マイナーチェンジでしっかりした乗り味を獲得し完成形へ【フォルクスワーゲン・ポロとは】

■フォルクスワーゲンとは/販売台数でトヨタと1位、2位を争うビッググループ

フォルクスワーゲンは第二次世界大戦直前のドイツにおいて、ヒトラーが提唱した国民車計画を実現するために、1938年に設立された会社です。

1935年試作車
1935年の試作車

そもそもフォルクスワーゲンというのは、ドイツ語で「国民車」という意味です。ヒトラーはフェルディナント・ポルシェが設計した国民車を販売する予定だったのですが、開戦に向けての足音が高鳴ることを受けて、国民車は「KbFワーゲン」と名前を変えて製造されます。

KdFとは歓喜力行団というドイツ労働戦線の一部組織の名称なので、まさに国民車はナチスのクルマとなってしまったのです。

第二次世界大戦が開戦となると、フォルクスワーゲンも世界中の自動車メーカーと同じように軍需産業に組み込まれ、軍用車や戦車を製造します。

1938 VWプリプロ
1938年のプリプロダクションモデルが走るベルリン。後方にブランデンブルグ門が見える
VW1950
1950年の製造の様子。終戦後早い時期に大量生産が開始された

終戦を迎えると、フォルクスワーゲンは連合軍に接収され解体の危機に瀕しますが、その重要性に気付いたイギリスの手により解体を免れます。その後、KbFワーゲンは本来の姿である国民車として生まれ変わります。

このモデルこそ、いずれ「ビートル」の名で親しまれることになるタイプ1です。

1965Shipment for export
1965年 輸出のための船積みをまつビートル

1950年代になるとタイプ1は世界中へ輸出され、フォルクスワーゲンは次第にその力を高めていきます。

1965年には現在のアウディの前身であるアウトウニオンを子会社化、80年代にはスペインのセアト、チェコのシュコダ、90年代には、さらにベントレー、ブガッティ、ランボルギーニをグループに加えます。

現在は前出のブランドに加え、ポルシェ、二輪のドゥカティ、トラックのスカニアやマンもグループ内に有する巨大自動車グループへと成長。近年はワールドワイドの販売台数でトヨタと1位、2位を競っています。

●ポロとは/ボトムラインからスタートし、今では1ランクアップ

1stpolo
初代ポロ

1975年、第二次世界大戦終了後から長きにわたって続いたタイプ1(ビートル)に代わる車種として、フォルクスワーゲンはポロを市場導入しました。

すでにゴルフが登場していて、ポロはゴルフの下に位置するボトムモデルとしての登場でした。タイプ1の後継はゴルフであると見てもいいし、このポロであると見てもいいでしょう。一番わかりやすいのはタイプ1の後継としてポロとゴルフが1970年代に登場したという見方だと思います。

初代のポロはアウディ50と基本設計を同じくするモデルでしたが、アウディ50よりも小さな900ccのエンジンからスタートしました。シリーズ途中で1.1Lと1.3Lを追加し、実質的にアウディ50との差は縮まることになります。ボディタイプは3ドアハッチバックと2ドアセダンがあります。

Polo (1981)
2代目ポロ

1981年にポロは2代目に移行します。2代目ポロは3ドアハッチバックとクーペ、2ドアセダンの3つのボディタイプがあります。クーペもドア類の配置でいえば3ドアハッチバックの仲間で、ハッチバックは垂直に近いリヤハッチ、クーペは角度をねかしてスポーティにしたリヤハッチが採用されました。

搭載されたエンジンは1L、1.1L、1.3L、1.3L+スーパーチャージャーのガソリンと、1.3Lのディーゼルでした。初代は正規輸入されていないポロですが、この2代目のセダンから輸入を開始、1988年にはクーペも輸入開始となります。

