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■ムーヴキャンバスの歴史:女性をターゲットに2016年に誕生
ムーヴは1995年に登場しています。当時、スズキのワゴンRが高いユーティリティ性を備えるモデルとして大人気で、そのライバルとしてダイハツがムーヴを開発しました。1997年には男性客をターゲットとしたムーヴカスタムを追加し、人気をアップしていきます。
一方で、女性客にターゲットを絞ったモデルとしてムーヴラテを2004年に発売、2008年には同様に女性客メインのモデルとしてムーヴコンテを導入します。ムーヴラテは2009年まで販売されるので一部、販売期間がラップしていますが、ムーヴコンテはムーヴラテの後継モデルとみていいでしょう。ムーヴコンテは2016年末に生産を終了しています。
2015年に開催された東京モーターショーに、コンセプトカーの「HINATA(ヒナタ)」が展示されます。HINATAはムーヴをベースに観音開きドアを装備したモデルだったのですが、これをもとに初代のムーヴキャンバスが開発され、2016年に市場導入されます。
ムーヴキャンバスもムーヴコンテと一定期間、販売時期がラップしていますが、やはり後継車とみていいでしょう。
ベースとなったムーヴ、派生モデルであるムーヴラテ、ムーヴコンテはいずれも前後ヒンジドアを採用していますが、ムーヴキャンバスはリヤドアをスライドドアにしていることが大きく異なる点です。
2016年投入のムーヴキャンバスは6代目ムーヴがベースで、楕円のヘッドライトを用いたキュートなスタイリングが特徴。搭載されたエンジンは660cc、3気筒の自然吸気エンジンのみでした。
●ムーヴキャンバスの基本概要 パッケージング:低めの車高にスライドドアを採用
ムーヴキャンバスという名前から、ムーヴをベースとしていると思いがちですが、現行ムーヴは一世代前のDモノコックという名のプラットフォームを用いています。
ダイハツのプラットフォームはタントでDNGAという最新のものに置き換わっていて、ムーヴキャンバスはこのDNGAを用いているので、ムーヴベースというよりはタントやタフトの流れのなかにあるモデルといえます。
Dモノコック時代のホイールベースは2455mmですが、DNGAになってからは5mm伸びて2460mmとなっています。軽自動車なので全長は3395mm、全幅は1475mmと規格内いっぱい。全高はFFが1655mm、4WDが1675mmとなります。
ムーヴキャンバス最大の特徴と言えるのが、ムーヴシリーズには設定がなかった両側スライドドアの採用です。従来、スライドドアを備える軽自動車は全高が1700mmを超えるスーパーハイトワゴンもしくは商用バンベースのワゴンで、全高1700mm以下のハイトワゴンには存在しませんでした。しかし、車高1600mm台のハイトワゴンにもスライドドアが欲しいという市場の要望を受けて登場したのが、先代のムーヴキャンバスでした。
ムーヴキャンバスの登場によって、スズキはワゴンRにスライドドアを装備したワゴンRスマイルを2021年に市場投入。ダイハツは2022年にムーヴキャンバスを新しいプラットフォームベースのモデルに更新しフルモデルチェンジ。派生車でもムーヴとワゴンRは熾烈な競争を繰り広げているというわけです。
●ムーヴキャンバスの基本概要:メカニズム/ターボエンジンを設定、CVTも高効率タイプに
女性向けモデルということで、初代では自然吸気エンジンに絞ったラインアップとしたムーヴキャンバスでしたが、2021年に登場したライバルモデルのワゴンRスマイルはターボエンジンモデルも設定しました。2022年のフルモデルチェンジにあたってはムーヴキャンバスもターボエンジンを用意します。
ムーヴキャンバスのエンジンは、自然吸気が50馬力/60Nm、ターボが64馬力/100Nmというスペック。組み合わされるミッションは自然吸気、ターボともにCVTですが、ターボエンジン用のCVTはD-CVTとよばれる高効率のものとなります。
ダイハツではスマートアシスト(スマアシ)と呼ばれる先進安全機構のうち、衝突回避支援に関係のあるブレーキや車線逸脱、ふらつき警報などについてはグレードを問わずに装備されます。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はトップグレードのGターボに標準、セカンドグレードのGにオプション、ボトムグレードのXには装備不可となっています。
また使い勝手を高めるアイテムとして、クルマを俯瞰で見ることができるパノラマモニターもダイハツ車として初採用(オプション)となり、駐車時の利便性をアップしたほか、狭い道でのすれ違いなどでも安心して運転できるようになっています。
●ムーヴキャンバスのデザイン:かわいらしいストライプスとシックなセオリーを設定
