハンドルパッド面が上を向き気味なので、運転姿勢はトラック的。できればチルト機構はあったほうがよろしいかと。

・ワイパー/ウオッシャースイッチレバー

lever swotch wiper
ワイパー&ウォッシャースイッチレバー

最近、「OFF」「INT(間欠)」「LO(低速)」「HI(高速)」といった文字表記ではなく、わかりにくいマーク表示になのはいかがなものかと思っているのですが、操作法は変わらず、OFFから下に向けるにつれ、間欠、低速、高速作動し、上に上げている間は低速作動。手前引きでワイパー連動でウォッシャー液噴射。

噴射は1個のノズルから3方向に飛び出すものでした。

・方向指示/ライトスイッチレバー

lever switch light
ターンシグナル& ライトスイッチレバー

ターンシグナルは、他の一部メーカーでも採用している、操作したら何が何でも元のレバー位置に戻りたがるロジック。

上下ドン突きで左右方向指示、途中ワンタッチで3回点滅のレーンチェンジャー。誤って点滅させた、または点滅を中止したいときはレバーを逆側の途中ワンタッチ位置に操作…操作してもレバーを定位置にしたがるワンタッチ式はしっくりこないのと、中止操作がメーカーによってまちまちなので筆者は嫌いなのですが、アトレーに乗っている間は慣れてしまいました。

ただ、ダイハツ車だけに乗っているひとはいいでしょうが、他メーカー車と併用しているひと、ダイハツユーザーが他人のクルマに乗ったとき、他社ユーザーが他人のダイハツ車に乗ったときなどは戸惑うことになるでしょう。姿は同じなのに触れば違うというのは感心せず、これならいっそ見た目も変わる、昔のピアッツァやR32スカイラインのようなサテライトスイッチにしてくれたほうがまだ納得がいくというもの…ライトやワイパーなど、メーカーを超えてオーソライズされている操作法は変えるべきではないというのが筆者の持論です。

・エンジンスイッチ

engine switch
エンジン停止時、押したら直接ACCにもなるようにしてほしい

シフトレバーP、ブレーキペダル踏みの1回押しでエンジン始動。Pのときに押せばエンジン停止、P以外で押すとエンジン停止&ACC(アクセサリー)。

エンジン停止状態でブレーキペダルを踏まずに1回押しするとACCになりますが、これが1時間以上続くとOFFになります(自動電源OFF機能)。また、走行中の緊急時は3秒以上長押しするか、素早く3回以上押すとエンジンが緊急停止します。

OFFへの操作がON→ACC→OFF(LOCK)となるキー操作なら必ずいったんACCになるように、ボタンを分割するなどして、エンジンON→OFFのほか、シフトPのままエンジンON→ACCにもなるようにはできないのかな。

・キーフリーシステムの携帯リモコン

key free system we
ダイハツマークがロックボタンなのが使いやすい

施錠、解錠が別々のボタンになっていること、ましてやダイハツマークが施錠ボタンになっており、ポケットに入れたまま手さぐり指さぐりで確実に操作できるのがありがたいデザインです。

落ち着きのないB型の筆者などは、ドアを閉めるやドアハンドル下のボタン(リクエストスイッチ)を押すより早く歩き出すほうなので、クルマから離れながらリモコンボタン押しをしていました。

<ウェルカムドアロック解除機能>

クルマの向こうに悪党がいたら勝手にドアを開けられないかなと心配しながらも、使ったら使ったで便利だと思ったのがウェルカムドアロック解除機能。リモコンキーを携帯しながらクルマの解錠範囲(ドアミラー周囲約1.5m以内)に入ると、自動で全ドア解錠するというものです。

予約(と説明書には書いてある)の操作は簡単で、降車後、リクエストスイッチ押しかリモコン操作でロックし、解錠範囲から出て約5秒後に予約完了。

筆者は会う約束をした相手が連絡もなしに指定時刻に遅れたなら、そこから5分だけ待ち、とっとと帰りますが、このアトレー君はロックから何と約5日間もご主人様を待ち続けてくれます。5日を過ぎるとアトレー君はエンジンをかけて勝手にひとりで帰ってしまう…のではなく、予約をキャンセルします。忠犬ハチ公の10年よりは短いですが、それにしても気が長いねえ。

・シフトレバー

shift lever
CVTシフトレバー

PRNDSBの6ポジション式CVT。フロアATでの形そのままにインパネ垂直面に移したインパネシフトは、使いにくいので筆者はあまり好きではないのですが、アトレーの場合は操作力が軽いのが奏功して使いやすいと思いました。