Polo 1994 - 1999
3代目ポロ

3代目ポロは1994年から。この世代から日本への輸入が本格化し、1996年に日本への輸入がスタートしました。日本へ輸入されたのは3ドアもしくは5ドアのハッチバックでしたが、欧州ではバリアント(ワゴン)やサルーン(セダン)も設定されていました。

エンジンは当初1L、1.4L、1.6Lでしたが、シリーズ途中でハイパワーな1.4L仕様や1.9Lディーゼルも設定。また、2000年5月のマイナーチェンジのタイミングで、1.6Lエンジンを搭載するGTIも日本への導入が開始されました。

4thpolo
4代目ポロ

4代目は2001年に発表。日本には2002年から導入が始まります。本国仕様は1.2L、1.4Lのガソリン、1.4Lと1.9Lのディーゼルが用意されましたが、日本への導入は1.4Lガソリンだけで、3ドアハッチバックと5ドアハッチバックが用意されました。

2005年には1.8Lエンジンを搭載するGTIが導入されます。GTIも3ドアハッチバックと5ドアハッチバックが設定されています。2006年にはSUVテイストを加味したクロスポロを追加しました。

5thpolo
5代目ポロ

5代目は2009年3月のジュネーブモーターショーで発表。日本への導入は10月から始まりました。ボディタイプは3ドアハッチバックと5ドアハッチバック、セダンでしたが日本への導入は5ドアハッチバックのみです。

当初の搭載エンジンは1.4Lのみ。2010年5月にはエンジンを1.2Lに変更します。同年6月には1.2Lエンジンを搭載するクロスポロを追加、9月には179馬力の1.4Lエンジンを搭載するGTIを追加します。その後、1.2Lエンジンはアイドリングストップなどを採用し、燃費性能を向上していきます。

6thpolo
6代目ポロ

現行モデルとなる6代目は、2018年3月から日本へ導入されています。ボディタイプは5ドアハッチバックのみで、エンジンは1Lのみとなりました。7月には2Lエンジンを搭載するGTIが追加されます。

今回試乗したモデルは2022年6月にマイナーチェンジしたモデルで、エンジンが通常のオットーサイクルからミラーサイクルに変更されています。

●ポロの基本概要 パッケージング/ポロシリーズとして初のMQBプラットフォームを採用

MC後ポロ
マイナーチェンジ2022年にマイナーチェンジされたポロ

もともとフォルクスワーゲンのボトムモデルとして登場しただけあり、先代までのポロはコンパクトなボディが特徴でした。

初代ポロはホイールベースが2335mm、全長が3512mm、全幅が1559mm、全高が1344mm。2009年に登場した先代でもホイールベースが2470mm、全長が3995mm、全幅が1685mm、全高が1475mmです。

しかし2018年に導入時の現行モデルはホイールベースが2550mm(5代目比+80mm)、全長が4060mm(5代目比+65mm)、全幅が1750mm(5代目比+65mm)、全高が1450mm(5代目比-10mm)と一気に大型化され、従来の5ナンバーサイズから3ナンバーサイズに変更されます。

とはいえ、ポロがボトムモデルであったのは2000年初頭までで、2001年にはルポが登場、2011年からはアップがボトムラインを支えることになっていて、ポロのサイズアップは予定されていたものとも取れます。

今回のマイナーチェンジでは全長が4085mmとさらに延長されましたが、これはデザイン変更によるものです。

ポロに使われたプラットフォームはMQBと言われるタイプ。MQBは非常に広範囲をカバーするプラットフォームでフォルクスワーゲンでいうとゴルフやトゥーランはもちろん、アルテオンまでがMQBです。さらにはアウディのA3やTTなどにも使われているものです。

ラゲッジルームは定員乗車時で351Lを確保。これは5代目と比べて71Lも増大されていることになります。6代目ポロは4代目のゴルフよりもホイールベースが長く、室内空間はほぼ同じとなることから、かつてゴルフに乗っていて大きくなってしまったゴルフに使い勝手の悪さを感じる人にも受け入れられています。