先代のムーヴキャンバスは可愛いばかりが目立つモデルでしたが、新型では可愛いを継承した「ストライプス」と新たに上質で落ちついた雰囲気を与えた「セオリー」の2つのシリーズを設定しています。
ストライプスは、先代から受け継いだ楕円のヘッドライトデザインによって愛嬌のある表情を表現。ボディペイントを2トーンとすることで、丸みのあるボディをより強調する仕上がりとしています。インパネやドアインナーをホワイトで統一、ライトグレーのシートを用いることで明るくポップな内外装としています。
一方のセオリーは、同じ楕円のヘッドライトを用いながらもモノトーンのボディカラーとすることで、落ちついた雰囲気を実現。ウエストライン近くのメッキ調ストライプとサイドシルのメッキストライプが高級感を演出しています。
ストライプスではホワイトとされたインパネやドアインナーは、セオリーではブラウン、シートはネイビーとしていっそう落ちついた雰囲気を醸し出しています。GターボおよびGには革巻きステアリングと革巻きATセレクターノブを採用。少しスポーティさも加味されます。
●ムーヴキャンバスの走り:ターボは力強い走りを実現
新しく追加されたターボエンジンはしっかりとトルクを発生し、力強い走りを実現してます。今回は効率のいいD-CVTとの組み合わせも行われたので、高速道路を走っていてもしっかり感があって快適でした。ターボモデルはACCが標準になるので、高速クルージングもイージーで快適です。レーンキープは少し正確さに欠け、車線を維持させようと自動操舵するときに挙動が大きくなり、修正を繰り返してしまいます。
ターボエンジンのフィーリングがいいため、自然吸気エンジンにはちょっと力不足を感じる部分もありましたが、普段使いで一般道中心、勾配もさほど気にしないでいいというならば、自然吸気エンジンでも十分に事足りるでしょう。
ただ、スズキの軽自動車はS-エネチャージを採用していて加速時のアシストがあるので、このあたりがちょっとムーヴは追いついていない感じがあります。エンジン再始動時のノイズも大きめとなり、このあたりがライバルに対する弱みでしょう。
乗り心地は軽自動車としては十分に快適で、リヤシートも広々としています。リヤシートはタップリとしたスライド量を持ち、一番前までスライドさせても居住性はある程度確保されています。乗り心地も十分に確保されていて、各席で快適性は保たれています。
●ムーヴキャンバスのラインアップと価格:駆動方式別に3グレード設定
ムーヴキャンバスのグレード設定は非常にわかりやすく、ターボエンジン搭載モデルはGターボの1種、自然吸気エンジンはGとXの2種で、装備の充実さをみてもGターボ、G、Xという順になります。
エクステリア&インテリアの味付けの違いでストライプスとセオリーがありますが、グレードごとの価格は同一。すべてのグレードに2WD(FF)と4WD があり、4WDは12万6500円高となります。ストライプスとセオリーでボディカラー、インパネ、ドアパネル以外で異なる装備は、カラーマルチインフォメーションディスプレイ(Xは未装備)、ホイールキャップ、ステアリングといったところです。
GターボとGはともに、装備が充実したグレードですが、ACC&レーンキープはGターボに標準、Gにオプションで価格は4万4000円です。GターボとGの価格差が12万1000円なので、あと8万円弱をプラスすればターボとなることを考えると、ACC&レーンキープが欲しい場合はGターボを選ぶのが正解だといえるでしょう。
パノラマモニターはGターボとGに3万3000円のフロント&サイドカメラを装着した状態で使えるようになりますが、7万1500円のスマートパノラマパーキングパックを選べば、駐車支援までが行われます。オーディオは9インチのスマホ連携ディスプレイオーディオがメーカーオプション(10万4500円)で用意されます。このディスプレイオーディオは、車両状態の確認や事故や故障のサポートが受けられるダイハツコネクトに対応しています。また、ディーラーオプションのナビゲーションでもダイハツコネクト対応のものが用意されています。
●ムーヴキャンバスのまとめ:選択肢が増えたことでユーザー層が厚くなりそう
もともと『可愛い』がキーワードだったムーヴキャンバスですが、今回のフルモデルチェンジでターボエンジンを追加し、可愛いけどしっかり走るモデルになりました。また、可愛いことが気になって乗ることにためらいを感じていた方には、新たに展開されるセオリーシリーズを選ぶことで、シックなスタイルのスライドドア付きハイトワゴンに乗れることになりました。
また、基本のスタイルはストライプスとセオリーですが、アナザースタイルという名称で、デザイン関係の装備を変更したストライプスに1つ、セオリーに2つの計3つのスタイルコーディネートモデルも用意されています。
