2025年に受注開始。ソニーとホンダがジョイントして目指す「AFEELA」の新世界とは?【週刊クルマのミライ】

■ソニー・ホンダモビリティの新ブランド「AFEELA」発表

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CES® 2023」にて新ブランド「AFEELA」(アフィーラ)とプロトタイプを発表する、ソニー・ホンダモビリティ代表取締役 会長 兼 CEO 水野 泰秀さん

2020年代は自動車産業の大変革期「CASE時代」といわれています。コネクティッドやオートノマス(自動運転)といったテクノロジーの発展が期待されていますし、すでに電動化は大きく進んでいます。

そんな変革の時代に向けて、日本を代表するブランドであるソニーとホンダが、協業で電気自動車の開発を進めているのはご存知の通りでしょう。

そのJV(Joint Venture)であるソニー・ホンダモビリティが、ラスベガスで開催されている見本市「CES 2023」にて、プロトタイプの初披露を行ないました。

一般には「ソニーカー」と呼ばれることも多い、本プロジェクトですが、ソニー・ホンダモビリティが生み出すモデルには『AFEELA(アフィーラ)』という新ブランドが使われることが、今回発表されました。

確かに、お披露目されたプロトタイプには、「AFEELA」というブランドネームが、フロントグリルやリヤガーニッシュに書かれていますが、SONYやHondaのロゴはパッと見には確認できません(化粧プレートにはソニー・ホンダモビリティの表記があります)。

ソニーカーではなく、あくまでソニー・ホンダモビリティの生み出す新しい自動車ブランドを立ち上げたと理解できそうです。

●3つのA(Autonomy, Augmentation, Affinity)がコンセプト

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移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張すべくEpic Gamesと協業開始したのもニュース

新ブランド「AFEELA」は、モビリティ体験の中心に在る”FEEL”を表したものということですが、FEELを挟んでいる”A”には、同ブランドのコンセプトが込められているといえます。

そのコンセプトが3つのA、「Autonomy」「Augmentation」「Affinity」です。それぞれ以下のような日本語表記が当てられています。

Autonomy:「進化する自律性」
Augmentation:「身体・時空間の拡張」
Affinity:「人との協調、社会との共生」

とくに協調・共生においては、パートナー企業との協業を重視しているのが特徴です。スマートフォンは、ユーザーが使いやすいようにアプリを入れて自分仕様にしていきますが、AFEELAのクルマも同様の使い方を想定しているといえそうです。

具体的には、Epic Gamesとの協業が発表されました。これにより、モビリティサービスおよびエンタテインメントの新たな価値創出を狙っています。

●従来の価値観では測ることのできない商品性を狙う

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プロトタイプの画像を見る限り、SONYやHondaといったロゴは確認できない。AFEELAという新ブランドで展開していくようだ

ソニー・ホンダモビリティが、AFEELAプロトタイプで目指したのは、新たなモビリティの価値基準の創出です。

CASE時代において、クルマの評価軸が大きく変わることは確実でしょう。動力性能やハンドリングといったパフォーマンスでクルマを評価するのは過去の話となり、これからはソフトウェア、ネットワーク、ユーザーエクスペリエンスこそが評価ポイントに変わっていくはずです。

そうした時代の転換点への提案が、AFEELAプロトタイプです。

前述したEpic Gamesとの協業も、移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張するための一環ですし、そうした空間をユーザーが享受するためには、自動運転レベル3以上で走れるようにならなければいけません。

その領域において、世界初の自動運転レベル3を量産したホンダや、車載カメラのスタンダードとなっているソニーのコラボレーションというのは意味があるともいえるでしょう。

●アフィーラ・プロトタイプ主要スペック

AFEELA
宇宙船を思わせるラウンドフォルムは、昨今のBEVトレンドからすると新しい提案だ

全長:4895mm
全幅:1900mm
全高:1460mm
ホイールベース:3000mm
駆動方式:AWD
乗車定員:5名
タイヤサイズ:Front: 245/40R21・Rear: 275/35R21
サスペンション形式:Front: ダブルウィッシュボーン・Rear: マルチリンク

先行受注:2025年前半
発売:2025年中
デリバリー:2026年春(北米)

公開されているスペックシートから想像できるハードウェアの特徴としては、ロングホイールベースの間に大容量バッテリーを置き、前後の駆動モーターがそれなりの出力を発揮すると想像できます。

しかし、システム出力や航続距離可能距離を云々するのは、AFEELAのコンセプトからすると本筋ではありません。はたして、どのような車内エンターテインメントを提案してくれるのか、そこに注目していきたいと思います。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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