●ポロの基本概要 メカニズム/エンジンをミラーサイクルに変更

ポロエンジン
ミラーサイクルに変更されたエンジン

マイナーチェンジ前のポロのエンジンは、通常のオットーサイクルの1L3気筒でした。このエンジンを今回のマイナーチェンジでは排気量やボア×ストローク、気筒配列などは一切変更せずにミラーサイクルとしました。

ターボはバリアブルターボジオメトリー機構を取り入れていて、低回転からの過給圧アップを実現。さらに、ガソリンエンジンでありながらPMフィルターを採用することで排出ガスの清浄性を向上しています。

最大トルクは175Nmで、マイナーチェンジ前と同じですが、マイナーチェンジ前の発生回転数が2000-3500rpmであるのに対し、マイナーチェンジ後は1600-3500rpmと発生回転数が広げられています。

こうした熟成の結果、16.8km/LだったWLTCモード燃費は17.1km/Lに向上しています。

ポロリヤスタイリング
ポロのリヤスタイリング

ポロは従来からACCを搭載していますが、今回のマイナーチェンジではトラベルアシストが上級グレードに追加されました。トラベルアシストは同一車線内全車速運転支援システムで、従来の先行車との距離を保ってのアシストに加えて、レーンキープも行われるようになりました。

フロントカメラで対向車や先行車を検知し、マトリックスモジュールに搭載されたLEDを個別に制御することで、最適な配光を可能するIQ.LIGHTも上級グレードに新採用されています。

●ポロのデザイン/フォルクスワーゲンらしさのなかに最新のスパイスをふりかける

ポロ2タイプ
左が標準タイプとなるTSIスタイルスタイル、右がTSI Rライン

現行モデルはデビュー時にMQBプラットフォームを採用したことで、ワイドで落ち着き感のあるスタイリングを手に入れています。今回のマイナーチェンジでは前後のスタイルを中心に変更が施されました。

フロントでは新デザインのバンパーを採用、ラジエターグリルにはLEDクロスバーを配置、ヘッドライトサイドにも2本のLEDストリップを設けることで、左右ヘッドライトに連続性を持たせた表情を獲得しています。

リヤもバンパーデザインを変更。新デザインのLEDテールランプには、ダイナミックインジケーターとよばれるシーケンシャルターンシグナルランプが採用されました。

フラットなダッシュパネルに、自然に盛り上がるメーターカバーを組み合わせたインパネデザインは、基本に忠実なもの。パネルの膨らませ方などは有機的で自然な雰囲気がありますが、エアコン吹き出し口やドアインナーノブなどの各パーツ類は、エッジの効いたシャープな形状とすることでアクセントととなり、スポーティな印象も与えてくれます。

●ポロの走り/動力系もハンドリングも完成の域に近づく

ポロ走り
走りの質が向上したマイナーチェンジ後のポロ

試乗車は、基本モデルの上級グレードと言っていいTSIスタイルです。

第一印象はじつによくできたクルマ、完成形に達したという印象を受けたのが、今回のマイナーチェンジでした。マイナーチェンジ前のモデルでも必要十分な動力性能とハンドリングを備えていたポロですが、今回のマイナーチェンジでは気になっていた部分がさらにブラッシュアップされている印象です。

最高出力・最大トルクともに先代モデルと同レベルのスペックを誇りますが、エンジンの回転が上がっていく際のスムーズさと、しっかりした力感を感じられる部分は、マイナーチェンジ後のこのモデルのほうが上です。ミッションは変わらずにDSGを採用していますが、変速時のスムーズさについてもよくなっている印象です。

こうしたことは欧州車にはよく見られる傾向で、プレスリリースやプレスインフォメーションといった資料には何も書かれてないものの、じつは進化していたり、上手に作れるようになっていたりということがあります。