選択肢が多くなったことで、パッケージングはよかったけど力強いエンジンが欲しかった人、同じくパッケージングはよかったけどスタイルで戸惑っていた人も乗れるようになったことで、よりいっそう人気がアップしそうな気配を感じるのが、今回のムーヴキャンバスのフルモデルチェンジです。
【ムーヴ キャンバス 主要諸元】
[ムーヴ キャンバス 2WD ストライプス/セオリー(グレード:Gターボ/G/X)]
全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm
室内長×幅×高:2180×1345×1275mm
ホイールベース:2460mm
トレッド 前/後:1300/1295mm
最低地上高:150mm
車両重量: Gターボ 900kg/G 880kg /X 870kg
乗車定員:4名
燃料消費率 JC08モード:Gターボ 25.2km/L/G・X 25.7km/L
燃料消費率 WLTCモード:Gターボ 22.4km/L/G・X 22.9km/L
最小回転半径:4.4m
エンジン:Gターボ 水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラーターボ/G・X 水冷直列3気筒12バルブDOHC
総排気量:658cc
内径×行径:63.0×70.4mm
圧縮比:Gターボ 9.0 /G・X 11.5
最高出力:Gターボ 47kW(64ps)/6400rpm/G・X 38kW(52ps)/6900rpm
最大トルク:Gターボ 100N・m(10.2kgf・m)3600rpm/G・X 60N・m(6.1kgf・m)3600rpm
燃料供給装置:EFI(電子制御式燃料噴射装置)
使用燃料・タンク容量:レギュラーガソリン・30L
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT
ステアリング形式:ラック&ピニオン
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッド・ディスク/リーディングトレーリング・ドラム
駐車ブレーキ:Gターボ・G 電気式/X 機械式
サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/トーションビーム式コイルスプリング
タイヤサイズ 前/後共通:155/65R14 75S
[ムーヴ キャンバス 4WD ストライプス/セオリー(グレード:Gターボ/G/X)]
全長×全幅×全高:3395×1475×1675mm
室内長×幅×高:2180×1345×1275mm
ホイールベース:2460mm
トレッド 前/後:1295/1265mm
最低地上高:150mm
車両重量: Gターボ 950kg/G 930kg/X 920kg
乗車定員:4名
燃料消費率 JC08モード:Gターボ 24.5km/L/G・X 24.7km/L
燃料消費率 WLTCモード:Gターボ 20.9km/L/G・X 21.6km/L
最小回転半径:4.4m
エンジン:Gターボ 水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラーターボ/G・X 水冷直列3気筒12バルブDOHC
総排気量:658cc
内径×行径:63.0×70.4mm
圧縮比:Gターボ9.0/G・X 11.5
最高出力:Gターボ47kW(64ps)/6400rpm/G・X 38kW(52ps)/6900rpm
最大トルク:Gターボ 100N・m(10.2kgf・m)3600rpm/G・X 60N・m(6.1kgf・m)3600rpm
燃料供給装置:EFI(電子制御式燃料噴射装置)
使用燃料・タンク容量:レギュラーガソリン・30L
駆動方式:フルタイム4WD
トランスミッション:CVT
ステアリング形式:ラック&ピニオン
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング・ドラム
駐車ブレーキ:Gターボ・G 電気式/X 機械式
サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式コイルスプリング/3リンク式コイルスプリング
タイヤサイズ 前/後共通:155/65R14 75S
【価格】
2WD ストライプス Gターボ 1,793,000円/G 1,672,000円/X 1,496,000円
2WD セオリー Gターボ 1,793,000円/G 1,672,000円/X 1,496,000円
4WD ストライプス Gターボ 1,919,500円/G 1,798,500円/X 1,622,500円
4WD セオリー Gターボ 1,919,500円/G 1,798,500円/X 1,622,500円
(文・写真:諸星 陽一)
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