DからSへはサイドボタン操作が不要なので、下り坂走行でエンジンブレーキをかけるにはレバーを手でかぶせて上から叩くだけでよかったのがいい。SからBへはさすがにボタン押しが必要です。CVTでの走りの感触はアトレー試乗第2回で。

・足元スペース

foot space
意外と狭さを感じさせない運転席の足元スペース

前輪のホイールハウスが室内に侵食…というよりも、エンジンが前席下にあるゆえ、クラッシャブルゾーンをわずかに残してキャビンを前輪にかぶさるほど前進させたため(だからセミキャブオーバーなのですが)、ペダルはホイールハウスの真横に位置しています。

いまのエブリイにも同じ印象を抱いたのですが、感心したのは、見た目とは裏腹に、足元にちっとも狭さを感じさせないことです。同時に、ハンドルと正対してもペダルが左寄りになっていない点にも感心しました。

でもインパネ写真をよく見るとハンドルの右側は、通常の軽自動車よりもスペースがある…命題だった荷室拡大の成り行きによる前席スペース拡幅はあるにしても、同時にハンドルもペダルもドライバー位置も、車両センター側にいくらかオフセットさせているのかも知れません。

・ETCユニット

etc unit
ETCユニット

インパネの、運転席左ひざあたりに設置。

専用スペースを設けてくれたので、カッコ悪くユニットをどこかに両面テープかブラケットで固定しなくてもいいのはありがたいのですが、いかんせん位置が低く、運転姿勢ではETCカードが入れにくいことこの上なかった! ユニット本体上部とインパネのすき間に入りそうになること多数。

外から見えず、かつ出し入れしやすいという絶妙な位置はどっかにないかな。

・運転席右側のスイッチ群

switch groop right
ハンドル右のスイッチ群

エンジンスイッチ右にはパワースライドドアのメーンスイッチと左右ドアの開閉スイッチ。大きめで操作しやすいのが美点でした。

その下は右グループ4つが安全デバイス関連で、左上から時計回りにスマートアシストOFF、VSC TRC OFF、eco IDLE OFF、コーナーセンサーの各スイッチ。低い位置にズラリと並んでいるだけなので、使用頻度が少ない(ものであるべき)とはいえ、ちょいと使いづらいと思いました。

除け者にされたように左にはみ出ているのはリヤヒータースイッチです。

・ルームミラー

rear view mirror 1
ルームミラーは、試乗車はオプションのスマートルームミラーだった。
rear view mirror 2 stay
鉄製のがっちりしたL字型ステー

このクルマにはオプションのスマートルームミラーがついていました。

スマートミラーの場合だけなのか、通常のコンベンショナルなミラーも同じなのか。試乗記にも書きましたが、ミラー位置が高すぎて顔ごと上に向けなければならないなのが困りました。そのときは前方から目を離さざるを得なくなる。

裏を覗けば、液晶型で重いゆえなのか、がっちりした鉄のL字型ステーによる1ピボット式で、いくらかでも上下調整できる2ピボット式でもありませんでした。もうちょい下げてくれぇ~。

・LEDルームランプ(フロント)

ルームランプは、OFF-DOOR-ONの3ポジション式のLEDタイプ。白い光のせいでちょっと暗く感じました。

前項ルームミラーの写真を見るとそうは見えないのですが、ミラー位置の高さはランプスイッチの操作もしにくくしていました。ミラーとランプが近いのと、ランプスイッチが向こう側にあるためです。その意味でもルームミラーは下に下げてほしいと思います。

・大型LED荷室灯

フロント側も含め、LEDにしたおかげか薄型にできており、見た目にスマートな仕上がりです。フロント用と等しく3ポジションですが、ON-OFF-DOORとなり、順序がちょっと違っています。できれば運転席からも操作できるスイッチがほしいと思いました。

それにしても名称に違わない、本当に「大型」のサイズで、「走る応接間」といわれた頃のフルキャブ1BOXのシャンデリア風ランプを彷彿させるものでした。

●電源ほか端子各種

・アクセサリーソケットと2種類の端子

power outlet 1 12v socket and hdmi and usb port
DC12VアクセサリーソケットとHDMI端子、USBポート。ふた開き状態
power outlet 1-2 12v socket and hdmi and usb port
ふた閉じ

前席がわにはDC12Vの10A、ということは120Wのアクセサリーソケットがひとつと、その右にはUSB端子が標準装備。9インチディスプレイオーディオを装着した場合はHDMI端子もセットでついてきます。

USBはあくまでも接続した機器との通信用。いま流行りの充電用USBは見当たりません。

・トランクの電源

power outlet 2-2 dc12v socket
ふた閉じ
power outlet 2 dc12v socket
12Vソケットは、荷室右サイドにもある(RSのみ)。ふた開