ポロタイヤ
試乗グレードのタイヤは195/55R16。普段済みなら185/65R15でも十分だろう

ハンドリングに関しても同様で、必要十分なスポーティさを確保しながらも、乗り心地も両立させています。もっともスポーティなモデルとなるRラインの場合は、スポーツサスや電子制御のディファレンシャルロックを装着、タイヤも215/45R17サイズとなります。

が、試乗モデルの場合はサスペンションは普通のタイプでタイヤも195/55R16サイズ。この16インチでも段差乗り越え時などはちょっと突き上げ感を感じるので、普段使いをするならばTSIアクティブおよびTSIアクティブベーシックの185/65R15サイズのほうがマッチしそうです。

●ポロのラインアップと価格/グレードは4つ ボトムとトップは約73万円差

ポロイメージポロはエンジンやミッションなどはすべて同一で、装備によって4つのグレードが用意されます。もっともベーシックなモデルはTSIアクティブベーシック、その上がTSIアクティブ、TSIスタイルとなり、最上級がTSI Rラインとなります。

装備の違いはトラベルアシストやACC、パークアシストの非装備、オプション、標準装備などが主な違いです。

これらの装備はボトムグレードのTSIアクティブベーシックではオプション装着できませんが、TSIアクティブになると17万6000円で標準装備可、TSIスタイルとTSI Rラインでは標準装備となります。現代のクルマ選びであれば、これらの装備は欲しいものなので、最低でもTSIアクティブにオプションで装着となるでしょう。この際の価格は299万7900円でギリギリ300万円を切る絶妙な価格設定になっています。

ポロ価格表
*はレスオプションの設定あり

TSIアクティブとTSIスタイルの違いは、レーンチェンジアシストが装備されるか、オプションでも選べないかの違いとなります。TSIアクティブではレーンチェンジアシストは選べず、TSIスタイルとTSI Rラインでは標準装備となるのです。高速道路でのレーンチェンジ時などに後続車の存在を教えてくれるシステムなので、これはぜひとも欲しいということになります。

一方で、レーンチェンジアシストはリヤトラフィックアラートとセットでレスオプション(2万8600円安となります)が選べます。

●ポロのまとめ/欧州車の乗り味を求めるなら満足することでしょう

ポロイメージ2しっかりしたボディにダイレクト感のあるパワーフィールやハンドリングはいかにもドイツ車という印象で、国産車に乗っているのとは違う感覚があり、クルマ好き、走り好きの人間にとってはとても気持ちのいいものです。この感覚が欲しいのであればポロは買いとなるモデルです。

一方でクルマのサイズ、動力性能、使い勝手、耐久性などと価格というコストパフォーマンスの部分をみると、どうしても国産車には叶わない部分もあります。

たとえばACCなどのADASが装備されるモデルが欲しいとなると、ポロでは約300万円、ホンダのフィットだと約200万円で手に入れることができます。ポロとフィットではほかの装備も異なるので一概には比較できないのですが「欲しい装備のついたこのクラスのクルマ」という比較方法ではショッピングリストに載りません。

しかし、そんな単純な理由だけで決められないのがクルマ選びです。まずは乗ってみましょう。ディーラーでさまざまな試乗車に乗ってみて、それで決めることをおすすめします。

たとえばカバンはいろいろなタイプがあり、値段もピンキリです。でも物を入れて運ぶという機能ではそれほどの差はありません。機能だけで選ばないのはクルマも同じ(でも機能は一番を争うくらい大切)なのです。

ポロ 走り リヤ イメージ
心配なのは、ポロに採用されているDSGというミッションです。私は所有したことがないので、あくまでも伝聞となってしまいますが、ネット情報ではどうも耐久性に難点がありそうに感じます。日本はストップ&ゴーの多い乗り方となるので、そうしたことがDSGに負担を掛けるのもしれません。

フォルクスワーゲンさん、どうでしょう? 日本向けに普通のATモデルを作ってみるというのもいいかもしれません。

(文・写真:諸星 陽一

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この記事の著者

諸星陽一

諸星陽一 近影
1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想のクルマ生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。