伝説のお召し列車専用機関車「ロイヤルエンジン」EF58形61号機を鉄道博物館で常設展示

■お召し列車けん引のために製造された“ロイヤルエンジン”

鉄道博物館(埼玉県さいたま市)は、お召し列車専用機関車として製造され、90回以上もお召し列車をけん引したEF58形61号機を2022年10月30日(日)から常設展示することを発表しました。

鉄道博物館での常設展示が発表されたEF58形61号機(鉄道博物館プレスリリースより)

EF58形61号機は、60号機とともに国鉄がお召し列車専用機として指定して車両メーカーに発注されました。

両機は標準機と異なり、車体側面にもステンレス製の飾り帯を取り付けているほか、国旗掲揚装置を装備。足回り各部も磨き上げられるなど、お召し列車専用機の特別仕様となっていて、“ロイヤルエンジン”と呼ばれていました。

61号機は1953年7月9日に日立製作所で新製され、7月15日に東京機関区に配置されました。この年の10月19日には、松山国体の開会式に出席される昭和天皇・皇后両陛下が乗車したお召し列車を牽引しています。

製造時の61号機の塗色は、当時の客車と同じ茶色(ぶどう色2号)でしたが、1966年に御料車の暗紅色に近い「ため色」に変更して、特別感が高まりました。

1984年9月25日に運転されたお召し列車を牽引するために単機回送中の61号機

余談ですが、60号機はお召し予備機という位置付けで、浜松機関区に配置されていました。そんな60号機もお召し列車を5回牽引しています。60号機は1973年にお召し指定を解除。以後も標準機と共通で使用されていましたが、1983年に廃車されています。

61号機と比べて地味な存在だった60号機

特別感溢れる61号機でしたが、1980年代に入ると臨時列車やイベント列車の先頭に立つことが多くなり、ファンにも身近な存在となりました。

臨時特急「踊り子51号」を牽引する61号機(1983年)

1987年の国鉄分割民営化で、61号機はJR東日本に承継。引き続き臨時列車やイベント列車の牽引に活躍しました。

その一方で、お召し列車を牽引する機会は減少。2001年3月28日に天皇陛下とノルウェー国王が乗車した列車が最後となっています。

なお、61号機がお召し列車を牽引した回数は90回以上。これは電気機関車としては最多で、機関車としてみてもSLのC51形239号機の104回に次ぐ2位です。

余談ですがC51形239号機は京都鉄道博物館で保存されているので、歴代お召し列車牽引機が東西に保存されることになります。

京都鉄道博物館で保存されているC51形239号機

2000年代に入っても、61号機は数多くの臨時列車を牽引しました。61号機が使用される時は沿線に大勢のファンが集まり、その人気は衰えることはありませんでした。

臨時列車を牽引する61号機(2006年)

しかし、2007年9月の台車検査で不具合が見つかり、以後、列車を牽引することはなくなり、都内での単機回送やイベントで展示される程度になりました。

翌2008年4月1日に休車となり、以後は東京総合車両センターの車庫で保管され、屋外に姿を見せなくなりました。しかし、2010年と2018年に東京総合車両センターの一般公開イベントで展示されたことがありました。

2018年8月の東京総合車両センター一般公開で展示された61号機

鉄道博物館での常設展示が決まったEF58形61号機。SNSによると、9月18日未明に東京総合車両センターから大宮総合車両センターに陸送され、19日深夜に鉄道博物館に搬入されています。現在はシートをかけられた状態ですが、今後整備されると思われます。

今から10月30日の常設展示が待ち遠しいですね。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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