荷室右サイドにはRSのみ、フロント用と同じ容量のアクセサリーソケットを装備。カタログ写真ではipadの充電に使っています。

●ドア内張り

door trim 1
がっちりした造りが好ましかった

自動車メーカー間で申し合わせしたかのように、最近のクルマの内張りには布を貼ることが少なくなりました。したがって上から下までオールプラスチック。ちょいと淋しいような気がしますが、アトレーは押してひしゃげたりゆがんだりすることのない、なかなかがっちりしたドア内張りになっています。

・ドアハンドル&ドアロックノブ

door trim 2 handle and lock knob
親会社がトヨタの割には、施錠状態でもハンドルを引くと全ドアが解錠されるという、日産車流儀を採っている

いまやあたり前ですが、ドアハンドルとロックノブを並べてレイアウトしています(車上荒らし対策)。

ありがたいのは、運転席のドアハンドルは施錠状態でも引けば解錠されてドアが開くのと、なおありがたいのは、親会社のトヨタ車と異なり、同時に他の全ドアも解錠される点です。「防犯上どうの」という意見はあるでしょうが、運転席から降りて後席に置いた荷物を取りだすとき、リヤドアがすぐに開けられるか開けられないかは、利便性の上では大違い。筆者は賛成派です。

・パワーウインドウスイッチ&電動ミラー調整スイッチ

door trim 3 switch
パワーウインドウは前席のみ

パワーウインドウは前2席のみ。従来パワーの昇降式だったスライドドアガラスが押し出し式に変わったためです。

運転席はAUTO開閉、挟み込み防止機能、タイマー付きで、エンジン停止後、約40秒間開閉可能。以前の日産車みたいにいっそ15分にしてくれたらいいのに。

その前方には電動ミラースイッチが。上下左右の調整ノブは左右切替にもなっていて便利ですが、どうせなら電動格納スイッチも調整ノブに一体化し、ノブごと押して「格納」、再押しの飛び出し戻りで「復帰」にすればスペース節約になるのに。どうせ格納状態で鏡面調整するヤツはいないのだから。

・???

door trim 4 pull handle
つかむ部分が長いのは、ドアを閉めるときありがたい

取扱説明書にもカタログにも正式名称がないので「???」にしました。

パワーウインドウスイッチの後ろのこの空間。普通に考えればもの入れを兼ねた、ドアを閉める際のハンドルでしょう。

注目はこの長さで、筆者はこれをデザイナーの良心と信じたいのですが、つかんで閉めるには非常に実用的なのです。ドアヒンジ(支点)からつかむ部分(力点)が遠ければ遠いほど軽く操作ができる…つまり軽くドアが閉められる道理で、こんな簡単な物理の法則を無視し、前方側に小さな取っ手をつけるにとどまるクルマがいかに多いことか! ドアをいっぱいに開いたときゃあ遠くなって、どうせ手は届きゃあしないよというのもあるかも知れませんが…

・ドアハンドル&ドアロックノブ(スライドドア)

door trim 5 silide door
スライドドアの内張り
door trim 6 silide doo handle and lock knob
ハンドルは写真手前がわにまわして開き、向こう側に押して閉じるが、電動スライドなので実質ただのスイッチだ

めったに見ないでしょうから、ついでにスライドドアの内張りも載せておきます。

ガラスは直接手動で押し出すポップアップ式なので昇降機構はなし。よってレギュレーターハンドルもパワーウインドウスイッチもありません。あるのは開閉のハンドルとロックノブ、後で述べるボトル入れだけです。


載せたい項目はまだまだあるのですが今回はここまでにし、続きは次回ということに。

(文・写真:山口尚志 モデル:城戸ひなの)

【試乗車主要諸元】

■ダイハツアトレー RS(3BD-S710V型・2021(令和3)年12月型・4WD・CVT・レーザーブルークリスタルシャイン)

●全長×全幅×全高:3395×1475×1890mm ●ホイールベース:2450mm ●トレッド 前/後:1305/1300mm ●最低地上高:160mm ●車両重量:1020kg ●乗車定員:2名(4名) ●最小回転半径:4.2m ●タイヤサイズ:145/80R12 80/78N LT ●エンジン:KF型(水冷直列3気筒DOHC・インタークーラーターボ) ●総排気量:658cc ●圧縮比:9.0 ●最高出力:64ps/5700rpm ●最大トルク:9.3kgm/2800rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:38L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):14.7/13.3/15.7/14.7km/L ●JC08燃料消費率:19.0km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トレーリングリンク車軸式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格182万6000円(消費税込み・除く、メーカーオプション/ディーラーオプション)